世界で最も安全な米国産狂牛肉

【2006年2月21日掲載】


アメリカの傲慢な食肉業界と、そんな奴らに支持されるアメリカの国会議員、そして農務長官のマイク・ジョハンズ(Mike Johanns)に親玉のブッシュ大統領は、まるでアヘン戦争(First Opium War)を仕掛けたかつてのイギリスと全く同じメンタリティを持っているようだ。
アヘン戦争は、清朝(Qing Dynasty)の欽差大臣、林則徐(Lin Zexu/Lin Tse-hsu)によるアヘン密貿易の強硬な取り締まりに怒って起こしたイギリスの破廉恥な戦争であったが、今のアメリカの言う「対日制裁(sanctions on Japan)」も全く同じことだ。

言い換えれば、不義なことをしているのはアメリカなのにもかかわらず、それを日本側に指摘され、日本がしごく当然な防衛手段を取ったにもかかわらず、逆恨みして制裁を加えるなどとしている点は、傲慢以外の何物でもない。
アメリカにしてみれば、今まで外圧をかければコロリと言うことを聞いた日本政府が逆らったのが不満らしい。
まして忠犬ポチと揶揄され、最後までブッシュ親分に付いていきますの小泉日本が逆らったのだ。
それにアメリカの牛肉は「危険」というので買ってくれる国がなくなってきた中で、最後の頼みの綱が小泉日本だったのだろう。(Asia suspends US beef imports, Russia suspends US beef imports, Barriers go up against US beef)
対する日本側も「そんなに安全で良質なら日本だけではなく世界中の人々が喜んで買ってくれるだろう。なぜ対日輸出だけにこだわるのだ」と言い返し、尚も恫喝するなら黙って政府が保有する米国債を売り浴びせればいいのだ。
アメリカに恫喝されてテロ攻撃をかけたオサマ・ビンラディン(米中枢テロの伏線)に比べれば至極もっとも、かつ平和的な外交戦術だ。

そもそもアメリカの恫喝は今に始まったことではない。
昨年の米国産牛肉再輸入の時に限っても、民主党衆議院議員の山田正彦氏の米国調査団報告によると、「日本がこれ以上、米国の牛肉の輸入を遅らせるようであれば、米国政府も、産業界も、議会もすでに忍耐の限度にあって、農業問題、通商問題も超えてきわめて二国間の政治問題、悪化につながるものである。」と米農務省のペン次官(U.S. Agriculture Under Secretary J.B. Penn)は恫喝するように、山岡賢二衆議院議員を団長とする日本側調査団(Japanese multiparty delegation)をなじったという。(USDA threatens Japan over mad cow prevention measures banning US beef imports)

そして、日米の政治的思惑により2005年12月12日に輸入が再開された米国産牛肉に、牛海綿状脳症(BSE)の病原体がたまりやすい特定危険部位の脊柱(せきちゅう)(背骨)が混入していたことで、日本政府はアメリカに対し輸入を再度停止することを通告した。

米国産牛肉輸入 再開第1便到着
(2005.12.16 産経新聞)
農林水産省と厚生労働省は16日、米国産牛肉が同日朝に成田空港に到着したと発表した。
米国産牛肉の輸入は2003年12月にBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)問題で禁輸されて以来、2年ぶりとなる。
両省によると、到着したのは牛肉4.3トンとタンや横隔膜などの内臓0.3トンの計4.6トン。丸大食品(大阪府高槻市)(2288)が輸入した。

輸入解禁となったのは、BSEに感染しにくい生後20カ月以下で、BSE病原体が集まりやすい脊髄(せきずい)などの特定危険部位(SRM)を除去した肉に限定されている。

両省では、米政府が発行した輸出証明書の内容を確認し、脳や脊髄などのSRMが混入されていないか、日米で合意した施設で処理された牛肉であるかなどの輸入条件が順守されているかどうかについて同日午後、同空港内にある両省の検疫所で検査を実施。条件が満たされていると確認次第、輸入を認める。
輸入元の丸大食品は「品質確認と社内教育のためのサンプルとして輸入した」という。

