【2014年11月16日掲載/2024年11月16日最終更新】
人生100年時代、麻生大臣が現実逃避した老後2000万円報告書の現実(2019年6月13日) |
2019年6月3日に公表された金融審議会の市場ワーキング・グループの報告書「高齢社会における資産形成・管理」が、国会を揺るがすような世間の大きな動揺を誘っている。(2019年6月3日 日経新聞-人生100年時代、2000万円が不足 金融庁が報告書) 正直言って、公的年金だけでは老後の豊かな生活は覚束ないことは、20年ほど前から散々言われてきたことだし、経済誌やマネー雑誌の特集も、それに焦点を当て続けていると言っても過言ではない。 私も内容を読んでみたが、楽天証券経済研究所客員研究員を務めている山崎元氏が、6月12日付のダイヤモンドオンラインの記事「炎上する『老後2000万円』報告書問題、最悪なのは麻生大臣だ」の中で、「『老後報告書』の炎上は不思議でならない」と言っているほど、まともなことが書かれている。 この日のコラムについては、表題のリンクを辿ってお読みいただくとして、金融庁が公表した資料は、念のためにダウンロードされた方がいいと思う。
特集は「50代 まだ間に合う 老後の資産形成 海外投資がカギ」というものだからだ。 |
大安吉日となった先月20日、私は早期勧奨退職に応募することを決め、2015年(平成27年)3月31日で退職する旨を上司に伝えた。
厳密には退職後のファイナンシャルプラン(参考:2014年3月30日-早期リタイア後の生活を考える(3))の都合で、自由人となる完全リタイアはもう少し先になる予定だが、今の職場については一応の区切りとなる。
そして、弊サイトを開設した当初からの50代前半でのリタイアという目標は達成間近に迫ったと言えるだろう。
残りの人生を働くことなくエンジョイできる可能性を持てたことに感謝したい。
とりあえずは、これまで公私ともにお世話になった皆様にはお礼を申し上げたい。
1990年代に私の海外渡航に付き合ってくれたタキやノリを始め、私の休暇取得にご理解をいただいた(!?)職場の皆様、そして、HSBC香港の紹介状(2003年12月当時の口座開設必要書類)を書いてくださったKayさん、投資で生活している人がいることを初めて実感させてくれたそれゆけ個人旅同好会のg-san、彼との出会いを演出してくれたのを始め、数々のオフ会の幹事をしていただいている俊哉さん、さらには、ワールドインベスターズTVの石田さんや、自由人への道筋を付けてくださった風じさんや小長井さん(参考:2014年7月29日-船井幸雄.com:突出したことをしないでセミ・リタイアした男性/著書:おこづかいで貯金ができる むだづかい撲滅計画 ~ガマンも、節約も、もうイラナイ!!~: これを知ったら1円の無駄遣いもしなくなる!! 「お金の自分軸」の作り方)、投資以外でもいろいろなアドバイスをいただいたPharmさん、高円寺オフ会の幹事をやっていただいている風太さん御夫妻、その他、オフ会などで交流を重ねてくれた個人投資家の方々には重ねて感謝の意を伝えたい。
投資を初めて約17年、ここに至るまでの道は決して楽なものではなかったが、決定的な転機となったのは、2012年5月の香港・マカオ旅行の際に立ち寄ったHSBC香港オーシャンセンター支店(匯豊海洋中心分行/HSBC Ocean Centre Branch)のジョン万次郎ことジョン・ラウ(John
Lau)さんとの出会いだ。
このとき私は、宿泊先のランガムホテル(The Langham Hong Kong)の一室で、「今の私は仕事のことなど頭の片隅にもない。また、今後は50代前半で早期退職するという自分自身の進路について悩むことはないだろう。今回の旅行は、自分の進路が決して間違ったものではない、ということを強烈に暗示しているからだ。」と心の中で念じていた。
そのときのことを「Toward a dream-come-true『経済的自由への扉は開かれた』」として思いを残した私は、それから2年間、目標に向けて突っ走り続けた。
そして、今日という日を迎えたわけだが、悩まないと言いつつも、早期退職に関して迷いがなかったわけではない。
今後、給与所得者(サラリーマン)という身分を捨て、投資による収益(income gain=配当金・分配金)を主たる収入源とすることは、これまで以上に世界市場の動向に生活が左右されることを意味するからだ。
■自由時間の達人であり続けるために
私が早期退職をしようとする理由は大きく分けて2つある。
最大の理由は、自分の体力と気力があるうちに自由時間を楽しみたいということだ。
「今の職場を離れるなんてもったいない。今でも十分に自由を謳歌しているではないか。」
私のことを良く知る友人たちは口を揃えてこう言うだろう。
しかし、私の求める自由は、お金のために働く必要がないことであり、籠の中の自由ではないのだ。
私が2013年4月7日に書いた「自由時間の達人(自遊人)になれば熟年離婚は防げるか」の中で紹介した「働かないって、ワクワクしない?(アーニー・J・ゼリンスキー/Ernie J Zelinski著、三橋由希子訳)」という本は、働かないで楽に暮らそうということではなく、自由時間をいかに充実させるか、という趣旨で書かれているが、私の人生の後半は自由時間の達人であり続けたいと思っている。
仮に何らかの仕事をするにしても、自分の好きなことだけをする。
そのために、数年前に断念した社会保険労務士の資格に再チャレンジするということもあるだろう。(2010年11月15日-2010年の社労士試験は玉砕!)
