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8月26日(日)-ワールドインベスターズ東京オフ会

ワールドインベスターズ東京オフ会香港資産運用奮闘記の管理人である石田さんがワールドインベスターズ(World Investors)という海外投資に特化したSNSを立ち上げて早3ヶ月経とうとしている。
昨日は、そのSNSのオフ会が歌舞伎町にある新宿アジア横丁「タイ・ベトナム屋台 SEE FA」で行われた。
このオフの発端は元々が私が石田さんとバンコクから帰国したかじさんと東京で飲もうという企画が、かじさんが多忙で参加できないという話から、いつのまにかフランス旅行から帰ってきたオダッチさんの旅話を聞きながら飲もうになり、それがさらにワールドインベスターズのオフになったというものだ。
何でこうなったのかよくわからないが、とにもかくにもこれが第一回のワールドインベスターズオフであった。

参加者は総勢8名(男性が6名、女性が2名)、何のその中には九州からはるばるやってきた猛者もいて、大盛況のままに終わった。
海外投資コミュニティのオフというわりにはぎらぎらした投資話はほとんどなく、それだけが意外(!?)であった。
石田さん曰く、このオフ会の模様が来月11日発売(2007年9月18日号)の週刊SPAに「個人投資家がハマる【楽しい海外投資】(仮)」という特集で掲載されるらしく、扶桑社から取材スタッフが来て私たちと一緒に楽しんでいた。

こうして土曜の夜が更けていったのだが、昨夜は東京での飲み会にもかかわらず赤坂陽光ホテル(「パソコン一体型テレビ付」の部屋だと、インターネット接続無料、私が泊まったプランは楽天トラベルのもので、シングルルームでわずか8,710円)をあらかじめ予約していた私、しっかりと深夜の2時までオフ会を堪能できたのだった。
いつもの旅行サイトのメンバーの場合は、家まで終電に間に合うように帰るというのが暗黙の了解事項になっているのだが、こちらのメンバーは4月のタイ株セミナー後に飲んだときの感触で、ヒートアップするとエンドレスになりそうな感じがしていたのだ。(笑)
この日の石田さんは連日の飲み会でヘトヘトとかで1次会で帰ってしまったのだが、何と女性メンバーの1人が深夜まで付き合ってくれたのは意外だった。
彼女曰く、仕事柄このくらいの時間になることもあったとか・・・
九州からオフに駆けつけてくれたり、深夜までヒートアップしたあげく、ネットカフェに泊まるとかいう人も・・・
旅行系サイトのオフとは一味違う投資系サイトのオフはこの先どんな展開が待っているのだろうか。

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8月24日(金)-もし裁判員に選ばれたら

平成21年5月までにスタートすることが決まっている裁判員制度についての講座があったので出席してみた。
講座では法務省が裁判員制度広報用ビデオとして作った中村雅俊監督・出演(裁判長役)、西村雅彦主演の「裁判員制度-もしもあなたが選ばれたら-」が上映された。

広報用のビデオなので当然のことながら紆余曲折がありながらも結果的にうまくいく、というストーリーだが、西村雅彦氏がドラマで語っている「誠意をもってぶつけた判断なら相手(被害者や被告人)もちゃんと受け止めてくれる」というのはだいぶ甘いものがあるように感じた。
このような性善説は今どき、というか最も利害が先鋭に対立する場所では通用しないだろう。
まして裁判員制度の対象となる事件は、殺人や傷害致死などの重大犯罪なのだ。

それに日本人は人前で自分の意見を表明することに抵抗を感じる人が多い。
ドラマでは裁判官と裁判員が一同に会しての評議(事件の審理)で活発な意見が出て、それが次第に一つの結論に収束していくような形で演じられているが、「国際会議議長の任務として最も難しいことは、インド人に発言させず、日本人に発言させること」というジョークがあるくらい日本の会議は「皆に意見を言わせることが大仕事」なのだ。
結果的には、誰かの意見に引きずられる形でいつの間に結論づけられているというのが実情だろう。
下手すれば司会と1人の提案者以外は全員黙っていることだって考えられるほどだ。

評議の場で少数の反対意見を勇気を持って言える人がどの程度いるのか。
裁判が裁判員の都合(繁忙の度合い、スケジュール)に配慮する形で行なわれた結果、拙速な審理が行なわれがちになって、むしろ当事者の利害が損なわれないのか。
私がかつて疑問視したこと(2005年4月17日2006年10月15日「今日の一言」)はどの程度改善されているのか。
ドラマを見る限り、ますます懸念が深まったような気がする。

