初心者のための外貨投資入門

【2002年12月1日掲載】


72の法則を知れば、いかにコンマ以下の競争(キャンペーン)がバカバカしいかわかるはずだ!

サラリーマンやOLならそろそろ冬のボーナスの時期だ。
かつてはこの時期になると「定期預金(もちろん円建ての)をしてください。」と言って系列の銀行から勧誘があったものだが、今はそんなことを言ってくるところはほとんどない。
ペイオフに対する国民の不安で、円普通預金が集中している大手都銀は、「預金保険料をはじめとするコストが嵩む普通預金はこれ以上必要ない。(2002年11月25日号のAERA−「大銀行が口にしない本音−もう預金はいりません」)」という。
預金流出に苦しむ地方銀行などの場合は、そんなこと言って回れば、怒鳴られるか、変に勘ぐられて逆に預金口座を解約されかねない、という状況だ。
それに、今の時勢では、ボーナスすら出ないところもありそうだ。

では、虎の子の金を郵便局に預けるか?
そう考えてる人は非常に多いと思う。
あるいは日本の国債を買ったり、いろんな名称が付いている地方債を買ったりする人もいるだろう。
しかし、1999年4月21日号のNewsweek Japanは、地方財政に関してこんな記事も掲載している。
このときから約3年半、地方財政が好転したと考えている人はほとんどいないはずだ。

ところで、あなたは「72の法則」を知っているだろうか?
これは、投資元本が2倍に増えるまでの期間は、「72÷年利」で求められるもので、たとえば金利6%で運用した場合、元本が2倍になるまでの期間は12年になるということだ。
こう考えれば、円建ての定期預金や国債を買うことは、手間がかかるだけ無駄ということがわかるだろう。
ちなみにこの法則は投資先進国のアメリカでは金融論を学ぶ学生が最初に習うことらしい。
日本では、こういうのを知る機会はあまりないようだが・・・

外貨投資にはリスク、最大のものは為替の変動によるものだが、そういうものがあるのも事実だ。
また、商品の種類も、外貨預金や証券会社でやる外貨MMFをはじめとして、いろいろな投資商品がある。
その中で、一番素人にもやりやすいのは、証券会社の外貨MMF(Money Market Fund)だ。
外貨預金と違って、満期がないし(いつでも下ろせる=円に戻したり、ほかの同通貨の債券や投資信託が買える)最低預け入れ金額のハードルは低い。
あと重要なのは、一般的に外貨MMF(Money Market Fund)の方が、金利(厳密には予定利回りという)が定期預金の金利より高く、為替手数料(spread)が安い、ということなどがある。
勤め先によっては、証券会社の証券総合口座を給与振込み口座として指定できるところもあるので、そういった人はもっと便利だ。
そうでないところに勤めている人は、振込み手数料を証券会社負担にしてくれるようなサービスがあるところを選ぶといいだろう。

資産運用をする金融機関を選ぶ上で重要なのは、外貨MMF(Money Market Fund)の資金をその通貨のまま、自分の銀行口座に送金(もちろん外国銀行へも送金できればベスト)する取り扱いをしてくれるところを選ぶことだ。
今の時代、外貨で運用したものを外貨のまま使ったり、他の商品に投資できるようにフレキシブルに動かせることは最も重要なことだ。
第一、いちいち円に戻していたらそれだけで運用益が飛んでしまうことがあるからだ。

では、当面、まあだいたい10年くらい下ろす予定のない金を外貨投資に振り向けてみよう。
10年間下ろす予定のない金というものが、生活保護世帯やそれに近い人(そんな人はパソコンでインターネットもできないはずだ)、あとは生活するのがぎりぎりという人を除けば、少しはあるはずだ。
とりあえず、「子どもが大人になったときのために」という金が、あるいは「老後のために」という金がそれに当たる。

為替の変動が気になって仕方がない、という人は意外と多いかもしれない。
円高(外貨安)になれば外貨投資は元本割れする、そんなものはやりたくない、という人だ。
当然の感情だと思うが、どのくらいの期間預ければいいか?シミュレーションをやってみよう。
本格的にやるならインターネットサイトや自分でExcelで関数埋め込んで作ればいいが、簡単にやるなら次のようにやればいい。
はっきり言ってこれをやりもしないで、怖がっている人も非常に多いと思うからだ。
当然のことながら2ヶ月後に行く温泉旅行の小遣い稼ぎに外貨投資をするなら、初心者は絶対にやるべきではない。


