【2012年6月3日掲載/2014年11月16日最終更新】
去る5月28日、私はアップグレードされたランガムホテル(The Langham Hong Kong)のプレミアスイートの一室で、琥珀色の液体で満たされたグラスを片手に、今回の旅行を振り返っていた。 そこで、彼から勧められたAllianceBernstein - American Income Portfolio(fund code: U62407 毎月分配型、豪ドル建の年利回り約8%)は、自分の退職後の理想形とも思えるファンドであったため、即時に購入を決めた。(2012年9月10日−HSBC香港の毎月分配型ファンド買い増し) 今の私は仕事のことなど頭の片隅にもない。 |
10年以上前、私が木村昭二氏の「税金を払わない終身旅行者」という本に出会ったとき、終身旅行者(PT: Perpetual Traveler)になることは、単なる憧れであり、夢に過ぎなかった。
終身旅行者(PT: Perpetual Traveler)という概念を提唱したW.G.ヒル(W.G. Hill's)博士曰く、彼らは国籍を持つ国(Passport
and Citizenship)、居住国(Legal Residence)、ビジネスを行う国(Business Base)、資産運用を行う国(Asset
Haven)、そして、余暇を過ごす国(Playgrounds)の5つを目的に応じて使い分け、合法的な節税を行っているという。
そこまでいかないまでも、体力のある50代前半でサラリーマン生活におさらばをし、世界中を旅して歩きたいというのは私の夢であった。
もちろん、そうなるためには経済的自由(働かなくても暮らしていける状態)になる必要があり、その一つの方法が海外投資であった。
ところが、50歳でリタイアするとして、公的年金が受給できる65歳までに毎月30万円の生活費が必要と仮定すると、原資を年利4%(外貨建債券など)で運用できたとしても、最低約4,300万円の資金をリタイアまでに準備しないといけなくなるのに加え、これは65歳までに原資がゼロになる試算となるため、年金支給開始年齢の引き上げが政策課題となっている今の日本の社会情勢からして大きなリスクがあることは火を見るよりも明らかである。<資金係数表(Excel)の年金現価係数 (The present value factor for annuity)による試算>
当然ながら、これでは老後の不安が若干解消されるだけであって、少なくとも定年を迎える60歳まで働かなければならない、という現実から逃れることはできそうもなかった。
今年の3月16日、私は名古屋で親しい友人たちと飲んでいた。
その中の1人が言った。
「FXのスワップ金利だけで生活することは条件次第では可能だよ」と・・・
私は彼の話を聞いているうちに高揚感が増してきた。
そして、自分なりに整理したものが、3月25日付の「スワップ狙いのFX投資で早期リタイアは実現するか」というコラムだ。
それでもFXのスワップを生活資金の柱にするにはリスクが高すぎるため、私は別の資金源も模索していたが、今回HSBC香港で買った豪ドル建ファンドの予定利回りが、レバレッジ2倍の豪ドル/円のロングの予想スワップ金利とほぼ同じのため、FX投資は退職後の生活資金の候補から外すことにした。
もっとも、私のやってきたシミュレーションは、レバレッジ10倍の豪ドル/円のロング、カナダドル/円のショートの組み合わせで、為替相場の激変リスクにヘッジをかけ、スワップの差額を抜くというものだが、今後は、これについても熱心に取り組むつもりはない。(2012年6月9日−スワップ狙いのFXデモトレードの成果)
しかし、私が口座を持っているトレーディング・ポイントなど、日本語対応可能な海外FX会社で、現在、最強通貨と言われるスイスフラン(CHF)を口座通貨(Account Currency)とし、高レバレッジをかけておくことは、リーマンショック級の世界恐慌(例えば日本国債の暴落局面)に襲われたときのリスクヘッジとして極めて有効である。
もちろん、平時は送金ルートだけ確保しておいて、トレードは練習用としてデモ口座に留めておき、万が一のときに、トレンドが明確になったポジションで一気に勝負に出るのである。
もし、平時でもスワップが欲しいなら、レバレッジを1倍に落としてポジションを持てばいい。
これなら外貨MMF感覚で持っていられるし、ショートポジションがスワップを生むならそのようにもできる。
豪ドル/円のロングや、米ドル/メキシコペソのショートのスワップが、スイスフランで入金される。
こんなことは海外FX会社でなければできない芸当だ。
ただ、これらキプロスにあるFX会社を使うことには大きなリスクがあり、それが顕在化したのが2013年3月16日に発表されたEUによる金融支援策で、ここでは銀行預金者に負担(預金課税)を求めるという一連のユーロ圏加盟国支援策としては前例のない措置を決定されたため、支援策が発表された当日、キプロス国内ではATM内の現金は数時間で枯渇し、電子送金は停止されたという。
香港マイタン日記や海外FXお役立ちガイドによれば、幸いなことに今回のキプロスショックによるトレーディング・ポイント(Trading Point)のFX口座への影響はなく、今まで通り資金の出し入れもできるとのことだ。(香港マイタン日記−キプロス 預金封鎖 FX会社は大丈夫?? 海外FXお役立ちガイド−キプロス支援における海外FX会社の影響について)