唯一、正しいと思ったのは、「いつ何時、自分が加害者となり、被害者となる可能性がある。裁判員というものを人ごととは思わないで欲しい。」と言った主演の中村雅俊氏(裁判長役)の言葉だ。
また、「政治に無関心、投資に無関心、金利に無関心、他人に無関心、他国に無関心、将来に無関心」
これは衰退国家の末期症状だ、と言ったのはWorld Investorsで交流のある1人の個人投資家だ。
中村雅俊氏(裁判長役)はこうも言う。「無関心こそ最大の罪なのです。」


8月19日(日)-さあ、香港で夏祭りを楽しもう

8月15日から17日までのお盆連休後半の世界市場は久々の波乱に見舞われた。
ほとんどのポジションをキャッシュあるいはショート(ベア)にしていた私は8月に臨時ボーナスが出たような気分だが、円高と株安で相当の痛手を被った人も多いようだ。
まさに今回は「本当に狼がやってきてしまった(7月28日「今日の一言」)」というわけだ。

特にハンセン指数(Hang Seng Index: ^HSI)は7月26日に付けた最高値23,557.74香港ドルからわずか20日間で4,000香港ドル以上(8月17日の安値19,386.72香港ドル)も下落し、8月に入ってからは500香港ドル以上の下げが、1日が729.58、6日が601.71、10日が646.65、15日が631.6、16日が703.33、そして17日は一時1285.67というものだった。
この下げでハンセン指数は、今年4月以降の上昇分をすべて吹き飛ばしてしまったことになる。

ところが、17日に米連邦準備理事会(FRB)がクレジット市場の沈静化に向け公定歩合を引き下げたことにより、ダウ平均(Dow Jones Industrial Average Index: ^DJI)は連日の下げ基調から一転、233.3ドル上昇して13,000ドル台を回復した。
これによって、20日から始まる1週間は世界的な反騰相場になるだろう。
特に短期間で下げ過ぎた市場の雰囲気は一変して、月曜火曜あたりはお祭り気分が漂うに違いない。
私も短期間で利益が上がりそうなコールワラントを物色してみようと思う。

ただ、私の見方はあくまでも今週の反騰相場はあくまで「夏祭り」を楽しむだけだ。
従って慣れてきた香港でのワラント投資に絞るというわけだ。
なぜなら17日のダウ平均の乱高下についてメディアは詳報していないようだが、寄り付き後の十数分で321.9ドル上げた後、朝方発表された8月ミシガン大学消費者信頼感指数(MCSI/Michigan Consumer Sentiment Index)速報値が1年ぶり低水準となったことにより、上げ幅が一時的に100ドルを切るまでに下落したからだ。
その後、買いが優勢になり結果的に200ドル超の上げとなったが、今はちょっとしたネガティブな統計数値にも敏感に反応する流れのようだ。
これが「織込み済み」ということでほとんど反応しなくなれば徐々に買いに入ってもいいと思うが、まだ時期的には早いと思う。

また、今回の下げ相場で、サブプライム問題が何年かに一度の世界的な市場の暴落要因であるという指摘をする人もいるが、もし、それほどまでに根深い問題であるならば、今週の「お祭り気分」は早々に冷めることだろう。
なぜなら、今回の利下げは一種のカンフル剤のようなもので、過去の歴史に照らしてみれば、市場の暴落が始まって、それが完全に底を打つまでにFRBの利下げが一度で済むとは思えないからだ。
まして、今回は米国発の暴落相場なのだ。
今回の下げが「米国不動産バブルの終わり」の序の口に過ぎないというのは言いすぎだろうか。

そして、今回の数週間にわたる香港市場の下げは、現時点で唯一堅調な中国本土市場が変調をきたしたときのことを示唆している。
もし、上海が崩落することがあれば、これだけでは済まないということを・・・
今年に入ってからBRICs市場に参入した人は注意した方がいいだろう。
春に2月の世界株安から立ち直った頃と、現在では市場環境が違うからだ。
もし、次に世界的に市場が崩落すれば、高値掴みした銘柄の株価が元に戻ることは数年ないだろう。
そのときはアメリカで本格的なリセッション入りが確認され、米国発の恐慌のニュースが経済紙のトップを飾ることだろう。

World InvestorsというSNSで交流している方からモルガンスタンレーが1980年以降5回しか出ていない強烈な売りサインが出たことで、顧客に株式の売却を勧めたという記事を引用した私のコラムを見た記憶があるとの指摘をいただいた。

