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だからダメなんだ−みずほ銀行「退職金1億円」の殿様リストラ

みずほフィナンシャルグループのホームページ(株価検索:8411


「基本給40カ月分とか、5000万円を退破金に上乗せするというのは、尋常じゃない。外資の銀行で、巨額のカネを秘密裏に払っているところがあるというのは聞いたことがあるが、みずほのようにこれだけ公然と多額のカネを上乗せするというのは初耳です。まさに呆れた話というしかない。」(経済評論家・津田栄氏)


みずほグループが”希望退職者”の募集をかけている。
2003年の1月10日以降に、会社側から選別された該当者に連絡がチラホラと入っているというのだ。
45〜55歳の管理職が対象で、募集枠は500人だという。
支店の統廃合でダブツいた支店長代理以上の役職の整理が狙いというが、驚くのは退職金に上乗せされる割増分。とんでもない額が加算されるというのである。
「加算分は通常は基本給の40ヵ月分ですが、支店長や次長の中には、会社から米国に留学した者や、MBA(経営学修士)を取得している者も少なくないんです。エリートの彼らをリストラして退職させるためには、それなりの処遇が必要ということで、さらにいろいろな手当も付けるらしい。当行の退職金制度には『特別退職金』の規定がある。在職中に特別な功労があるなどの場合、別途に支給してもいいことになっているんです。ほかに、『ニューキャリア支援制度』に基づく再就職支援金名目の割り増しもある。だから、極端なケースでは基本給の60ヶ月分の割り増しもあると聞いています。」(みずほ銀行中堅幹部行員)

今回、対象になっている管理職は、みずほ銀行ではマネジメント職階(課長級)とシニアマネジメント職階(部長級)。
みずほ統合後に作成された「新人事制度」に照らし合わせると、両者の月額基本給(職能給と成果加算給を合算したもの)は、78万5000円から83万5000円となる。仮に中間の80万円としても、その40カ月分なら3200万円、60ヶ月なら4800万円の上乗せとなる。これが、通常の退職金に加算されるというのだから、貸金カットが横行するデフレ社会で、驚くべき水準と言えよう。
「まだ水面下で算定されているケースが多いが、基本の上乗せ分の他に、さまざまな名目の上乗せ分を推計していくと、総額5000万円以上はザラでしょう。1億円近い退職金を手にする者も少なくないのではと見られています。」(全国紙金融庁担当デスク)


■突出したみずほの貸し剥がし

総額1億円!これではリストラされる悲哀を味わうどころか、優雅な殿様気分を味わっているといわれても仕方ないだろう。
いつ潰れるかわからない苛酷な状況のなかで働いているサラリーマン諸兄にとっては、まさに別世界の話というしかない。当のみずほ行員たちは、どう受けとめているのだろう。
「住宅ローンの残債が約2500万円あるし、大学進学前の子供も二人います。残債を清算し、教育資金の500万円を除いた上で、自分たちの老後のために最低でも1500万円は手元に残したい。それが叶うかどうかで応募を考えます。」(本店管理職)
「人事部が緘口令を敷いているから正確な数字はわからないが、少なくても基本給の30〜40カ月は上積みがあると聞いています。そのとおりなら、私としては、退職金は5000万円以上は確保できる。家のローンを完済してもまだ2500万円は手元に残るから、それを元手に自営業での再出発も考えているところです。同様の同輩が何人かいます。」(別の本店管理職)

これほど巨額の上乗せをしてまで、みずほが早期退職者を募集する理由とは何なのか。
経済ジャーナリストの須田慎一郎氏はこう解説する。
「みずほ銀行、みずほコーポレート銀行とも、他行と比べると経費率、つまり人件費が非常に高いんです。みずほ銀行で30ポイント、コーポレート銀行でも10ポイントは高い。市場からも、『経費率を他行並みに下げなければ、みずほの信用回復はならない。』と以前から指摘されており、そのためにはリストラで人員を減らすしかない。割増退職金によるリストラの推進は、いってみれば『人的資源における不良債権処理。』これで経費率が他行並みに下がるなら、上乗せ分など微々たるものという計算があるんです。」

それにしても、上乗せ分だけで3000万〜5000万円というのは、どう考えても常識を超えている。
そのいっぽうで、中小企業に対しては、身内に対する”温情”は感じられない。
金融庁が発表した今年度上半期の中小企業向け貸し出し状況は、都銀・地銀あわせて約9兆8000億円のマイナス。
数字に明らかなように、すさまじい”貸し剥がし”が横行している。みずほグループ2行分の貸し剥がし額は、都銀・地銀合わせた全貸し剥がし額の半分を優に超える5兆569億円にも上るのだ。
2位の三井住友が1兆9408億円、3位のUFJが2行で8326億円だから、みずほがいかに突出しているかがわかる。
「現場の支店長クラスは頭を抱えていますよ。本店からの命令は、依然として『中小企業などへの貸し出しは絞れ、減らせ。ただし優良企業には借金は返させないで融資を依頼しろ。』なんですから。しかも、優良企業への貸し出しについては、金利を上げるよう言ってくる。このデフレ時代、金利を上げられてまでカネを借りようとリスクむ冒す優良企業はありません。本店の指示は不合理極まりない。」(別のみずほ銀行中堅幹部行員)


■西武百貨店問題もあるのに

経営状況も厳しい。今年3月期決算の赤字額は、当初予想の2200億円が9倍にも膨れあが、1兆9500億に下方修正された。約2兆円という赤字額は、日本企業は過去最大である。
一般企業なら債務超過で倒産必至の状況だ。その上、依然として深刻な不良債権問題も抱えている。そのひとつが西武百貨店だ。
「西武百貨店はメインバンクのみずほコーポレート銀行を中心に2300億円の金融支援(債権放棄)を要請することになった。そのうえで、そごうとの統合を計画しているが、みずほには西武とそごうの統合に金融支援する余裕はまったくない。債権放棄どころ、大規模な増資を計画しなければ、経営健全化の目安である自己資本比率8%が達成できないほどの危機的状況に陥っています。」(前出・金融庁担当デスク)

実際「みずほは1兆円の増資を発表している。そうでもしないと、この危機的状況を乗り切れないからだろう。そんな中での、今回の”殿様リストラ”。いったい、どこに5000万円から1億円もの退職金を出す余裕があるというのか。募集対象外の30代後半の同行管理職も、こう首をかしげる。
「約2兆円もの赤字になるというとき、そんなにたくさんの退職金を出せるのかと世間では感じる人がいるでしょうね。正直、私もうらやましいと思います。」

背景には、金融庁への挑発があると指摘するのは、前出の津田栄氏だ。
「退職金の大幅上乗せは、金融庁が本気で銀行経営の査定をするのなら、われわれとしてもこういう強引な方法で人員削減をやっていきますよという意思表示でしょう。つまり金融庁に対する宣戦布告です。貸し剥がし問題も同じ。金融庁が強引に不負債権処理をやれと言うのなら、われわれは貸し剥がしだろうが何だろうが、どんな手段を使ってでも資本の確保をしていきますという、捨て身のメッセージなんです。」
当のみずほに、今回の早期退職者募集について質したところ、以下のような答えが返ってきた。
「詳細につきましては公表しておりませんが、希望退職者の募集は2003年1〜3月の期間に実施しています。対象者にはすでに郵送で内容を通知しました。現段階では、応募した最終人数は確定しておりません。割増退職金の金額などにつきましては回答を控えさせていただきます。また、来年以降、追加で希望退職者を募集する考えはごぎいません。」(みずほホールディングス広報部)
はたしてこれは”リストラ”なのか。

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