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3月28日(日)−訪日外国人旅行者を困惑させる銀行ATMのバリア

観光庁のウェブサイトには訪日外国人旅行者数を年間1,000万人にすることが目標として掲げられている。
しかしながら、同庁の現状分析として、「平成20年に我が国を訪れた外国人旅行者は約835.1万人であり、海外を訪れた日本人旅行者約1,599万人と比較して少なく、外国人旅行者受入数では、諸外国と比較しても、世界で第28位、アジアで第6位(平成20年)と低い水準にある。」と書かれている。
要は800万人からさらに200万人を上積みしようというのが政府の目標というわけだ。
そして、鳩山内閣は「観光は6つの成長戦略分野の1つとして位置付け、国をあげて観光立国に取り組む。」とし、溝畑宏観光庁長官は「訪日外国人旅行者を2016年までに2,000万人、2019年までに2,500万人、将来的には3,000万人」に目標を前倒しすると言っている。

外国人観光客を呼び込むことを日本の経済成長のエンジンにするという目標は決して間違いではないと思う。
このまま日本の一般庶民の可処分所得が減り続ければ、国内需要だけに頼る産業は確実にお陀仏だからだ。
ところが、今の海外旅行者の3種の神器とも言える、銀行ATMカード、携帯電話、格安航空路線に対して、日本は極めて閉鎖的とも言える状態にある。
携帯電話に関しては本日付けの読売新聞の記事「携帯端末、全社対応型に・・・総務省が制限解除要請へ」と、訪日外国人向けのウェブサイトJapan-Guide.ComのCell Phones in Japanを、格安航空路線については2007年2月末に朝日新聞で連載された「アジアズームイン−空飛ぶバス上陸へ」を読んでもらうとして、ここでは日本の銀行ATMについて触れてみたいと思う。

実のところ、日本の銀行ATMに関しては橘玲氏のコラム「金融サービスも『ガラパゴス』」という中に書かれているのだが、外国の銀行に口座を開いた日本国内の居住者が、わざわざそのATMカードを使って日本で金を下ろすことなどほとんどないだろう。
従って、外国の銀行で発行されたATMカードが日本で使えるかなどということを検証する人もごく少数ということになる。
しかし、日本から海外へ行く旅行者は、よほど辺鄙なところへ行かなければ自分の銀行口座のキャッシュカードを使って現地通貨を下ろすことができる。
この矛盾に気付く日本人は、外国在住者か、訪日外国人を銀行へ案内した人でなければいないのではないか。

そこで、私も自分自身が持っているHSBC香港のATMカードが使えるか横浜駅周辺の銀行を回ってみた。

銀行名 英語のウェブ 英語のATM操作案内 外国銀行ATMカードの可否
Citibank銀行 あり あり
新生銀行 あり あり
セブン銀行(セブンイレブン) あり あり
みずほ銀行 あり あり
三井住友銀行 あり あり
三菱東京UFJ銀行 あり あり
ゆうちょ銀行 あり あり 制限付きで可
横浜銀行 あり なし
りそな銀行 あり なし

調査の結果は橘玲氏のコラムの通りとなったが、一点だけ新しくわかったことが、ゆうちょ銀行のATMのことだ。
これは、私がゆうちょ銀行のATMを使ってみたところ、ATMの前には国際カードが受け入れ可能なPlusのステッカーが貼ってあるにもかかわらず、「このカードは受け付けられないので窓口へ来てください」とのメッセージが出て、どうなっているのか明日にでも聞いてみようと思った矢先に、上記のウェブが見つかったというわけだ。
もちろん、日曜日の夜にカードが使えないなんてことは、ゆうちょ銀行のATMの周辺にはどこにも書いていないし、操作ガイダンスにも出てこない。
念のために英語だけでなく日本語でも操作したが結果は同じだった。
時折、海外投資を楽しむ会の掲示板で、郵便局で外国銀行のカードが使えなかったという投稿があった理由がこれでわかったのだ。

