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8月31日(月)-宮城県女川町「株式会社まるき木村商店」再起のお祝い

やまぼうし4年前の東日本大震災で九死に一生を得た木村くん、彼が経営していた宮城県女川町にあった水産会社の工場や自宅なども壊滅した状態(2011年6月27日-がんばっぺ女川)から、最近になって、会社の方は再起を果たしたということを聞いたので、私や彼を含め、最初に海外旅行に行ったときのメンバー5人で再起のお祝いをすることになった。
場所は仙台市泉区にあるやまぼうしという温泉旅館で、ここには2013年8月24日にもノリを除く4人で集まったところで、約2年ぶりの再会ということになろうか。(参考:2013年ブルートレイン「あけぼの」で行く東北の旅

それにしても頑張ったものだと思う。
木村くん曰く、自力だけでの再建はとても無理で、カタールフレンド基金(Qatar Friendship Fund)を始めとする支援が大きかったとのことだが、当然ながら、事業の再建に際しては借り入れをしているので、これからが正念場と言えるだろう。(2012年10月16日-東洋経済:被災地・女川の水産業をカタールが再建支援
私たちにできるのはこうして定期的に激励会をしてあげることぐらいなのだが、来年が「株式会社まるき木村商店(〒986-2231 宮城県牡鹿郡女川町宮ヶ崎字宮ヶ崎4-7 電話 0225-53-4135)」創業100周年、そして、私たちが出会って30周年の節目なので、盛大にお祝いをしたいと思っている。
最後に、水産業界の皆様ほか関係者の方が、この記事をご覧になっていただいたならば、宮城県女川町の「株式会社まるき木村商店」を応援いただければ幸いである。


8月27日(木)-2015年の世界市場の暴落予想が当たっても・・・

私が今年の新年の挨拶のコラム「¡Feliz Año Nuevo!(新年、おめでとう)」で、「今年は7年ぶりにスペイン語で始めてみた。一応、私のハンドルはアラブ系スペイン人の名前だからね。ところで、7年前の2008年はリーマンショックで世界市場が暴落した年なのだが、私がスペイン語で新年の挨拶を始めた年がそういう巡り合わせになるのかは、今年の秋までにわかるだろう。」と書いたとき、ほとんど冗談のつもりだった。
ただ、このときは「早期リタイアへのファイナルステップ(final step for early retirement)(2014年11月16日)」を掲載した後でもあり、正直なところ、今年の秋口くらいに暴落相場がきて絶好の買い場になればいいという願望はあった。

そして、自分の信念を固める意味で書いたのが、2015年3月15日付の「退職金による春の投資デビューがリスキーな統計的理由」だ。
もちろん、弊サイトを訪問されている方に対して警鐘を鳴らす意味もあったが、これを書くベースとなったパンローリング主催の投資戦略フェアEXPO2015の講演で、西山孝四郎氏の「現役ファンドマネージャーの日米市場のアウトルック」を聞いたことが大きかった。
この講演の中で彼が述べた、過去60年の日経平均やNYダウの夏相場(5月から10月)と冬相場(11月から翌年4月)とを比較した場合、冬相場の優位性は長期にわたって確認されているということが特に印象に残った。
この理論は、「FX市場のテクニカル分析(8)株とクロス円の投資をするのに最適な半年間投資(2014年7月15日)」でも触れられていて、今回の暴落をひきずったまま秋口に突入すれば、今年度の上半期も西山理論の有効性が確認されることになるわけだ。

ところで、今回の世界市場の暴落の震源地である中国の上海総合指数(Shanghai Composite Index)は、わずか2ヶ月余りで6月12日に付けた最高値(5178.19)より40%も下落しているのだが、これで世界株安が収束すると思っている人はあまりいないだろう。
実際のところ、上海総合指数は相当に下げたが、日経平均株価ダウ平均(Dow Jones Industrial Average)は下がり始めたばかりだ。
例えば、経済評論家の池田信夫氏は8月26日付の記事「中国の株安は『引き金』にすぎない」で、「ここ5年の金余り状態でジャンク債の発行は急増している。金余りは必ず過剰債務と資産バブルをもたらし、最後は崩壊して正常な状態に戻る。今回の崩壊の規模はリーマンショックの何倍も大きいだろう。」と不気味なことを書いている。
私は現在保険的な意味合いで投資しているベア型のETF(Exchange Traded Fund=株式上場投信)を買い増しした方がいいのではという気になり始めている。(参考:インバースETF一覧 ETFdb.com - Inverse Equity ETF List