もちろん、昭和の世の中であれば、行政書士と社会保険労務士という組み合わせは、街でよく見かけた士業の形態だが、今や双方ともに食えない資格となっていることは重々承知の上だ。(2014年3月24日-東洋経済:広がる"資格貧乏"!税理士、社労士の悲哀)
そして、これまた食えない資格かもしれないが、現在2級の資格しかないファイナンシャル・プランナー(FP)も1級の資格も取れば、何かお手伝い程度のことはできるかもしれない。(2006年10月23日-祝!FP2級合格)
いずれにせよ、これらの資格を取ることによって生活の糧を得ようというわけではないので、半ば気楽な身分でいられるということだ。
また、日本の労働環境は、今や幻想と言うべき安定(終身雇用)を得るために、休暇も満足に取らずに40年以上の奴隷的拘束に耐えるか、自由を得るために経済的利益を半永久的に捨てるかの二者択一でしかない。
中年の域に差しかかったサラリーマンが、心身ともに疲れ果てた様相で職場にいるのを見て、生きている幸せを全く感じられないのは私だけではないだろう。
このことは、官公庁や大企業の多くが未だに新卒至上主義を取っていて、雇用の流動性がほとんどないことと無縁ではあるまい。
一旦、正社員として入った会社を辞めるには人生を失うくらいのリスクを伴い、レールを外れた人に対する日本社会の仕打ちは冷酷という一点に尽きる。
さらに、公的年金の受給開始年齢の引き上げ開始と、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)の改正が相俟って、日本の職場全体に60代の社員が増え続ける傾向が顕著になっており、○○の生き字引とか、いぶし銀の○○とか言われる人と一緒ならともかく、士気が衰えて前向きな考え方のできない高齢社員が溢れるところで、ストレスを溜めながら仕事をするのは嫌だからだ。
結局のところ、日本社会全体にこういう雰囲気が蔓延するのも「御社一筋の人生(終身雇用)」を是とする組織体質がもたらした弊害とも言えるが、作家の平野啓一郎氏は、「会社員や公務員の兼業規制を緩和し、出来るだけ、個人の収入源を複数化すべきだ。それによって、辞職やリストラが収入ゼロに直結するというリスクを回避することが出来、組織への隷属を免れられる。」(2014年4月7日-西日本新聞 ローンと事なかれ主義)と述べている。
私も平野氏と同じようなことを書いたことがあるが、いずれにせよ、サラリーマンの副業が当然ということが社会一般の趨勢になるまで相当の年数を必要とするだろう。(2012年9月2日-中高年公務員の処遇を議論するより副業規制を緩和せよ)
私の趣味の一つは国内外の旅行であり、1週間や10日間程度の旅行なら在職していても可能だが、じっくりと旅行するなら1ヶ月単位で回りたいというのが私の本音だ。
特に中南米やアフリカなどは、60歳の定年や、65歳の公的年金受給開始年齢まで待っていては、添乗員付きのパッケージツアーで行くことさえ不可能になるかもしれないからだ。
また、フィリピン(Philippine)やマルタ(Malta)で英語の勉強をするとか、グアテマラ(Guatemala)のアンティグア(Antigua)でスペイン語の勉強をするとか、そういったこともやってみたいと思っている。
さらに、HISの格安ツアーや、大人の休日倶楽部の会員限定旅行は平日発のものが多く、そういったものに何時でも参加できる自由を持つのは何物にも代えがたいからだ。
海外旅行で必要な入国査証(ビザ)、日本人は現在多くの国で事前取得が免除(visa exemption)されているし、一部の国ではロングステイ、あるいはリタイアメントビザの取得も歓迎されている。
それに、円をそのまま持ち出して外国通貨に両替できるというメリットを享受している。
これらは日本の先人が苦労して築き上げてきた経済力と信用の賜物だ。
欧米先進国を除けば、多くの国はこれほど恵まれた地位にはない。
日本が諸外国で経済大国として敬意を払ってもらえる中で海外ロングステイや、外国旅行ができる幸せを感じたいというのは私の偽らざるところだ。(参考:2013年9月2日-早期リタイア後の生活を考える(1))
一方で、国内にもまだまだ見るべきところはあり、沖縄の離島で1ヶ月滞在するとか、北海道をのんびり旅するとか、いろいろ夢は尽きない。