これは、今の旅行者にとってはもの凄くストレスになるだろう。
かつてはハードカレンシーと呼ばれる国際通貨(米ドル、英ポンド、ユーロ、円など)の現金やトラベラーズチェックを持って旅行をしたものだが、今やそういったものは補助手段になっているからだ。
少なくとも私が21世紀になってから行った海外渡航先では、英語ガイダンスのある銀行ATMで引き出しができないというのは、稼動を停止していない限り、ほぼあり得ないことだった。
先進国の都市に行ったとして、銀行が軒を並べているところで金が下ろせないなどと誰が考えるだろう。
ATMの故障や金が底をついたというのが珍しくない海外の常識でいけば、店舗のないところのATMだったら許せるだろう。
しかし、銀行の店舗のあるところのATMが軒並み使えないとなれば、私だったら怒りが爆発すると思う。
正直言って、東京で金が下ろせないということは、ニューヨークやロンドンで金が下ろせないのと同じことだ。
こういう実態を私は最近になって知った。
果たして観光立国を推進するという政府閣僚の方々はこうしたことを理解できるだろうか。
もし、理解できるのであれば、亀井金融相が全国銀行協会の会長に対して、少なくとも都市銀行のATM回線を国際回線に繋ぐように指示すべきだろう。
さもなければ、観光立国の推進など絵に描いた餅になることは間違いない。


3月26日(金)−Microsoft Moneyのオンラインサービス最終日まで延長へ

昨年の11月3日のコラムで、Microsoft Money Plus Editionのオンラインサービスの期限が、ソフトのアクティベーションから2年を経過することによって切れると、最終日の2011年1月31日を待たずして更新ができなくなることを書いた。
そして、そのことについてマイクロソフトの無償サポートサービスに問い合わせたが、結局はどうにもならないという回答を得ていた。
ところが、最近になって先方から電話があり、最終日までオンラインサービスが使えるようになったとの連絡があった。
実のところ、オンラインサービスが切れてからは資産管理ソフトなのに、株価と為替レートの手動での更新が面倒で、ほとんど小遣い帳みたいになっていたので、ちょっぴり嬉しい。

詳細については電子メールで送られてきたが、サービスの提供は延長後も最終期限が2011年1月31日とあり、これを何とかして欲しいと思う。
システムの詳しいことはわからないが、ただ単に金融サービス会社の提供するデータの取り込み機能だけである。
例えば、有料でも構わないので引き続きサービスを受けられるようにするとか、マイクロソフトを経由しないでも一括してそれらの金融会社と契約できるようにするとか、製品の供給が止ってもやりようがあるのではないだろうか。
いずれにしろ今の段階でMoneyに代わるようなソフトがないだけに、オンラインサービスの継続、あるいは、代替の資産管理ソフトが販売されるようになればいいと思う。

製品版Microsoft Money Plusのオンラインサービス有効期限がすでに終了し、 オンラインサービスが停止しているお客様へ、最終の有効期限2011年1月31日まで再度ご利用いただけることとなりましたのでお知らせいたします。
  1. 設定操作の前にMoney Plusのプロダクトキーをご用意ください。
    (プロダクトキーは、JJ- から始まる27ケタのキーとなります。)
  2. Money Plusを起動します。
  3. Money Plusの画面上部にある[ツール]をクリックし、ライセンス情報を開きます。
  4. 「ライセンス情報」画面より[プロダクト キーを更新する (U)]ボタンをクリックします。
    (有効期限の終了していない画面では、[プロダクト キーを更新する]ボタンが表示されません。有効期限の終了後に本操作を行ってください。)
  5. プロダクトキーを入力する画面が表示されますので、お客様のプロダクトキーを入力します。
    入力後[OK]ボタンをクリックします。
  6. 「Microsoft のライセンス認証」画面が表示されますので、[ライセンス認証を行う]ボタンをク リックします。 「よろしいですか?」の画面にて[はい]をクリックします。
  7. オンラインでライセンス認証が行われましたら、いったん Money Plusを終了し、再度起動してください。
  8. Money Plusの画面上部にある[ヘルプ]をクリックし、バージョン情報を開きます。
  9. 表示される有効期限が2011年1月31日となりましたら延長設定は完了です。
    ポートフォリオ画面にて株価や為替レートが更新されているかご確認ください。