私自身にあまり記憶がなかったので「今日の一言」の中を探してみたが、見当たらず、SNSの6月6日付の日記に書いてあったことが判明した。
今考えるとかなり重要な示唆に富んだ記事なので、今更ながらに紹介したい。
モルガン・スタンレーが顧客に株売却を示唆
(2007.6.6 World Investors日記より)
ブルームバーグで見た記事によると、今日付けの英紙、デイリーテレグラフで、米証券会社のモルガン・スタンレーはインターネットバブル破裂以来の3つの主要な売り指標が出たということで、顧客に株式の売却を勧めているそうだ。
この強い売り指標は1980年以降、5回しか出ていないそうで、同社は向こう半年以内に14%の調整を見込んでいたそうだが、さらに深刻になると語ったそうだ。
まあ、これが今年よくある狼少年なのか、本物なのかは今週から来週にかけてわかるだろう。

原題:Morgan Stanley issues triple sell warning on equities

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8月15日(水)-局地的な地震が津波に変わった

8月に入ってから中国本土を除く主要国の株式市場がアメリカのサブプライム問題に端を発した株安の連鎖に見舞われている。
実のところアメリカのダウジョーンズ不動産指数(Dow Jones U.S. Real Estate Index)は、私が7月28日の「今日の一言」で書いたように突然崩落が始まったのではなく、今年に入ってずっと調整局面にあった。
要するに、今まではアメリカの限定された業種の株式が売り浴びせられていただけで、他国はもとより、お膝元のアメリカの国内市場でさえ、我が世の春を謳歌していたのである。

ところが、去る9日に遠く離れた大西洋の対岸のフランスで、突如として、大手銀行のBNPパリバ(BNP Paribas)が米国のサブプライム問題に絡み、3つのファンドの価格算出や償還を一時的に停止すると発表したことが契機となり、主要国を巻き込んだ株安の連鎖が始まった。
911以来とも言われる欧米の中央銀行による短期金融市場への記録的な資金供給により、この問題は一時的に沈静化したかに見えたが、そもそも対症療法的な意味合いでしかなかったため、信用収縮懸念を引き起こすようなメジャーな企業のネガティブな決算や、政府の統計データが発表されるたびに各国の市場は過剰なまでの暴落を演ずるようになってきている。
まさに局地的な地震が津波に変わったというべき現象と言えよう。

この主要国の市場が崩落するにつれ、為替相場は円高に振れるようになり、海外あるいは外貨のポートフォリオの比率が高い私としては、ベア型ファンドやショートポジションを取ることによって得られる利益は円高によって相殺されてしまう傾向が生じてきた。
もし、何の対策もせぬままに模様眺めをしていれば、毎日のように減り続ける資産のポートフォリオを見ながら忍耐を強いられることになったことだろう。

この円高傾向がいつまで続くのか。
私は1月21日の「今日の一言」で「今の円安基調が一昔前と同じ円キャリートレードによることが主因であるならば、いつかは猛烈な円高がやってくるかもしれない。もし、歴史が繰り返すということが真ならば、その時期はBRICs市場の暴落、特に北京オリンピック前までという噂が絶えない中国バブルの崩壊の時という可能性は十分にあり得る。」と書いたが、中国バブルの崩壊はどうやら当分先の話になりそうな雲行きだ。

しかしながらよく対比される1998年現象でメディアがあまり記事にしていない奇妙な偶然に気づくだろう。
9年前の猛烈な円高は10月にやってきたが、その主因は8月に起こったロシアの財政危機だった。
そして、今回のサブプライム問題が欧米のヘッジファンドを揺さぶっていることが表面化したのも8月だ。
多くの人は、1998年現象と今の類似点を取り上げつつも、9年前に起こったような猛烈な円高はさすがにないと言う。

しかし、自分がファンドマネージャーになったつもりで考えてみたらいい。
私たちのような個人投資家は塩漬け株がいくらあろうが含み損がいくらになろうが誰からも責任を問われない。
しかし、彼らは違う。
顧客から運用を託された資産を増やしていくことが義務づけられているのだ。
つまり、運用している資産の一部に大幅な欠損を抱えれば、それを穴埋めするために利益が出ている資産を処分するだろうし、基準価格の下落により、顧客からファンドの解約を求められればキャッシュを用意するために資産を処分しなくてはならない。
まして全面安の局面が続けば先回りして利益を確保しようというのは誰でも同じだ。