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米国産牛肉:再び輸入禁止 危険部位の混入確認
(2006.1.21 毎日新聞)
政府は20日、米国から同日朝輸入された牛肉に脊柱(せきちゅう)(背骨)が混入していたことが確認されたと発表した。
成田空港での検査で、一まとまりで空輸された41箱のうち3箱(55キロ)から見つかった。
昨年12月12日に再開された米国産牛肉の輸入では、脊柱などBSE(牛海綿状脳症)の病原体が蓄積しやすい特定危険部位の除去が義務づけられている。
この違反を受けて政府は、米国から原因について報告があり安全が確認されるまで、輸入手続きを全面的に停止することを決め、米側に通告した。

この肉は米ニューヨーク市の中小食肉処理施設、アトランティック・ビール・アンド・ラム社(Atlantic Veal and Lamb Inc.)が出荷した。
日本向け輸出をするための認定を米政府から受け、検査官も常駐していた。しかし、混入していた脊柱は、骨が肉に付いたままの状態のもの。
「専門家が見れば一目瞭然(りょうぜん)で気がつく」(農林水産省幹部)はずなのになぜ見逃されたかについて、米側の詳しい説明を求める。

12月の日米間の合意では、輸入できるのは、特定危険部位を除去した生後20カ月以下の牛肉に限られている。
今回、この輸入条件は残すが、輸入の手続きを当面停止することにした。
中川昭一農相は20日夕に記者会見し「極めて遺憾。輸入プロセスの重大な違反だ。米国に厳重に申し入れたい」と述べた。

農水省と厚生労働省は、輸入条件が守られれば米国産と日本産のリスクの差は非常に小さいとした食品安全委員会の答申を根拠に、輸入再開に踏み切った。
条件の順守を確保するため、両省は12月に査察官を派遣。米国のシステムにほとんど問題はなかったとしていた。
一方、安全委は答申で、重大な違反があった場合は再び輸入停止すべきだと指摘していた。

違反があった肉は積み戻すか焼却処分する。
12月以降にすでに輸入された米国産牛肉1373トンは、「これまでの検査で問題は出ていない」として回収しない方針。
両省は輸入牛肉を港や空港で検査している。しかし、肉が入った箱を開けて検査するのは輸入量の平均約1割という。【位川一郎】

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そして、日本側の再輸入禁止から約1ヵ月後、米農務省は、475ページに及ぶ膨大な報告書を作成し、主な再発防止策として次のことを発表した。
どうやら、この報告書をもってこの問題にケリをつけたいということらしい。(Johanns announces results of investigation into ineligble veal shipment to Japan)

  1. All FSIS inspectors who work in plants that are certified to export beef are undergoing additional mandatory training to ensure they fully understand U.S. export agreements.
    牛肉を輸出する資格を持つ工場で働くすべての食品安全検査局(FSIS/Food Safety and Inspection Service)の検査官は、アメリカの輸出協定を完全に理解していることを保証するための特別訓練を義務づけている。

  2. USDA will require plants to maintain a list of specific products they are certified to ship to any country, instead of a blanket export certification and that list will be kept readily available to USDA inspectors.
    農務省(USDA/United States Department of Agriculture)は、包括的輸出証明の変わりに、輸出許可を与えられた特定の製品についてのリストを整備するように工場に対し要求することとする。
    そして、そのリストは農務省の検査官が迅速に活用できるように維持される。

  3. USDA inspectors in the plants will be notified of changes to a plant's eligibility to export at three separate times in the certification process: when the plant applies for certification, when the plant is audited and when a plant is certified or delisted.
    工場にいる農務省の検査官は、工場が輸出証明を申請したとき、工場が監査対象となるとき、工場に輸出資格が与えられる、又はその逆の場合といった輸出プログラムに変更がある場合は通知がされることとする。