この記事をアップした後、ある方が私にアドバイスをくれました。
Microsoft Moneyのオンラインサービス終了後のポートフォリオの管理について、日本株についてはMoneyLook with Yahoo! JAPANを、中国株についてはChina Stock Managerを使ったらどうかということです。
情報をいただきありがとうございました。


3月19日(金)−原口総務相のメディア改革は成功するのか

日本の大手メディアが鳩山民主党政権に辛らつに当たる傾向があるのは、マニフェストに掲げた公約が遅々として実現できていないことだけが理由ではないだろう、とは常々言われている。
言わば民主党の公約の中に大手メディアの既得権を脅かすものが含まれていて、それが徐々に実現化しそうだということで政権潰しを狙っているとの憶測が絶えない。
事実、総選挙前の昨年7月27日に、鳩山民主党代表が、「政府の記者会見をすべてのメディアに開放する」と言ったことや、今年の1月14日に原口総務相が「クロスメディア(新聞社とテレビ局の系列化)のあり方を見直し、日本版FCC(米連邦通信委員会のように行政から独立した通信・放送委員会)を設立する」といったことを報じた大手メディアは私の知る限り一つもなかった。
小沢幹事長の政治資金問題や外国人参政権の是非については詳細を報じているにもかかわらずだ。

しかも原口総務相は1月5日の会見で「既得権益の代弁をする気は全くありません」と明言し、「どの社の、どんなジャーナリストがどんな質問をしたのかということまで含めて、その質問者もまた国民の知る権利の対象になる」と今までの匿名性のある記者会見を暗に批判している感もある。
もちろん、これらの発言も含め、大臣のメディアの集中排除、記者会見のオープン化に関する質疑は、大手メディアのニュースで報じられることはなかったに違いない。
なぜ、ここまで一斉に「右向け右」「左向け左」という態度が取れるのだろうか。
普通ならメディア各社が独自の視点でニュースを流し、視聴者(読者)の興味を引き付ける努力をするものなのに、そういったものを頑なに拒むのはなぜなのだろうか。
記者クラブに安住し、官庁報道を垂れ流すだけなら独裁国家の提灯メディアのことを笑えないとは思わないのだろうか。

いくらインターネットが発達したとはいえ、未だにアナログメディアの影響力も大きい。
各種の選挙で抜群の投票率を誇る高齢者世代はITに馴染みのない人が多い。
しかも、日本の場合は、携帯向けサイトの充実ぶりを考えれば、現役世代でさえ、プライベートのITツールはパソコンよりも携帯電話のように思える。
一方、大手メディアに対抗すべく細々と営まれるインターネットメディアの多くは携帯電話向けのコラムなど流さない。
従って、メディア間の健全な批判勢力の存在が、健全な民主主義を育むと言っても過言でないのだ。
それがために先進国の多くでは、言論の多様性やメディアの相互チェック能力を担保する措置が取られている。
日本でも政権交代を機にそうした動きがようやく出てきた。
果たして原口総務相の目論みは成功するのだろうか。
それとも彼の言う既得権益を死守する勢力に負けてしまうのだろうか。

総務相が新聞社の放送局への出資禁止を明言
(2010.1.14 ビデオニュース・オン・ディマンド)
原口一博総務相は14日の外国特派員協会での講演の中で、現在のメディア集中排除原則を改正し、新聞社のテレビ局への出資を禁止する法案を国会に提出する意思を表明した。
「クロスメディアの禁止、つまり、プレスと放送が密接に結びついて言論を一色にしてしまえば、そこには多様性も民主主義の基である批判も生まれないわけであります。これを、法文化したいと考えています。」原口氏はこのように語り、マスメディア集中排除原則を法案として提出する意向を明らかにした。