そして、金融用語辞典を見ると、キャリートレード(carry trade)というのは、低金利の通貨を借りて、高金利の通貨などに換えて運用すること、とある。
借金なのである。
例えば、100万円を借りて年利1%とすれば金利は1万円だが、誰が見たって、それはコストなのである。
円安、外国株高のときは、1万円の金利など気にもならないが、これが逆回転し出したら突如としてコストとしての存在価値が増し、たかが1万円と言えども余計なコスト要因は減らしたい、清算しようと思いたくなるのではなかろうか。
これが大きな流れとなれば、突如として雪崩を打ったような外貨売り(円買い)が始まるだろう。
今のところは、「円ローンの繰上げ返済」をやり始めたという段階なのだろうが、今のサブプライム問題が長引くようだと9年前の悪夢の再現となるかもしれない。

今のところサブプライム問題に端を発した株安が中国には飛び火する感じは全くない。
世界中の投資家にとって最後の桃源郷みたいなものだ。
だが、1つだけ懸念がある。
果たして中国政府要人の投資家、あるいは彼らが絡んだ国営企業はサブプライム問題に関係してないのだろうか。
仮に彼らがそのような大ポカをしていても今のところは隠されているかもしれない。
中国株を大量処分することなどまかりならんと政府トップから厳命されているかもしれない。
しかし、そのような事態が隠されているとなると、いずれ背に腹は変えられなくなるヤツが出てくる。
そのときがセリング・クライマックス(selling climax=売りの最終局面)となるだろう。

円の暴騰か中国市場の暴落、おそらくそのときが今回の株安の大底となろう。
9年前も10月の円暴騰が世界大恐慌が始まると言われた株安の連鎖が終わったときだった。
そこから世界的なITバブルへの道へとつながったのだ。
ポストBRICs投資、私はそこまで待ってみようと思っている。


8月12日(日)-幻となったニューヨ-ク行き

8月下旬に1週間程度の休みが取れたので何と今年4回目の海外脱出を図ることにした。
今まで毎年のように海外旅行へ行っているが、年に4回というのは初めてのことだ。(おそらく12月には恒例のそれゆけ香港オフがあるので5回は確実だろう)
先日初めてオフ会でお会いしたとんびさんが、長い旅をドカンとする形から、短い旅を小出しにしていく形に変わってきたと言っていたが、やはり3泊程度の旅行だと、また行きたいという気分になるところは私も同じらしい。
こういうのは一種の中毒症状とも言えるが、海外旅行と投資は私のライフサイクルに組み込まれてしまったので外すことはできない。

そこで、いつも利用しているエアーリンクトラベルにチケット代が安くなる8月下旬から9月にかけての空席状況を問い合わせたところ、アジア系キャリアを使った欧州線はほぼキャンセル待ち、昨年使ったエミレーツ航空もダメで欧州は諦め、インドシナ半島やタイ、ミャンマーといったところは、8月下旬は雨季真っ只中のところが多いので最初から考慮外、それでは、と思ったのがメジャーリーグ観戦ツアーだ。

マリナーズのイチローが見れればシアトルへ行こうと思ったが、私が行こうとした時はすべてがロードゲームでこちらはダメ、それならと、見つけたのが8月28日から30日までのヤンキース対レッドソックスの3連戦だ。
運が良ければ、松井対松坂が見れる。
こんなときでもなければニューヨークなんか絶対行かないだろう。
ネットで調べたらノースウェストの航空券も、ホテル(Holiday Inn New York City-Midtown-57th St.)も観戦チケットもすべてが取れそうだ。
これは行くしかない・・・と思ったがやめた。

現地滞在3日で、1日は市内観光とメジャー観戦で終わりだ。
残りの2日のうち、1日はナイアガラの滝へ行くか、アトランティック・シティでビーチ&カジノを楽しむか。
最後の1日は・・・と考えたらインパクトのあるアクティビティがなさそうなのだ。
シンガポールがつまらないと嘆いている私が同じような都市であるニューヨ-クに耐えられるか。
しかも街(特に夜間)やホテルの安全度はシンガポールの方がはるかに上のようだ。

さんざんネットでニューヨ-クのことを調べた(リンク集を多少充実させた)が、結局行くことを断念した。
で、行くことにしたのは9月が乾季のインドネシアのバリ島・・・
シンガポール航空のチケットが難なく取れたのだ。
14年ぶりに行くことになったが、旅行記などを見る限り、相変わらず客引きや物売りが多いようだ。
私の場合、彼らに対する耐性がほとんどなくなっているのが難点だが、多少ぼられても、物さえ取られなければいいと思うしかない。
結局行き先はまたもや東南アジア、おそらく私がアメリカ大陸へ向かうのは中南米に行こうと思ったときだろう。