50代以上の方に・・・退職金の半分は外貨で運用を

今の熟年世代は、退職金も年金も充実している、いわゆる恵まれた世代とも言われている。
と、言って私はあなた方を羨んだり(まあ、少しはその気持ちがあるが)非難したりするわけではない。
要するに、ここで言いたいのは、あなた方の多くは「元本に手を付けずに、あわよくば利子で遊びのお金くらい賄いたい」という気持ちがあるだろう。
だったら、外貨運用で得た利子をそれに充当すればいいではないか!
かつてはよく新聞で「こんな低金利では遊びにも行けない!」という投書を見かけた。
私に言わせれば愚かなことだと思う。
要は、あなた方は、「元本を銀行から引き出す気がないのなら、元本はユーロでも米ドルでもいいではないか!」という発想を持つべきなのだ。
外貨建ての元本を円に戻すという発想を持つから元本割れという恐怖が頭に浮かぶのだ。
「病気になったらどうするか?」って・・・
人生を前向きに生きている熟年は憎らしいほど元気なものだ。
世界を旅する欧米人の熟年夫婦を見てみればいい。
彼らがいい見本だ。

これは早期退職を余儀なくされた中高年サラリーマンにも当てはまる。
早期退職で割増退職金をもらったら、同じように考えてみてはどうか。
そうすれば、転職で多少年収が落ち込んでも今までの生活レベルをあまり落さずに暮らせるのではないか。
まあ、そうできる人は限られているかもしれないが、考え方の1つであると私は思う。


ドルコスト平均法で外貨投資を

ところで、外貨投資がまとまった金額がないとできない、なんてことはない。
いわゆる毎月の積み立て(例えば野村證券の積立て倶楽部など)によって外貨MMF(Money Market Fund)を買うことだってできる。
これが「ドルコスト平均法」という為替リスクを最小限に抑えられる合理的な投資方法と言われてるものだ。

ドルコスト平均法
<Dollar Cost Averaging (DCA)>

平均取得価額の引き下げを目指す証券投資の方法で、長期にわたって一定の金額を、一定の期間、一定の証券に投資する方法である。
価額が高い時には購入証券が少なく、低い時には購入証券が多くなり、結果として平均取得価額が割安となる方法なので、長期投資に向いている。

A technique of buying a fixed dollar amount of a particular investment on a regular schedule, regardless of the share price.
More shares are purchased when prices are low, and fewer shares when prices are high.

要するに、証券会社がある毎月一定日が来ると円資金を自動的に特定通貨の外貨MMF(Money Market Fund)に振り替えてくれるもので、為替の変動に一喜一憂することなく、腹をくくって投資できるものだ。
証券会社にそういうシステムがないときは、毎月一定日が来たら、それを自分でオーダーしてやるしかないが、たいていの場合は電話やインターネットでできるようになっているはず(それを店頭で、というところは口座の開設をやめるべき)なので、為替のことを気にせずやるように腹をくくりたい。
私の経験から言っても為替に一喜一憂していたら、ほかのことにも支障が出るからだ。
確かに1998年秋に数日で何十円も米ドルが下がる大暴落があったが、そんなことはもう十数年ないと思うしかない。


さて、問題は夫婦の間の金銭的価値観が違う場合だ。
これについて国際投資コンサルタントの榊原節子さんは、2002年7月18日付けの産経新聞で心理セラピストのオリビア・メラン氏の言葉を引用して、こう書いている。
しかし、残念ながら、具体的にどうしろというアドバイスはない。
要は夫婦の一方が外貨投資というものに興味を持っても、片方が非協力的だとうまくはいかないだろう。
まずはお互いのマネータイプを知ってから外貨投資なるものはアプローチせよということになるだろうか?

マネータイプと夫婦げんか
私たちの「お金の付き合い方」には5つのタイプがあると心理セラピストであり、「お金上手な女になれる本(Money Shy to Money Sure: A Woman's Road Map to Financial Well-Being)」の著者、オリビア・メラン(Olivia Mellan)さんは言う。
  1. 貯め込み型
  2. 浪費型
  3. 清貧型
  4. 逃避型
  5. お金志向型
しかし、いずれも極端に走ると人間関係、なかんずく夫婦関係に問題が生じてしまう。

貯め込み型は心配性で、買いたいものも我慢してお金を貯める。
立派なことだが、極端に走ると、ことごとく切り詰め、まして贈り物なんてとんでもない、
となり、配偶者から「何のために生きてるの?」と非難されるハメになる。

