タフに生きたい健康トラの巻 ”持病人”の海外旅行講座
(2004.4.14 日刊ゲンダイ
「遠い外国で死にたくなければ学びなさい」
海外旅行をするとき、最も注意しなければならないのが高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満といった”持病”がある人だ。
旅行先で死亡する人の半数以上が脳卒中や心筋梗塞などの病気が原因だが、その発作リスクを一気に上げるのが先に挙げた4つの病気。そこで、”持病人”が旅先で命を守るための必須事項を、日本旅行医学会専務理事で医師の篠塚規氏に聞いた。

”持病人”が絶対にやらなければならないのが、旅行前に英文の「旅行用英文診断書」を医者に発行してもらい、持参することだ。
英文診断書には旅行用、勤務・留学用、医療用の3タイブがあって、それぞれ形態が違うので間違えないように。

「旅行用の英文診断書には、海外で病院にかかるときに必要な情報が1枚の紙に一目で分かるように書かれています。
実は日本人が海外旅行先で死亡する率は、ほかの国の人と比べてかなり高いのですが、その理由のひとつが日本語の通じる病院を探すために処置が遅れるから。
しかし旅行用英文診断書があれば、日本語が通じない大病院や専門病院に直行しても、英文診断書を見せるだけで受付で手間取らず、病歴、治療前と現在の状態がどれほど違うのかなどがすぐに分かるので、迅速に治療をしてもらえます。
言葉が通じなくても検査で診断はつくのですが、服用中の薬やキーとなる病歴が分からないと適切な治寮が行えません」

旅行用英文診断書は、まず主治医に頼む。
ただ旅行用英文診断書についての知識があまりない医者もいるので、注意が必要だ。
「病名と薬だけしか書いてなかったり、原稿用紙何枚にもわたって書いてあるものは、緊急時には役立たない。一目瞭然でもれなく情報が分かるような書類じゃないとだめです。過去に脳梗塞を起こしたことがある人は頭部のMRIの写真、心筋梗塞を起こしたことがある人は冠動脈の血管造影の写真も付けておくと、緊急のときに非常に役立ちます」
主治医の発行が無理な場合は、日本旅行医学会のホームページにリストが載っている認定医か篠塚氏が専任医師を務める「オブベースメディカ(03-5414-7100)でも英文診断書は発行してくれる。
「オブベース・メディカ」では、3カ月間有効のものが2万1000円で、2週間以内に発行。
複数の持病があって異なる医療機関を受診している場合は、それぞれの診断書を提出すれば1つの書類にまとめてくれる。

持病人の中でも、症状が重くて”薬を手放せない”というような人は、旅行用英文診断書に加えて「英文薬剤証明書」の発行もした万がいい。
「特に、糖尿病でインスリン注射のために注射器を持っている人や、白い粉末状の薬、睡眠薬などを待っている人は、入国時に思わぬトラブルに巻き込まれないためにも持って行った方がいい。
今はどの国も麻薬取り締まりなどが厳しく、注射器などは入管で引っかかる可能性がある。
最悪の場合は、没収されることもあります。
そんなときでも英文証明書があれば、薬や注射器を何のために携帯しているかを証明でき大丈夫です」

盗難や置き忘れで薬を紛失したときも、薬剤証明書があれば現地の医療機関で処方してもらえることがある。
関係者によれば、このほかにも「薬は必ず手荷物で機内に持ち込む」「時差の関係でハワイ、アメリカ方面に行くときは移動日の薬の服用量を少し減らし、ヨーロッパ方面のときは少し増やす」「旅行先で倒れたときは、日本語の通じる病院に行かない。医療機器が不十分なことがあり処置が遅れる」などの必須事項もある。
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