アメリカを始めとする先進国の多くでは、言論の多様性やメディアの相互チェック能力を担保するために、新聞社が放送局に資本参加する「クロスオーナーシップ」を制限したり禁止する制度や法律が設けられている。
しかし、日本のメディア集中排除原則では、基本的にテレビ、ラジオ、新聞の同時保有を制限するにとどまっている。
これが日本のメディア市場が、5つの全国紙と全国放送網の系列が圧倒的シェアを維持したまま固定化され、過去50年にわたり新規参入がまったく行われていない原因の一因となっている。

原口氏はまた、政府の介入を招きやすい原因とされてきた、総務省が直接放送事業者に放送免許を付与している現行制度の改正にも触れ、「長い間の政権が、総務省というむき出しの権限を持っている機関を直属に、そこが直接放送局の免許を与える、非常に言論の自由、報道の自由、放送の自由に対して、シグニフィカント(有意義)な存在、この存在を解体することがある意味、私の努めであるとそう考えているわけです」と語り、現在の放送行政のあり方を根本から変えていく姿勢を明確に打ち出した。

民主党は昨年8月の総選挙前に公表した党の政策集で、クロスオーナーシップの見直しや放送免許を付与するために政府から独立した第三者機関(日本版FCC)を創設する政策を明らかにしていた。
しかし、放送行政を担当する総務大臣が、新聞社が放送局に資本参加する「クロスオーナーシップ」の禁止を明言したのは、これが初めて。

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3月13日(土)−法人成りは社会保険制度上でも得なのか?

昨年の11月29日に「社会保険労務士試験へ向けて」ということで、勉強をやり直すことを決意したと書いた。
それで、結果はどうなっているのかと言うと、基本テキストを通読し終えたのはいいが、ほとんどそれを記憶できていない。
要は過去問をやってみても成績は芳しくなく、このままいけば受験料をドブに捨てることになるだろう。(爆)
さすがに合格率1割の難関試験だけのことはあると思うが、合格できなくても勉強を生かすことはできる。
そう、実生活に密着した知識を得ることができるからだ。
そこで個人事業主が法人の代表者となる、いわゆる「法人成り」が社会保険制度上で得なのかシミュレーションしてみたいと思う。
ところで、橘玲氏の著書、貧乏はお金持ち−「雇われない生き方」で格差社会を逆転するを読んだことがある人もいると思うが、彼が提唱する「経済的独立を果たすための一人法人化で、すべてのメリットを享受する。」というのを、この応用としてやってみるのも悪くないだろう。

横浜市在住の30代の夫婦がある個人事業をやっていたとしよう。
こうした場合、法的には社会保険(健康保険・厚生年金)に加入することもできるが、一般的には国民健康保険と国民年金に加入することが多いだろう。
国民健康保険の場合は、横浜市の個人市民税(住民税はこれに神奈川県民税が加算されたもの)がどうなるかでシミュレーションが全く変わってくるが、仮に課税所得金額が100万円だったと仮定しよう。
個人市民税の所得割の税率は6%なので、年額6万円、これに均等割が3,000円加算されるので、個人市民税の合計は63,000円となる。
ちなみに、ここまでの計算は全国一律であるが、最近では住んでいる自治体によって「横浜みどり税」のような法定外普通税が均等割に加算されることも多い。
横浜市の国民健康保険料は、この63,000円(横浜みどり税を除く)を基準として、世帯の被保険者数は2人、夫婦とも30代で、介護保険第2号被保険者に該当しない(介護保険料のかからない)という条件なので、国民健康保険料を試算(平成21年度)すると年額で175,920円となる。
一方、国民年金保険料は収入にかかわらず定額なので、年額で1人当たり181,200円(平成22年度)、夫婦で362,400円となる。
しかしながら、国民健康保険料や国民年金保険料は節税をすることによって、減免の対象になる可能性がある。