  4. Final export certification cannot be completed until in-plant inspectors have undergone additional training, ensuring coordination between AMS and FSIS.
    確定輸出証明書は工場内の検査官が特別な訓練を受け、農産物市場サービス公社(AMS/Agricultural Marketing Service)ないし食品安全検査局(FSIS)の保証を受けるまで仕上げることができない。

  5. Initiating with the resumption of exports to Japan, USDA will require a second signature on every shipment of beef for export, unless a trading partner indicates a second signature is not necessary for U.S. exports to that country.
    日本への輸出再開を始めるにあたって、貿易相手国が2人目の検査官の署名を不要としていない限り、農務省(USDA)は輸出用牛肉のすべてに2人目の検査官の署名を求めることとする。
これを受けて、2月19日の産経新聞社説は、「米BSE報告−問題の本質解明が足りぬ」として、「報告書は問題の本質に迫ったものとは言い難い。問題は検査官が「なぜ」精通していなかったのか、現場への情報徹底に構造的な問題はないのか、であろう。検査官個人の資質の問題で片付けられる話ではない。日本政府は、この問題点についても米側の認識をしっかりとただしてほしい。」と言っているが、Newsweek Japanの牛肉「粉飾検査」に実態を書いた記者のトレーシ・カーペンター(Traci Carpenter)は、農務省獣医のクリスティーナ・ドゥマル(Christina Dumal)の例をあげ、検査官が、食肉業界や上層部からの圧力を受け、事実と異なる証明書へのサインを強要され、それを断ると不法な懲戒処分を食らっている、と書いているのだから、その腐食の連鎖を解決することなしには、どんな対策も無意味なのだ。(ワシントンタイムズ「USDA accused of faking forms(偽造書類を告発された米農務省)」

しかも、一見すると報道や言論の自由があるように見えるアメリカで、ことBSE関連のニュースになるとメディアは沈黙すると、ドキュメンタリー作家のナンシー・グッド(Nancye Good)は言う。
それが事実かどうか検証したいなら、相当前の過去記事でも拾えるCNNNew York Timesで、あるいは素直にGoogleで、米国産牛肉輸入問題関連の記事で出てきた固有名詞や人名を入れて検索してみるといいだろう。
おそらく彼女の言っていることは事実ではないかと推測できるような検索結果が出るだろう。

そして、農務長官のマイク・ジョハンズ(Mike Johanns)が再発防止策と言っている2番目と5番目のことに注目して欲しい。
日本のメディアはどういうわけか原文を忠実に訳さないし、問題点も指摘しないが私の拙い語学力でも次のことは明確に言える。
  • 2番目はUSDA will require plants to maintain a list --- で、どう見てもリストを整備するのは工場ということになる。しかも義務づけるとなっていないので、あくまでも自主的にやらせるということだ。
    自主的にやらせてうまくいかないのは、誰が考えても(農務省の役人以外は)わかるだろう。

  • 5番目は検査官の増員を必要とすることだが、アメリカ最大の消費者団体コンシューマーズ・ユニオン(Consumers Union)の科学者マイケル・ハンセン(Michael Hansen)は冷ややかに、「証明書に署名する人間を1人増やしたところで、なんの解決にもならない」と言っている。
    当たり前だ。問題は彼らが正義と良心に従って職務を遂行すれば、上層部から命令不服従(disobeying orders)という不当な行為でもって処罰され、さらには客観的に見ても不十分な業績評価しか受けられなくなるということになれば、悪魔に魂を売るか、職場を去るかいずれかになるからだ。

また、これが発表された後にコメントした米国食肉協会(AMI/American Meat Institute)のパトリック・ボイル会長(AMI President and CEO J. Patrick Boyle)と、モンタナ州選出のコンラッド・バーンズ上院議員(U.S. Senator Conrad Burns/Wikipedia)(共和党)の言い草がものすごい。
読売新聞の記事(ウェブ版)でも一部紹介されているが原文をそのまま訳してみるとこうだ。