国内旅行に関しては、今は2泊3日などという慌ただしい旅行をしているが、1週間単位で行ってみれば新しい発見があるかもしれない。(参考:2013年10月12日-早期リタイア後の生活を考える(2))
■政府や組織に頼らない人生の選択
第二の理由は、日本経済の行く末だ。
そもそもこれが私が海外投資を始めた理由の一つなのだから、早期退職の理由にも当然なり得る。
早期退職に伴って受け取れる割増退職金を、円の価値が十分にあるうちに有効に投資したいと思うのは当然のことだ。
仮に2~3年であっても退職を先延ばしにした場合、アベノミクス(第二次安倍内閣の経済政策)の劇薬が効きすぎて、円安がさらに加速すれば、外貨による資産運用で生計を立てようとしようとしている私にとっては生活設計に多大な影響が及ぶ。
それに、私が60歳になる10年後、そして65歳になる15年後の日本を思ったとき、とてもではないが明るい未来を予測することは難しい。
これは私が「未来へのシナリオ」という題のエッセイを10年前(2004年2月29日)に書いたとき、ピーター・タスカ(Peter Tasker)の描くデジタル元禄の主人公、田中春子になろうと決めたときから予想していたことだった。
仮に「2050年の世界-英『エコノミスト』誌は予測する」で書かれているような日本の未来予測が当たるような情勢になったとき、数十年後には日本人のほとんどが貧困の淵に追い詰められるだろう。
事実、学習院大学経済学部教授の鈴木亘氏の書いた2012年3月29日付のブログ「年金積立金は、本当はいくら残っているのか?」で、厚生労働省の第1回社会保障審議会年金部会へ提出された資料「基礎年金国庫負担について-P14『年金積立金及び取り崩し額の推移』」を元に、現在の40代の人たちが年金受給資格を得られる2030年代には公的年金の積立金の枯渇が避けられないと書かれているのを読んだとき、私は自分の進路が間違っていないことを確信した。
私が2006年1月9日に書いた「少子化も人口減も止まらない理由」、これが果たして正しかったかどうかは歴史が教えてくれるだろう。
ところで、私の手元に藤巻健史参議院議員の著書「迫り来る日本経済の崩壊」があるが、これを読んでいると、黒田東彦日銀総裁が実施した異次元の金融緩和という名の財政破綻回避策の命運が尽き、東京オリンピックという宴が終わりを告げる2020年を超えて円資産をあまり持ちたくないという思いに駆られるのも事実だ。
この中で彼が特筆しているのが、2014年(平成26年)3月31日の参議院決算委員会における黒田東彦日銀総裁の答弁で、「出口戦略についてお尋ねがございましたが、従来から申し上げていますように、今の時点で出口戦略を議論するのは時期尚早であろうと。まさに、量的・質的金融緩和の政策の成功によって二%の物価安定目標が達成され、それが持続するという状況になります際には当然出口のことを具体的に議論しなければなりませんが、現時点で具体的に議論するのはやはり時期尚早で、やはりそのときそのときの経済金融情勢に対応して変わり得るわけでございますので、早い段階から具体的なイメージでお話しするということは、かえって市場との対話という観点からも混乱を招くおそれがあるということで、適当でないだろうというふうに考えております。」とある部分だ。(2014年3月31日-ロイター:異次元緩和、持続的な成長実現とデフレ脱却に貢献=黒田日銀総裁)
この「時期尚早」という答弁について藤巻健史氏は、日銀が出口戦略がないので答えようがないのだろう、と書いている。
ちなみに、2014年(平成26年)10月17日の衆議院財務金融委員会の古川元久衆議院議員の質問に対する黒田東彦日銀総裁の答弁も「具体的に今、出口戦略を説明する段階に至っていないというのが実情でございます。」となっているが、果たして、日銀が異次元緩和の出口戦略を検討する前に、ハイパーインフレの嵐が日本を襲うことはないのだろうか。(2014年10月17日-ロイター:出口言及、市場に混乱招き時期尚早=黒田日銀総裁)
また、今年の消費税率の変更(5%から8%)に伴って関係省庁が全国で行った社会保障と税の一体改革説明会の実施報告の中に「説明会での主なご意見と回答」というのがあるので、時間が許す限り、読んでみるといいだろう。
例えば、2014年(平成26年)2月27日の大阪での説明会など大変興味深いことが書かれている。
