今年になって3度目の大きな調整が世界市場を揺さぶっている。
2月と8月の調整は、すぐさま反転したばかりでなく、噴き上げ相場となって投資家の懐を豊かにした。
今度の調整相場はどうだろうか。
果たして「2度あることは3度あるのか(2月や8月のように一時的な調整で反騰するか)」、あるいは今度こそ「3度目の正直(米国株の暴落がリセッション入りのプロローグ)」なのか。
今年の相場の流れからすれば、まだ調整入りして1週間、どっちになるか私も確信が持てない。
事実、過去2回の流れを考え、HSBC香港では「売り損ねたコールワラント」を未だに抱えているくらいなのだ。
これが8月の上旬(7月28日「狼はやってきたか?」)や10月中旬(10月18日「ブラックマンデーから20年」)なら即座にドテンしてベアファンドやプットワラントを買いあさっていたところだ。
ただ、今度は実体(第3四半期の予想外の減益)が伴った株価下落だけに予断を許さない。
しかも9月なら噴き上げ相場の一因となったポジティブなニュースへの反応も鈍かった。
せりあがる不快感を持ちながら香港市場の行方に関しては1週間悩み続けた。
悩んだ原因は、言わずと知れた二度の爆上げ相場だ。
普通だったらあり得ない考えを中国市場の特異さ(政府の買い支えの期待)に求めたのかもしれない。
それがまた通用するのか、あるいは単なる陥穽だったのかは今月中に答えがでるだろう。
唯一、後悔しているとすれば、先月18日に書いた自分の勘を全面的に信じられなかったことだ。
原資産の株価上昇の勢いにコールワラントの伸びが追いついていない、時間価値(ワラントは満期日が近づくと価値が失われる)が急減する時期でないにもかかわらず、これは異常である、というシグナルだ。
つまり天井が近いということを示唆していたのだ。
逆に正解だったのはiShares COMEX Gold Trust (IAU)への投資だ。(9月7日「金投資も悪くない?」)
これほど今回の暴落相場に対して頑健だとは思わなかった。
ロングポジションで11月第一週をプラスで乗り切ったのは秀逸というしかない。
いずれにせよ、今回の下落相場が「2度あることは3度あるのか(一時的な調整)」となるかは、今までと同じようにポジティブなニュースへの反応がどれだけ続くかによるだろう。
もし、それがかき消されるような事態が続けば、それこそ"we would already
be in an earnings recession.(私たちはすでに景気後退(リセッション)に入っている)"ということになろう。
そのとき、果たして中国政府のマジックは通用するのか、それとも彼らも「米国のせいにして」売り逃げに走るのか。
Fears rise over spectre of "earnings recession" (景気後退の見通しに高まる恐怖) By Francesco Guerrera and Michael MacKenzie in New York (November 7, 2007 Financial Times) |
Wall Street analysts are rapidly losing faith in US companies' ability
to rekindle profit growth before the end of the year, raising the prospect
of the first "earnings recession" - two consecutive quarters
of falling profits - in more than five years. Mounting troubles in the financial sector have led analysts to reduce sharply their forecasts for earnings growth in the final quarter of the year. ウォール街のアナリストたちは、5年かそれより前以来の、四半期のマイナス成長が連続2期以上続く「景気後退(リセッション)入り」の見通しが高まるにつれ、年末を迎える前に米国企業が再び増益となることに対する自信を急速に失いつつある。 金融セクターにおいて難問が増えることが、今年の第4四半期(10月から12月)におけるアナリストたちの増益見通しを激しく下方修正させることになっている。 In the past month, fourth-quarter earnings expectations for companies in the S&P 500 have fallen by nearly half, according to Thomson Financial. Wall Street now expects earnings in the fourth quarter to increase 6.1 per cent over a year earlier, down from 11.9 per cent at the start of October. The downgraded expectations have confounded hopes that, after a disappointing third quarter, companies would exploit a weak dollar and solid global growth to record strong earnings in the last three months of 2007. The downgraded expectations have confounded hopes that, after a disappointing third quarter, companies would exploit a weak dollar and solid global growth to record strong earnings in the last three months of 2007. Analysts warn that prolonged earnings weakness could undermine the confidence of the stock market, whose current resilience has largely been attributed to expectations of strong profits. トムソン・ファイナンシャルによれば、ここ1ヶ月の間、ほぼ半数のアナリストが先月S&P 500種企業の第4四半期の収益見通しを減らしていた。 今やウォール街のアナリストたちは、第4四半期の収益見通しを対前年比(over a year earlier)で10月初めの11.9%から下方修正し、6.1%増と見ている。 下方修正された見通しは、期待はずれの第3四半期(7月から9月)の決算の後で、企業がドル安と、過去3ヶ月間の記録的な収益となった世界的な安定成長を利用するとの期待を揺るがしている。 アナリストたちは長引く収益の下落が、最近は主に好調な収益への期待感から活況となっている株式市場への信頼を次第に失いかねないと警告している。 "If the debt crisis is contained, then investors can accept a lower expected growth rate in earnings as they cast the blame on the financials," said Marc Pado, chief market strategist at Cantor Fitzgerald. "But if it spreads, then the market has a problem." The deterioration in the profit outlook is mainly due to the bigger-than-expected write-downs by large financial groups such as Citigroup (C) and Merrill Lynch (MER) as a result of the turmoil in the credit markets. The energy and consumer discretionary sectors have also experienced a sharp decline in third-quarter earnings. Analysts, however, still expect a rebound in the fourth quarter. In contrast, the financial sector, which comprises 20 per cent of the S&P 500, saw a decline of 16 per cent in year-on-year profits during the third quarter, and now faces a slide of 9 per cent for the last three months of the year. At the start of the fourth quarter, analysts expected a rise of 1 per cent in earnings for financials. 「もし債務危機を封じ込められるなら、その結果、投資家たちが債務危機が金融関係者の責任だとしてより低い収益増加率を容認することがあり得る。しかし、もし債務危機が広がるようなら、そのとき市場は難問を抱えることになる。」とカンター・フィッツジェラルドの主任市場ストラテジスト(戦略家)のマーク・パド氏は言う。 収益見通しの悪化は、主に信用市場の混乱の結果として、例えばシティコープやメリルリンチのような大きな金融機関が予想以上に評価損を抱えていたことによる。 エネルギーと消費セクターも、第3四半期の業績が急速に落ち込んだ。 しかし、アナリストたちは今もなお、第4四半期(10月から12月)は立ち直ることを期待している。 対照的にS&P 500種企業の20%を占める金融セクターは第3四半期の間、対前年比(year-on-year)で16%も落ち込んだ。 そして、今や残り3ヶ月で9%の下落の危機に直面している。 More than a third of the 87 financial companies that have reported third-quarter earnings missed Wall Street expectations, according to Reuters Estimates. The disappointing results have dispelled the notion that banks would absorb all the pain of the credit squeeze during the current quarter and prompted analysts to expect more bad news over the next three months. Lower earnings in the energy sector, fragile consumer confidence ahead of the retail holiday season and profit warnings from industrial groups like Caterpillar (CAT), which last month rattled the market with its prediction that the US is "near to, or even in, recession", contributed to Wall Street's sour mood. ロイターによれば、87の金融機関のうち第3四半期の業績を発表した3分の1以上の企業がウォール街のアナリストたちの予想に及ばなかった。 この期待はずれの結果は、銀行が今四半期(第4四半期)の間にすべての信用収縮(credit squeeze)の痛みを和らげるだろうという考えを一掃し、次の3ヶ月以内でもっと悪いニュースを覚悟することをアナリストたちに促した。 下方修正されたエネルギーセクターの業績、年末商戦(retail holiday season)を前にしたもろい消費者マインド、キャタピラー社のような製造業の収益懸念、これらは先月、「景気後退に近づいているか、それに等しいか」というウォール街のいやなムードの一因となった予測と一体となって市場を混乱させた。 Third-quarter blended earnings, which include actual and estimated results for the S&P 500, are down 2.7 per cent year-on-year, Thomson said. A fall in profits in the fourth quarter would represent the first earnings recession since the period between the fourth quarter of 2001 and the first quarter of 2002. "Caterpillar was the tipping point," said Joseph Quinlan, chief investment strategist at Bank of America. "Weaker-than-expected US profits are dragging down earnings. Without the strength in the global economy we would already be in an earnings recession." トムソン・ファイナンシャルは、S&P 500種企業の実績と将来見通しを含んだ第3四半期の業績は前年比2.7%下落するとしている。 第4四半期の減益は、2001年の第4四半期と2002年の第1四半期が連続マイナス成長となって以来の「景気後退(リセッション)」という意味を持つ。 バンク・オブ・アメリカの主任市場ストラテジスト(戦略家)のジョセフ・クインラン氏は言う。「キャタピラー社の(懸念)は先行きを意味していた。予想外に弱い米国企業の収益は、業績の足を引っ張っている。世界経済の強さがなければ、米国はすでに景気後退(リセッション)に入っている。」 |