パトリック・ボイル氏は、「我々は日本政府に米国産牛肉の輸入停止をやめ、できるだけ早く取引を再開するように強く要求する。米国産牛肉は世界中で最も上質で安全であり、日本の消費者にとって購入の選択肢となるはずである。」とコメント。

一方のコンラッド・バーンズ氏は、「この(農務省)レポートは、この(日本が問題にしている)事件が、決して誰にも、そしてどこにも食の安全の脅威をもたらしていないことを証明している。米国産牛肉は世界で最も安全であり、農務省は引き続きそれが保証されるように包括的な措置を取った。私は今、この事件を日本が政治的目的のために使っているのではないかと心配している。日本は直ちに(牛肉の)取引を再開しなければならない。さもなければ、連邦議会は対応策を取らざるを得なくなる。私はモンタナ州の牧場経営者が日本政府の無用な遅延行為や脅しの策略(scare tactics)によって損害が与えられているなら傍観(stand by)しないだろう。」と言っている。

米で牛肉の早期輸入再開要求相次ぐ、米報告書発表受け
(2006.2.18 読売新聞)
【ワシントン=広瀬英治】日本による米国産牛肉の輸入再停止に関する米農務省の報告書が発表されたことを受け、米食肉業界や議会から、日本の早期輸入再開を求める声が相次いでいる。

全米最大の食肉業界団体である米国食肉協会のパトリック・ボイル会長は17日の声明で「問題の牛肉が日本に輸出されたのは、1業者による特異で軽率なミスが原因だった」と、米業界全体の問題ではないとの見方を強調。
日本政府に対し「可能な限り早く牛肉輸入を再開するよう強く求める」と表明した。

畜産が盛んなモンタナ州選出のコンラッド・バーンズ上院議員(共和党)は同日、声明を出し、「日本はただちに輸入を再開しなければならない。さもないと議会は行動を起こすしかなくなる」と、対日経済制裁の発動さえちらつかせ、強硬に即時再開を迫った。
Mistaken beef shipment to Japan posed no food safety risk, says USDA Report - AMI Calls for Full Restoration of Trade with Japan (February 17, 2006)
A 475-page report released by Agriculture Secretary Mike Johanns examining the shipment of bone-in beef that resulted in the suspension of beef trade to Japan found that the product in question posed no food safety threat. While urging the Japanese to reopen their markets to U.S. beef, Secretary Johanns also noted that the shipment in question occurred because of a misunderstanding between the exporter, the government inspector and the importer as to what products were permitted for trade.

In a statement released to the national media, AMI President and CEO J. Patrick Boyle commended USDA for the thoroughness of the report, and noted that the "USDA inspection and export verification system is comprehensive, and has been enhanced with additional training and plant audits as part of the plan announced by Secretary of Agriculture Johanns immediately following the discovery of the shipment of the product at issue."

"We urge the government of Japan to end the suspension of beef imports from the U.S. and to resume beef trade as soon as possible. U.S. beef is amongst the finest and safest in the world, and should be a purchase option for Japanese consumers," added Boyle.
Burns calls for immediate end to Japanese delays
Praises USDA Investigation into Veal Shipment
(February 17, 2006)
Contact: Matt Mackowiak
(202) 224-6830 / (202) 380-8183

Washington, DC - U.S. Senator Conrad Burns (R - Mont.) today issued the following statement upon the release of the U.S. Department of Agriculture's (USDA) final report on the trade violation in January that triggered a halt to Japan importing beef from the U.S.:

"This report proves this incident never posed a food safety threat to anyone, anywhere. American beef products are the safest in the world, and the USDA has taken comprehensive steps to ensure it remains that way. I am concerned that Japan is now using this incident for political purposes. Japan must re-open the market immediately, or Congress will have no choice but to take action. I will not stand by while Montana ranchers are hurt by unnecessary delays and scare tactics in Japan."