「国債の大部分は国内で消化されており、財政状況が悪い中でも金利が安定している一つの要因となっています。しかしながら、国債発行額の増加に伴い、国内で消化できる限度に近づいているとの見方もあり、そういった中で国債の信任を確保していくためにも財政健全化に取り組んでいくことが重要です。(財務省)」
「平成16年(2004年)の年金制度改正により、現役世代の減少や平均寿命の伸びに応じて年金の給付額の伸びを自動的に調整していく仕組みが設けられています。現段階では、経済情勢など諸々の事情があって、これまで調整機能は実行されていないものの、長期的には年金給付費全体としては安定的に推移する見込みとなっています。その一方で、個々人にとっては、調整の結果、現役世代との比較でみると、少しずつ給付水準が下がることになります。いずれにせよ、5年に1回行われる年金の財政検証の結果でその推移を注視していく必要があります。(厚生労働省)」
これらの回答は「官愚の国 日本を不幸にする「霞が関」の正体」を書いた高橋洋一氏に言わせれば、霞が関官僚による巧妙な作文の一つであるが、 国債の暴落(ハイパーインフレ)を防ぐための増税は今回の消費税増税(5%-8%-10%)で終わりではない、そして公的年金の給付額は今後下がり続ける、と読めるわけである。
それに、「国債発行額の増加に伴い、国内で消化できる限度に近づいている」というのは、メガバンクの行動を見ていれば事実を言っていることだろう。(2014年5月16日-東洋経済:露呈したメガバンクと日銀の微妙な距離感)
その中で日銀だけが大量に国債を買い続けているわけであり、2014年(平成26年)10月17日の財務金融委員会における古川元久氏の質問もそういった懸念を踏まえたものになっている。
今年の消費者物価の上昇について、甘利明経済財政・再生相は「物価が上がるのは、日本経済が健康な状態を取り戻しつつあるということ」と自画自賛しているが、国民生活の実態はスタグフレーション(stagflation=不況下のインフレ)の元にあると言ってもいいくらいだ。(2014年8月14日-ブルームバーグ:アベノミクスに忍び寄るスタグフレーション)(2014年10月25日-日経新聞:消費者物価、4カ月連続上昇 実質賃金は下落鮮明)
今後の経済の安定は日銀の国債買い余力次第であり、日銀がコケれば、ハイパーインフレが来ることもあり得る。
そうなれば日本の国家財政はV字回復する可能性が生まれるが、円資産しか持たない多くの国民は地獄を見ることになる。
去る10月31日、日銀が「長期国債買い入れ年間80兆円、ETFを年間約3兆円、J-REITを年間約900億円、それぞれ保有残高が増加するペースで行う。」ことを決定した。(2014年10月31日-ロイター:日銀が追加緩和を決定 長期国債買い入れ年間80兆円に拡大)
いわゆる「黒田バズーカ2」と呼ばれる追加金融緩和を実行したのだが、これによって、日銀は出口戦略(参考:2014年10月30日-ロイター:米FOMCが量的緩和終了 労働市場の判断前進、景気回復に自信)どころか、実質的なマネタイゼーション(monetization=政府が発行する国債を、中央銀行が通貨を発行することで直接引き受けることで、ハイパーインフレの引き金となることが多い。)政策へ舵を切ったと言えよう。
将来的に日本がコケた場合の世界経済に与える影響は、かつてのロシアやアルゼンチン、ギリシャやキプロスなどの比ではないが、私はそのような事態にならないことを祈りつつ、可能な限りのリスク回避をしていきたいと思う。
弊サイトをご愛顧いただいている皆様はご存じのように私はサラリーマンとしては相当に自由奔放に生きてきた。
そのような私でさえ、60歳の定年まで働くべきかどうかを自問自答するために、昇進試験を受けてみたり、職場内で改善提案をしてみたりもした。
しかし、どれも結果は芳しいものではなかった。
日本経済の急速な悪化と、定年までの期間にわたってサラリーマンとして活躍の場を見出すことの困難さは、私に早期退職を促す契機となった。
私に言わせれば退職金も公的年金の受給権も法律上、規約上の債権に過ぎない。
日本経済の悪化によって、年数が経過すればするほど、ヘアカット(債務超過に陥った国などに対する貸付金元本の削減の意、ここでは受給額の強制カットの意)の受け入れを求められることは想像に難くない。
そうなる前に私は政府や組織に頼らない人生を選択することにした。
今後の人生においてどんな苦難が待ち受けているかわからないが、私は今回の選択を後悔することはないだろう。