ちなみにアジア系キャリアの欧州線チケットの取りにくさにも10年前とは一変しているようだ。
かつては日本発着便が取りにくいという感じがあったのが、今やアジアと欧州を結ぶ路線の方がタイトなのだ。
おそらく経済力の付いたアジアの中流層と好景気に沸く欧州の観光客が相互に行き交うという図式だろう。
こんなところにも確実に時代の変化が訪れているようだ。
旅行会社のスタッフの言った「JALが取れますがそれで行くのはイヤですか?」という言葉が、日本のフラッグキャリアと、そのバックボーンである日本の凋落を象徴しているように感じた。


8月11日(土)-IPO長者の夢を追った1年

約1年半ほど前に知り合いのK氏を通して某企業の未公開株投資の話があった。
このK氏と知り合ったきっかけはインターネット上の付き合いであったが、実際にお会いして信頼できる方だという感触を得ていたので彼の友人H氏が重役をやっているという某企業の未公開株を20株ほど買うことにした。
額面は5万円、投資総額の100万円は、満期を迎えつつあったオーストラリア国債を解約して捻出した。

この話があったときは、ライブドアショック後の新興市場が値崩れを始めていた頃であったが、一般的に企業が株式上場するまでには少なくとも数年を要することから、新興市場が下落した後の持ち直した頃を見計らって上場スケジュールが軌道に乗ればちょうどいいと胸算用をはじいていた。
そして、実際にK氏の友人である重役のH氏に話を聞いたところ、会社は主として富裕層を対象として事業を展開する構想となっていた。
夢は東洋炭素 (5310)<この株は昨年の日本株ポートフォリオの一角を占めていた株で、2006年3月29日に東証1部に上場したこの会社は、株価がほぼ右肩上がりの上昇を続けている優良企業、途中で手放したことを非常に後悔している>と遠大な夢が頭の中で出来つつあった。

そう、私が買った未公開株も東洋炭素とまではいかなくとも、株価が50万円となれば単純に資産が10倍になる、もしかすると宝くじが当たるより可能性があると踏んでいたのだった。
2004年、2005年のときのような新興市場のIPOブームに重なれば株価100倍も夢ではない、とH氏は冗談交じりに話した。
ただ、H氏の話の中で海外市場へ目を向けた事業展開の構想がないことが少し気になっていた。
臼井宥文氏の著書、「ニュー・リッチの世界」を持ち出すまでもなく、私は数年にわたる海外投資の経験から未知のものにトライするような富裕層には国境の概念がないことを知っていたからだ。

約1年後、私の懸念は現実のものとなった。
重役H氏から電話があり、「私は今の会社から手を引くので、出資金について清算(株の売却)を希望するなら私が責任を持って対処する」とのことだった。
今後の会社の可能性について質問すると、「現状では見通しは明るくない、ちょうど株主総会があるから出席して確認することもできる」とのことだった。

実のところ株主総会の通知は日本企業はもとより、TD Ameritradeを通じて投資している米国企業からも受け取ったことがあり、郵送(インターネット)による議決権行使をしたことはあるが、出席したことは一度もなかった。
しかし、この会社の場合は非上場であったこともあり、投資を続けるか否かを最終的に決断するためにも一度は株主総会の雰囲気を味わっておくのも悪くはないと思ったので初めて出席することにした。

出席した結果は、一言で言って「失望」であった。
今時の新興企業の総会が典型的な「シャンシャン総会」ではどうしようもないからだ。
株主の1人が上場の可能性を、私が海外市場へ向けた事業展開の可能性を質問したときも「見通しは極めてネガティブ」に映った。
第一、営業収益が上がらないと言っておきながら事業をドラスティック(drastic)に転換しないことが何より気に入らなかった。
また、前に居並ぶ役員たちも、系列企業から左遷された幹部社員が集まったような雰囲気だった。

私はH氏に株式の清算の意向を伝えるとともに、1年にわたるIPO長者の夢が終わったことを実感した。
H氏の尽力により、私の精算金は額面そのままで返還された。
未公開株の場合、市場価格がないので実勢価格がいくらになるのかわからないが、H氏は会社の実績から言えば額面割れしていると言っていた。
結果的に損失は、豪ドルの値上がり益の機会損失(1年前に比べれば15円程度豪ドル高)だけであったが、私のような平サラリーマンができないような経験をさせてもらったことはいいことだと思っている。
返還された100万円は、まだ手付かずであるが、これをどこに投資しようかはまだ決めていない。
世界的に株式市場が大揺れの8月、本でも読みながらじっくりとポストBRICs戦略を練るのも悪くないだろう。

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