ほかにも、朝日新聞によれば、シャンブリス(Saxby Chambliss)上院農業委員長(共和党)が「日本はすぐに輸入を再開すると確信している」、ボーカス(Max Baucus)上院議員(民主党)が「今回の報告は、日本が即座に輸入を再開する根拠になる」とか言っているようだ。

Japan Export Shipment Investigation
Chairman's Statement of USDA Findings

(Friday, February 17, 2006)

The Secretary of Agriculture today announced the results of the USDA investigation of an ineligible shipment of beef sent to Japan last month. The results of this investigation are clear - based on internationally accepted science, Japanese consumers were never at risk from the beef contained in the shipment.

農務長官は先月日本に輸出された不適当な牛肉の積荷の調査結果を発表した。その調査結果は国際的に受け入れられている科学に基づいて、日本の消費者はこの積荷の牛肉から受けるリスクは決してないことが明確である。

While our unique trade agreement with the Japanese forbids some of the contents of the shipment, the USDA has forthrightly addressed this oversight. USDA immediately delisted the two plants involved, thoroughly investigated the incident and swiftly provided the results of that investigation to the Japanese as well as the American public. Finally, the USDA is implementing new safeguards to ensure that an incident like this does not happen again.

その上、日米間の独特の貿易協定は一部の積荷を禁じているため、農務省は率直にこの過失(見過ごし)に対処した。農務省は即座に関与した2つの工場を(輸出許可の)リストから外し、徹底的にこの問題を調査し、迅速に調査結果をアメリカ国民と同じように日本人に提供した。最後に農務省はこのようなことが二度と起こらないように新しい予防手段を講じている。

This incident is not one of food safety or human health but a lack of familiarity with the requirements of a unique trade agreement. I am confident that both governments' clear understanding of what caused this one lapse in our export agreement will strengthen the bilateral trade relationship between our nations and that beef trade will soon resume based on the principles of transparency and sound science.

この事件は食品の安全性や人間の健康といったことではなく、独特の貿易協定の要件の不知に帰すものである。私は我々の輸出協定におけるささいな過ちをもたらしたものを両国政府が明確に理解することが二国間関係を強化し、牛肉の取引が透明性と健全な科学に則して即座に再開されることを確信している。

Senator Saxby Chambliss (R-GA)
Chairman, Senate Agriculture, Nutrition and Forestry Committee

何て素晴らしいのだろう。
アメリカの牛肉は世界一安全なのに、日本政府がそれを理解できないのが、いけないのだ」という論調だ。
アホらしくて見ていられないのだが、2月18日のブロードキャスターというテレビ番組で、「BSE問題について知っているか、気にしているか」というインタビューをアメリカでしたところ何と8割以上の人が無関心だったというのに出演者も驚いていた様子だった。
つまり無関心、イコール知らされていない、ということなのだろう。
ここで見てもらいたいのは、私が参考までに編集した米国産牛肉輸入問題関連の記事だ。
Newsweek Japanで2週連続で特集されたアメリカのBSE関連の記事は、いずれもアメリカ本国版のNewsweekでは一行も載っていないという。
オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)のように告訴されるのを恐れているのではないか、とナンシー・グッド(Nancye Good)は言う。

とりあえず、彼らの素晴らしいコメントに対し、我々もお返ししなければならないだろう。
どこに返すかと言えば、当然、アメリカの上下両院議員とか農務省だ。
何せ、彼らは公式には日本政府が消費者の声を無視して米国産牛肉を輸入しない、と思っているからだ。
日本政府が消費者の声を無視しているのは事実だが、無視して輸入を再開した、のが事実だからだ。
まあ、どちらにしろ、彼らは日本を恫喝して狂牛肉を食わせるのが目的だから、正論を言っても無駄なような気もするが、消費者団体であるコンシューマーズ・ユニオン(Consumers Union)にでも聞いて、ほかに効果的なところがあれば、そこへメッセージを出すといいだろう。
何でこんなことをするかって?
日本政府が弱腰というか、アメリカのメッセンジャーとしての機能しかないからだ。