ここで、彼が「一人法人」を設立した場合はどうなるか。
法人の場合は、個人事業主と違って社会保険(健康保険・厚生年金)が法的に強制適用となるが、社長個人に対する報酬は経費(役員報酬)で落とすことができる。
ここでは節税術を説明するわけではないので、あえて役員報酬は月額62,000円とする。
この金額は全国健康保険協会(協会けんぽ)管掌の健康保険料を計算する上で、第1級(最低)の標準報酬月額が適用される月給(報酬月額が63,000円未満)である。
一方、厚生年金の保険料は、この月給(報酬月額)が101,000円未満となる。
もっとも、月給(報酬月額)が62,000円(年額744,000円)では夫婦2人が日本で生活することなど不可能だが、ここでは彼らが給料以外の所得があると仮定する。

この前提で社会保険料を試算すると、社長本人の月給(報酬月額)は62,000円としているのだから、神奈川県下の協会けんぽ管掌の健康保険料(平成21年9月分から健康保険料率は全国一律の8.2%から都道府県別のものとなった)は、30代の(介護保険第2号被保険者に該当しない)場合で、事業主負担分と本人負担分を合わせて月額5,411円(年額64,936円)となる。
一方の厚生年金は月額で15,390円(年額184,680円)である。
これだけ見ると国民年金とほとんど同じように見えるが、被扶養配偶者がいれば、その人の国民年金保険料は第3号被保険者該当届を出すだけでタダ(被用者年金加入者全体で拠出)になる。
実のところ、この第3号被保険者の制度は、独身OLと共稼ぎの妻が専業主婦に手当てをあげているとも言われるほど、物議を醸しているものだが、一向に改善される気配はない。
しかも、この第3号被保険者の制度は、法的には厚生年金加入者の被扶養配偶者(20歳以上60歳未満)であること以外に、国籍や居住地要件はないため、外国在住の外国人配偶者にさえ適用できる、ということはほとんど知られていない。
もっとも、今やいかに日本の公租公課から逃れるかを考えている人の方が多いのだから、将来の円安リスクをモロに被ってまでそんなことを考える人はいないだろう。

さらに、通算で20年(240月)以上の厚生年金加入暦があれば、年金の受給年齢になったときに、被扶養配偶者がいる場合は、配偶者が65歳になるまで(要は年齢差がある夫婦でないと実質的に受給不可)加給年金をもらうことができるし、万が一、厚生年金加入者本人が死亡したときには、18歳未満の子どもがいなくても遺族厚生年金が支給される。
ちなみに、老齢基礎年金の満額は792,100円(平成21年度)と、これだけでは日本で生活できない金額であることや、遺族基礎年金の受給要件が、原則として18歳未満の子どもがいないとダメということもあり、年金不信以前に、自営業者など国民年金の第1号被保険者にとって魅力のないものになっている。
言うなれば、年金不信の蔓延する中での厚生年金は生命保険のようなものとも言えるだろうが、果たして「法人成り」は税制のみならず社会保険制度上も得と言えるのだろうか。

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3月9日(火)−外国人も日本人同様、住民票登載へ

2003年(平成15年)2月、外海から、横浜市の帷子川に迷い込んで人気者となったあざらしのタマちゃんに対し、横浜市西区が「住民票」を交付したことが話題になったことを覚えているだろうか。
このとき、20名の在日外国人が「タマちゃんに住民票を交付するなら私たちにも!」と声をあげた。
彼らは、「何世代も日本に住み、税金も納めているのに住民票が交付されない外国人が大勢いることを知ってほしい」(在日8年イギリス人)「アザラシよりも人間をきちんと扱うのが先」(アメリカ人を妻に持つ日本人の夫)などとアピールした。

つまり、彼らは住民登録制度を別々にしないで、日本人と一緒にして欲しいと言っていたわけだが、このときから6年半の歳月を経て、ようやく現行の外国人登録制度の廃止と、外国人の住民も日本人と同じように住民票に加わることが決まり、今年の7月1日から改正法が施行されることになっている。(総務省−外国人住民に係る住民基本台帳制度について
総務省は、これによって、外国人も日本人と同じように、住民票を基礎とした各種行政サービスの届出との一本化が図られ、手続が簡素化されるので、彼らの利便性が増すと言っている。
特に国際結婚のカップルや、親や子が外国人である人にとっては、家族であることの証明が面倒だったのが改善されることになろうか。