ただ、私としてはキプロスの会社に資金を預けてFXをやるくらいならHSBC香港のMargin FX口座の方を使うだろう。
基本的なトレード用語(英語)は、トレーディング・ポイント(Trading Point)のデモ口座でも習得できるし、レバレッジの倍率も100倍とか200倍にしてトレードする可能性はほとんどないからだ。
何しろFXのトレードをするだけでも神経を使うのに、預け入れた証拠金が安全かどうかまで神経を使いたくないからだ。(2013年3月18日−キプロスショックでトレーディング・ポイントのFX口座は大丈夫か)
それにしても、今回のキプロスの預金封鎖について日本のメディアはどの程度言及したのだろうか。(Market Hack−日本のマスコミは何故キプロスの預金封鎖をちゃんと報道しなかったか)
そして、次に私が考えたのがダイワ米国リート・ファンド(毎月分配型)への投資だ。
これについては4月22日付の「500万円の投資で毎月10万円、年率20%の分配金で束の間の宴を楽しもう」というコラムで書いたが、正直言って、これが退職後の生活資金の柱にできるならこれほど楽なことはない。
それができないのは、橘玲氏が「毎月分配型投信の不都合な真実」で書いているように、毎月の分配金が歪な形で出ていることで、このような状態が長続きすることはなく、それゆえ、束の間の宴を楽しもうという表題になったのだ。
しかし、今のところ、年率20%近い分配金は魅力的であることに変わりはなく、基準価額が下落した場合でも、それがリスクの許容範囲に収まっている限り、保有を続ける価値があるとして、私は投資に踏み切った。
もし、ほかにも高分配ファンドを探してみたいと思うならば、「利回り18% この高分配ファンドでラクラク生活ができる」という本を読むといいだろう。
この類のファンドへの投資は、懐疑的な意見も多いだろうが、私はあえて言おう。
日本の公的年金もすでに日本の毎月分配型投信と同じ運命にある。
学習院大学経済学部教授の鈴木亘氏は、2012年3月30日付のブログ「年金積立金は、本当はいくら残っているのか?」で、厚生労働省の第1回社会保障審議会年金部会へ提出された資料「基礎年金国庫負担について−P14『年金積立金及び取り崩し額の推移』」を元に、現在の40代の人たちが年金受給資格を得られる2030年代には公的年金の積立金の枯渇が避けられないと論じている。
日本の毎月分配型投信の分配金のほとんどはタコ配だが、日本の公的年金も大した違いはないとわかるだろう。
「同じタコなら食べられるうちに食べる」ということだ。
日本の公的年金は65歳まで待たないと貰えないが、毎月分配型投信の分配金を貰うのは今すぐにでもできるからだ。
4月27日付で書いた「毎月高配当の米国株(High Yield Monthly Dividend Stocks)」、これは退職後の生活資金の両輪の一つである。
実のところ、HSBC香港で米国株口座を開いて、これらの銘柄に投資しようと考えていたところに、ジョン・ラウ氏(John Lau)氏から提案があったのが、AllianceBernstein - American Income Portfolio(毎月分配型、豪ドル建の年利回り約8%)というわけだ。
私が追加入金しようと持参したのが豪ドル建の送金小切手だったので、余計にそうだったのかもしれないが、米国株の配当金の源泉税の扱いは彼らでもわからないらしく、結局のところ、自分で投資して確認してみないといけないようだ。(参考:投信フォーカス 取り戻せない「海外源泉徴収税」の実態を知る オフショアな海外投資日記−香港証券会社を通して米国株を購入すると、海外居住者であっても香港人扱いになる。)
もっとも、私の場合はTD Ameritradeで投資をすれば済むことなのだが、マネーロンダリングの関係で、米国証券口座で得た配当金をHSBC香港へ送金するのに、本人確認の電話などの煩わしさがあるということを言っていた人もいて、オンラインでスムーズにできるかわからないので、香港で米国株に投資した場合、配当金の源泉税がどうなるか確認したかったのだ。
また、このとき自分なりに高配当株のリストをエクセルファイルにまとめてみたので、投資したいという方は参考にするといいだろう。(日本語の情報はMSN Money 株式から「株価検索」の「銘柄、指数、またはファンド名」に銘柄コード(ticker symbol)、国を米国にして検索すればよい)
なお、高配当の米国株を調べるには、Dividend Stock
Screenerを利用して、Share Price(株価)、Dividend Yield(配当利回り)、Dividend Payout
Frequency(配当の頻度)などに任意の数値を入れることによっても調べることができる。
主に、米国のハイイールド債を中心としたファンドが多いようだが、今後は、7〜8%以上の高配当が期待でき、値動き(リスク)が小さい銘柄を見つけることに尽力しようと思っている。(2012年6月30日−米国高配当株−PIMCO High Income Fund (PHK)を買ってみた)
もっとも、米国株口座の魅力の一つはショート戦略が自在に取れること、リーマンショック級の世界恐慌(例えば日本国債の暴落局面)に襲われたときに備えてETF Database - Inverse Equity ETF List、あるいはList of Inverse ETFs (Short ETFs / Bear ETFs)をブックマークしておこう。