アメリカ政府へのメッセージ例
I'm one of Japanese consumers. US government's attitude proves the beef issue surely posed a food safety threat to anyone, anywhere. In fact, USDA inspectors are hardly reliable as far as shown to the Washington Times article "USDA accused of faking forms, http://washingtontimes.com/upi-breaking/20040422-073850-8113r.htm." American beef products are the most dangerous in the world, and some Congress People and the USDA have intimidated Japan to ensure it remains that way. I am sure that America is now using this issue for political purposes. It has just stopped me cold from eating US beef if Japanese consumers are hurt by neglect and scare tactics in America.

私は日本の消費者の一人だ。アメリカ政府の態度は、この牛肉問題が、確実に、誰にでも、そしてどこにでも食の安全の脅威をもたらしていることを証明している。事実、農務省の検査官はワシントンタイムズの記事「偽造書類を告発された米農務省」を見る限り、ほとんど信頼できない。米国産牛肉は世界で最も危険であり、一部の連邦議員と米農務省は引き続きそれが危惧されるような恫喝を続けている。私は今、この問題をアメリカが政治的目的のために使っているのではないかと確信している。私は日本の消費者がアメリカ政府の怠慢や脅しの策略(scare tactics)によって感情を害するなら二度と米国産牛肉は食べないだろう。

ところで、米国産牛肉の輸入再開第一便が到着してから再禁止するまでのものは安全かというとそうではないだろう。
それに輸入再禁止になる前にアメリカを出た牛肉はどうなったのだろうか。
昨年の米国産牛肉輸入再開時には産経新聞が「100%安全な食品など存在しない。米国産牛肉を食べる食べないは消費者の自己責任ではないか。」と言い放ったので、政府もそういう対応に終始しているようだ。
つまり、業者の良識に任せてあるということだ。
これがいかに当てにならぬかは今までの歴史が証明している。
もし、業者の良識が当てになるなら薬害エイズ問題も耐震強度偽装事件も起きていないのだ。
もっとも1ヶ月も前に市場に出回っている牛肉はすでに消費者のお腹の中ということになるのだがね。

市場に回った牛肉、追跡調査の予定なし−日本側対応
(2006.1.21 読売新聞)
林水産省は21日も職員が登庁し、情報収集などに追われた。
危険部位が混入した経緯や現地のチェック体制などについて、米国からの報告を待って今後の対応を協議する方針だ。

米国産牛肉の国内での検疫は、通常の書類中心の検査とは異なり、コンテナや部位ごとに実際に箱を開けて行っている。
コンテナ内のすべての牛肉までは調べないが、同省では「同じ処理施設のラインで生産された同一の部位なら、一部の肉だけに危険物が混入する確率は極めて低い」としている。

昨年の輸入再開以降、国内には約1500トンの米国産牛肉が輸入されているが、同省は、危険部位がついた肉が検査をすり抜けた可能性はほとんどないとして、すでに出回っている米国産牛肉を回収したり、追跡調査することは予定していない。
国内流入の米産牛肉、業者に自主検査要請−官房長官
(2006.1.23 読売新聞)
安倍官房長官は23日午前の記者会見で、米国産の輸入牛肉からBSE(牛海綿状脳症)対策で除去が義務付けられている脊柱(せきちゅう)(背骨)が見つかり、輸入を再び全面禁止した問題で、すでに国内に出回っている米国産牛肉についても、食肉輸入業者に自主的検査と報告を要請したことを明らかにした。
農水省は、これまで脊柱などの危険部位がついた肉が検査をすり抜けた可能性はほとんどないとしていたが、消費者に不安が広がっていることから、政府から関係業者に自主的検査を要請することにした。