一方、彼らが住民票に加わることは、アパートの家主や公共料金などの債権回収の仕事をしている人にとっても、転居先を追跡しやくすくなるだろう。
なぜなら、今の外国人登録制度下では弁護士などを通さないと、外国人登録原票記載事項証明書(これが現行では外国人の住民票のようなもの)が取れない(外国人登録法第4条の3)ので、彼らの行方の追跡は困難だが、これが住民票の写しであれば、正当な債権を持つ人なら誰でも取ることができる。(住民基本台帳法第12条の3)
これだけで賃貸住宅を借りにくいと言われている外国人の境遇が改善されるとは思わないが、少なくとも債権債務関係に限って言えば、徐々にマシになっていくことだろう。

ところで、この制度改正は全国的な規模で自治体のシステム改修を必要とするため、向こう3年以内にIT特需が生まれる可能性があるが、それが壮大な税金の無駄(いわゆるIT公共事業)に終わるかどうかは、今後の運用次第とも言えよう。
問題は、今まで外国人住民に対する事務は、役所の特定の部署でしか扱っていなかったので、英語(に限らないが)が話せる人は、そこに集中させておけばよかったが、今後は彼らを日本人同様に扱うのであれば、そうも言っていられなくなるだろう。
それに、今はコンビニや自動発行機で住民票や印鑑証明が取れるところも多いが、これも将来的には多言語ガイダンスを必要とするだろう。(もっとも、こういったものは電子申請でも取れるようになればいいのだが、その是非はここでは割愛する)
果たしてこの制度改正は外国人住民にとって、あるいは彼らを家族に持つ人にとって良いものになるのだろうか。


3月5日(金)−US travel promotion billとは法案でなく請求書のことなのか

米国の旅行促進法案(travel promotion bill)がオバマ大統領の署名によって成立したという記事が読売新聞に掲載されていた。
これにより、現在は申請が無料のESTA(電子渡航認証システム)に対して、近い将来、申請料としてUS$10(900円)払わないといけなくなるわけだ。
2年間有効の簡易ビザ代としては大した金額でないと言われればそうなのだが、米国は単なる通過(トランジット)でも入国審査を経なければならないので、米国経由で中南米旅行を計画している人にとっては、えらく損をした気分になるだろう。
しかも今は円高だから900円という記事が踊っているが、円安になっていた2007年当時なら1,200円に換算されたことだろう。

かの法案がtravel promotion billと名付けられているのは、ある意味、強烈な皮肉でもある。
billの意味は法案という以外に請求書という意味もある。
むしろ日本人に馴染みがあるのは後者だろう。
そう、これは米国旅行促進のために、ビザ免除プログラム(VWP=Visa Waiver Program)対象国、主に日本や欧州のような裕福な国から来た渡航者から金を取ろうということだ。
まるでカンボジアやインドネシアのようなシステムである。

ところで、VWP対象国の人間から実質的なビザ代を取ることが何で米国旅行の促進になるのか。
これは、先に触れたように米国は単なる通過(トランジット)でもESTAの申請が必要になる。
そこで、ビジネスマンはともかく、US$10(900円)払わされた旅行者はどうするか。
私もそうだが、単なる通過ではもったいない、と思う人はいるだろう。
例えば米国から中南米へ行くフライトの選択肢がいくつかあったとき、わずか半日でも町へ出てみようとか思うはずだ。
そして、米国へお金が落ちる。
そんな穿った見方をしたくなるような法律であるが、このUS$10(900円)は観光促進のために使われるのでなく、おそらく、単なる通過(トランジット)客にも課している入国審査の費用が嵩んでいるからに違いない。
つまり、テロ対策にかかっている費用をVWP対象国の渡航者にも請求し出したとも言えるだろうか。