反対に浪費型の人は楽天的で、刹那的、自分のためにも使うが、友人にも気前よく奢り、結構楽しく暮らす。
しかし、分不相応に浪費すると悲劇となり、配偶者はたまったものではない。
貯め込み型と浪費型が夫婦だと、そのストレスは倍増する。

清貧型は道徳観念の強い人に多く、お金を使うこと、金持ちになることに後ろめたさを感じる。
両親から金持ちは悪人だとインプットされた人がなりやすい。

逃避型は、お金のことは皆目わからない、数字にも弱い、自信もないからと、支払いや貯蓄や投資の判断を避け、配偶者に頼るタイプ。
その配偶者に騙されたり死なれたとき悲劇が訪れる。

お金指向型は世の中がお金中心に動いている、と思う。
それで必死になって稼ぎ、投資に励む。
休暇で豪華な旅行に行っていても、旅先からまでも証券会社に電話するタイプである。
清貧型からはさげすませれるし、極端な場合は、お金との関係に忙しすぎて配偶者との関係がおろそかになる。

私たちは、両親のどちらかのマネータイプを受け継ぐ場合が多い。
また、子ども時代、貧乏で恥ずかしい思いをしたとか、意地悪な金持ちにバカにされたなどの経験が尾を引いている場合もある。

お金が原因で夫婦げんかになったら、ぜひこうした互いのマネー体験を話しあってみるのをお薦めする。
存外、腑に落ちるのではないだろうか。

そう、私の場合もそうだが、外貨投資を始めてからよりいっそう新聞の経済面に目を通すようになった。
これも外貨投資の大きな効用の1つだ。
すべては自分で小額でもいいから始めてみるべきだと思う。
どこの金融機関や商品がいいかは自分で探すしかないが、リンクだけは貼っておこう。

全国銀行協会 投信資料館 日本証券業協会
モーニングスター Financial Supermarket Standard & Poor's
Social Funds

また、英語の勉強をしなければと思うときもあるだろう。
西洋の諺では「必要は発明の母(Necessity is the mother of invention.)」ともいう。
発展途上国の少年少女が英語を話すのも、為替レートに詳しいのも、すべてはそこに始まる。
嫌な予想だが、日本が途上国なみに落ちぶれたとき、外貨を得、外国語を操る奴が勝者になる。
もしかすると、そんな時代が来るかもしれない。

日本の円預金の金利がほとんどゼロに等しくなってからずいぶんたったような気がする。
失われた10年(Lost Dicade)と言われた1990年代が終わっても一向に日本経済は立ち直りの兆しが見えず、毎年のように行われるほとんど意味のない国費投入のせいで莫大なツケだけが後世に残されようとしている。
金利をゼロに近くしたのは莫大な借金を抱える日本のゾンビ企業群(PDF)の1つである建設業界を支えるためでもある。
また、この業界は戦後のほとんどの時期で政権を握った自民党の支持母体でもある。
はっきり言おう。
日本の円預金の金利がまともになるのは、これらの企業群が徹底的に見捨てられ、政府・自民党の力をもってしても支えきれなくなってから後のことだ。
それまでにはキャピタルフライト(資本逃避=capital flight)によって引き起こされるハイパーインフレと円安が庶民の台所を直撃するだろう。
つまり、円の海外流失を防止するために金利を信じられない高さまで持っていき、それで運良く危機が一段落すれば、まともな水準まで戻るというわけだ。
ただ、こうなったら自殺者と犯罪者、失業者が街には群れなすことにもなるが・・・
事実、1997年7月のタイバーツ暴落に始まる"Asian Flu (アジア経済危機)"のとき、シティバンクの3ヶ月物のタイバーツの定期預金の金利は一時期15%を超えるものだった。

ある人は言うだろう。
日本とタイの外貨準備高は全然違う、国民が持つ金融資産ははるかに多い、あるいは経済的基礎条件(ファンダメンタルズ=fundamentals)は日本の方が断然上だ。
でも、あえて言う。
それらが危機が起こらないという保証になるのか?
日本の諺ではよくこう言われる、「驕る平家は久しからず(Pride will have a fall.)」。

外貨投資のリスクなのだが、第二次世界大戦後、日本の基本政策はずっとアメリカの言いなりになってきたわけで、当然ながら米国債も大量に保有している。
で、その日本国が米国債を大量に売る日が来たら・・・実際、1997年6月23日、当時の橋本首相が「そうしたい衝動にかられる」と、発言したとき、アメリカの市場はかなり動揺した。
そういう日が来たとき、米ドルへの投資は大きなリスクを抱えていたことがわかるだろうが現実問題として日本政府がそのオプションを取る可能性は少ないと言われている。

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