安倍長官は輸入禁止の解除について、「原因究明や再発防止策の報告を米政府に求めている。その中身に私たちが納得しなければならない。我々がそれを見て判断する」と述べた。
また、昨年末の輸入再開については、「1年半にわたる日米協議の後、科学的な判断について、十分に議論して、食品安全委員会の決定が下された。(輸出再開の)条件が順守されることを前提に考えており、その時の判断は間違っていない」と述べた。
その上で、「あらためて米国産牛肉のリスクについて食品安全委員会の評価が必要だとは考えていない」として、今回の輸入禁止の解除について、再度、同委に諮ることはないとの考えを示した。
米産牛肉2000トン、税関通れず行き場失う
(2006.1.31 読売新聞)
米国産牛肉の輸入再禁止問題で、国内の税関を通過できずに行き場を失った牛肉が2000トン以上に上っていることが30日、業界団体の調べで分かった。
政府はすでに輸入した牛肉についても、輸入業者に再調査を求めており、業界側は新たな対応を迫られることになる。

商社や貿易会社などで構成する日本食肉輸出入協会(東京都港区)によると、今月20日の輸入禁止措置以降、通関できずにコンテナや倉庫に眠る牛肉は、報告分だけで計約1380トン。
同措置前に船積みされて洋上を日本へ向かっている分や、協会未加盟の業者の分なども合わせると、推計で約2200〜2300トン、原価は約20億円相当になるという。
大半は単価の高い冷蔵品で、賞味期限は約2か月。

BSE(牛海綿状脳症)発生で2003年12月に米国産牛肉が輸入禁止となった際には、通関できない牛肉が約1万3000トン発生。輸入業者の多くは自前で焼却し、損害分は保険で補った。
その後、保険会社の多くが輸入禁止を保険の適用外としたため、今回は輸入業者の自己負担となりそうだ。
米国産牛肉:米側に損害補償を要求−日本食肉輸出入協会
(2006.2.9 毎日新聞)

商社などが加盟する日本食肉輸出入協会(東京都港区)は9日、輸入再禁止で通関できずに倉庫などで保管されている米国産牛肉約1370トン(総額約14億円)について、米国食肉輸出連合会(USMEF)に対し、損害を補償するよう正式に要請した。

9日開かれた同協会の役員会で、同席したUSMEF日本事務所の担当者に伝えたもので、会議の冒頭にUSMEFから輸入停止措置に至った経緯の説明と謝罪があったという。

役員会では、牛肉を米国に戻して損害を補償してもらうほか、倉庫での保管経費も含めて補償してほしいとの意見なども出された。
USMEFは、米国の本部と早急に協議すると答えたという。
同協会は「米国は責任を認めているので、牛肉の劣化が進む前に補償してほしい」と話している。【小原綾子】

米国産牛肉の輸入再禁止問題で、商社などが加盟する日本食肉輸出入協会は、通関できずに倉庫などで保管されている米国産牛肉について、米国食肉輸出連合会(USMEF/U.S. Meat Export Federation)に対し、損害を補償するよう正式に要請したようだ。
ところが、協会未加盟の業者については、中川昭一農相が、「当面は輸入手続きがないので返品するなり、焼却するなり(業界で)判断してもらいたい。中小事業者が経営に困れば金融措置を考える。」と述べたに過ぎない。
いざとなれば公的支援を受けられる大企業はともかく、中小事業者の場合は、米国産牛肉を抱えて倒産するなら、密かに混ぜて売ってしまえ、となるだろう。
またそれをわかって買う業者もいるだろう。

ここまで言えばわかるだろう。
「激安」を売りにしている焼肉屋は非常にリスキーだ、ということが・・・
これは何も焼肉屋に限らずすべてがそうだ。
耐震強度偽装事件や激安旅行代理店の事件から我々は学ばなければならない。
リーズナブル(格安)はOKだが、市場価格から乖離した「激安」には何かあるのだ。


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