渡航手数料徴収法成立・・・米政府
(2010.3.5 読売新聞)
【ワシントン=小川聡】オバマ米大統領は4日午前(日本時間5日未明)、米国を査証(ビザ)なしで訪れることができる日本などの旅行者から、新たに10ドル(約900円)を徴収する内容の「旅行促進法案」に署名し、同法が成立した。
米政府がテロ防止などの目的で米国入国前に義務づけている電子渡航認証システム(ESTA)のインターネットを通じた登録の際に、手数料として課金する見通しだ。
米渡航手数料900円、「実質ビザ代」日欧反発
(2010.3.4 読売新聞)
米国を短期の観光や商用で訪れる際、今後は10ドル(約900円)余計にかかることになりそうだ。
米政府が新たに、査証(ビザ)なしで入国する日本や欧州諸国などの旅行者に義務づけている電子渡航認証システム(ESTA)のインターネット申請に手数料を課すためだ。
年間で延べ300万人を超える日本人の米国旅行者の大半に適用され、第三国への乗り継ぎ客も対象となるため、影響は大きい。

ESTAはテロ対策として導入され、申請は現在は無料だ。
しかし、米議会に昨年、観光のPRやシステム運営の経費を捻出する目的で申請を有料化する「旅行促進法案」が提出され、下院で昨年10月、上院で2月25日に可決された。
法案はオバマ大統領が4日午前(日本時間5日未明)に署名し、成立する見込みだ。

米議会の動きを受け、日本政府は昨年、2度にわたって有料化に懸念を表明する書簡を米側に送り、欧州連合(EU)などと共同でクリントン米国務長官らに申し入れも行った。
日本側は日米両政府が短期滞在者を対象にビザを相互免除する取り決めを交わしていることを踏まえ、「手数料は事実上のビザ代にあたり、取り決めの趣旨に反する」と指摘しているが、米側は「ESTAはビザではなく、入国手続きの一環だ」と説明している。

米政府は有料化の時期を明示していないが、一定の周知期間を経て、インターネットでのクレジットカード決済などによる手数料徴収を始めるとみられる。
外務省幹部は「我々の主張が聞き入れられず、旅行者に新たな負担が課されるのは遺憾だ」としている。
日本側には「景気が低迷する中、米国民に新たな負担を求めずに観光振興の費用を確保する狙いだろうが、逆に観光客が減れば元も子もない」という声もある。

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3月1日(月)−ブラック企業の見分け方

今日の夕刊フジで「就活学生が熱視線 内幕暴露”ブラック企業リスト”の実態」なるものが掲載されていた。
いわゆるブラック企業とは、Wikipediaによれば、「従業員に労働法やその他の法令に抵触しまたはその可能性がある条件での労働を強いたり、関係諸法に抵触する可能性がある営業行為を従業員に強いたりする、若しくは賃金や福利厚生等に対して見合わない異常に過大な身体的、精神的、金銭的、本来の業務とは無関係な非合理的負担を与える労働を従業員に強いる体質を持つ企業(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)のことをさす」とある。
そうした企業が有名企業の中にも散見される今、就職しようとする人たちの中では自分が志望する会社がブラックかそうでないかを、どうやって見分けようか躍起になっている。
それはそうだろう。
就職氷河期を超える厳しい就職戦線を乗り越えてやっと入れた会社がブラックでは目も当てられないからだ。

そして、自分の志望先企業が「ブラック企業」かどうかの見分け方について、ネット上ではいろいろなことが書かれているが、私はもっと簡単な方法があるのではないかと思った。
巷で言われるようにブラック企業偏差値ランキングなるものも役に立つだろう。
しかし、OBや現場訪問などを通して自分の目で確かめる点として、ワーキングマザー(正社員)と言われる人たちがどのくらいの割合で志望先の会社に在籍するかを確かめるのも一つの指標になるのではないか。
これは昨年から始めた社会保険労務士の試験勉強を通してあらためて気付いたのだが、ワーキングマザー(正社員)に対する法的保護は、会社が労働法規を守る気があれば、不十分と言われる日本の労働法制の元でもそれほど悪くはないのだ。
逆に言うならば、会社にとって彼女たちは一種のコスト要因でもあり、男性社員と独身女子社員(現在は契約社員)だけでマネージメントしてきた多くの日本企業にとって面倒な存在でもある。
さらに言うならば、私がかつて「少子化も人口減も止まらない理由」で書いたように子供の健康を理由に休暇を取るリスクがある母親は日本的ビジネスの効率化を妨げるので、彼女たちを戦力としてみない企業は、何とかして辞めさせようとするだろう。

女性はそういったことには敏感に反応する。
一般論で言えば、彼女たちは男性社員ほど会社にしがみつく必要はないし、いざとなれば専業主婦の立場に逃避することもできる。
つまり、ブラック企業、あるいは、その体質が匂ってくるような会社に留まる必要もないし、元より、そういう会社はワーキングマザー(正社員)が勤められるような雰囲気にはない。
従って、彼女たちを貴重な戦力とみなし、職場に留めようとする努力をする会社にブラック企業の可能性は少ないと言えるのではないか。
果たしてブラック企業偏差値ランキングに登場する会社にワーキングマザー(正社員)は何人いるのだろうか。

就活学生が熱視線 内幕暴露“ブラック企業リスト”の実態
(2010.3.1 夕刊フジ)
冷え込む一方の新卒採用に苦しむ大学生らの間で、「ブラック企業リスト」が話題になっている。
美辞麗句を並べた会社案内や人事担当者の言葉からは見えてこない企業の“ヤバい”内幕をネット上で暴露したものだ。
この情報をもとに入社をためらう学生まで出ているというから企業側も看過できない。
果たしてその中身は真実か−。

就活中の学生らの間で最も有名なのは、大学入試の偏差値に見立てた「ブラック企業偏差値ランキング」。
名の知れた企業が偏差値で区分けされており、数値が高いほど過酷な勤務実態の“ブラック企業”ということになる。

ランキング上位には、一般のイメージからも厳しいノルマが想像される販売系の企業や技術系の新興企業が名を連ねている。
その下には有名企業の名前もちらほら。中には、大学生の就職希望ランキングで毎年上位にランクされる業界大手の企業名もある。

その暴露内容は、こんな具合だ。
《俺、社員だけど仕事きついぜ〜。給料安いし。30の時に手取りがやっと20万超えました》《(入社したら)ソルジャー決定です。来年は離職率が過去最高になる》《真っ黒だよ。イメージだけで選んだやつは死にます。ダチは一日11時間労働だそうです》

実態はどうなのか。
名指しされた企業に勤務する20代の社員に聞くと、「ブラックかどうかは別として、学生が抱くイメージと仕事の内容はまったく違うし、仕事の結果に対するプレッシャーが半端ではなくキツいのも事実」と苦笑いする。
「給与が低いのは事実ですが、30歳で手取り20万円は大うそ。世間並みにはもらえますよ。ただ、業務の性質上、ここまでやったら終わりというものが見えず、労働対価としては低いでしょう。競争も激化の一方で、目標をこなすには相当の努力が必要です」

世界的に有名なメーカーも俎上に上げられているが、《先週末また独身寮で自殺があったよ。設備の機械屋だったんだけど、相当プレッシャーあったみたい。会議の最中に部長達が突然部屋から出ていくんで、何事かと思ったらそういうことだった。これでまたまた独身寮に開かずの間が増えてしまった》と、やけに具体的。

こうした情報提供に対し、学生の中には《よかった〜。最終(面接を)ブッチ(=無断キャンセル)で、他の会社の面接選んで》《ここを早く読んでれば、筆記や面接で糞田舎まで行かずに済んでた》などと応じる者も現れており、就活に影響を与えているのは間違いなさそうだ。

ネットのアングラ情報に詳しいITジャーナリストの井上トシユキ氏は「企業説明会の内容と実態がかけ離れていたり、あまりにも過酷な労働を強いる企業の内部告発情報が、数年かけて収れんされたようだ。学生の皆さんは、これらの情報を『その可能性もある』程度に受け止めたうえで、OBや現場訪問などを通して自分の目で確かめることが大切でしょう」と話している。

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