日本の毎月分配型ファンドや、米国の毎月配当型のETFの中には、ハイイールド債(high yield bond)と呼ばれるジャンク債(junk bond)が組み込まれたものが多数ある。
私が2014年8月9日に「米国のハイイールド債券(high yield bond)ブームに陰り」を書いたときは、一時的な現象として、私を含め、ほとんどの人は世界株高に酔い、ほとんど気にも留めなかったのではなかろうか。
ところが、歴史を振り返ると2007年(リーマンショックの前年)は、米国の住宅市場の先行き不安に関する記事が多数配信される中で、中国の上海市場で散発的な暴落が数回あったにもかかわらず、すぐに盛り返して世界的な株高が続行する現象があった。(参考:今日から新しい人生を歩みたい人のための投資入門講座-私がショート戦略にこだわる理由
7年前は米国のサブプライムローン、今回はグローバル市場のハイイールド債(ジャンク債)、世界の株式市場が暴落する前年に市場関係者が懸念していたことが1年かけて現実化する。
今年がその役回りの年であるならば、9月か10月に再度の大暴落があるかもしれない。
私はリーマンショックの起こったとき(2008年9月)は、なぜか超ユーロ高の欧州旅行(フランス・イタリア・ドイツ)に行っていた。
そして、今年の9月もユーロ高の欧州(クロアチア・イギリス・マレーシア)へ私は出かける。
これだけ言うとオカルトの世界になるが、今年の秋は市場の暴落を警戒し過ぎて困ることはないと思っている。

日本人の中には昨今の対中関係の悪化から中国の株式市場が崩落することに対して、インターネット上で喝采を送っている人をよく見かける。
今やモンスター国家と化した中国に対して溜飲を下げたつもりなのだろうが、中国発の金融恐慌が世界中に波及すれば、公的年金の原資の半分(50%)を国内外の株式で運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF/Government Pension Investment Fund)の資産はたちまち含み損に変わるし、リーマンショック後のように日本の雇用市場に多大な影響を与えるかもしれない。
私は株をやっていない、年金なんてもらえるとは思っていないと嘯(うそぶ)いてはいられなくなるだろう。
奇しくも今年の10月からは公務員や教員の共済年金が厚生年金に一元化される。(参考:公務員の年金一元化で得する人、損する人
このとき、日本の株式市場が再度暴落に見舞われていたら、新たに莫大な資金を得たGPIFが闇雲に株価買い支えに出たところを外資の売り浴びせに狙われる。
これもいつか見た歴史の繰り返しであるが、私としてはこうした悪夢が繰り返されないように祈っている。


8月24日(月)-電子書籍は旅の友

私がiPadに電子書籍をダウンロードして海外旅行に持っていくようになったのは2013年12月のタイ・ミャンマー旅行のときからだろうか。
そのとき買ったのは、人気ブロガーのちきりんさんの「社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!」と、近藤駿介氏の「アベノミクスの『不都合な真実』」だったように思う。
それ以降、1週間以上の海外旅行に出るときはiPadが本棚の代わりとなり、引き続いて、私の自由人への道筋を付けてくれた小長井さんの「おこづかいで貯金ができる むだづかい撲滅計画」や、ちきりんさんの「マーケット感覚を身につけよう」を購入するようになった。
やはり、電子書籍は、長距離便の機内や、空港のラウンジでの時間潰しには非常に都合がいい。
私の場合は、長期で海外旅行をするときは、ビーチやプールで過ごす時間を設けることが多く、そこでは紙書籍が重宝するが、それでも電子書籍は長期の海外旅行には欠かせないアイテムとなっている。

ところで、去る8月20日付のちきりんの日記で「急成長する読書市場」というコラムがあった。
彼女は「みんなよく本を読む時代になった。これに加えてネット上の文章を読む人も急増してるので、『活字離れ』なんて大嘘な話で、実際にはみんな過去より今の方が圧倒的にたくさんの文章を読むようになってる。最初に紹介したグラフは2012年までのデータだから、電子書籍の影響はまだ出ていません。今後、電子書籍が本格的に普及すれば、みんなが読む本は更に増えるはず。当たり前っちゃ当たり前ですが、本を手に入れるのが簡単になれば、本を読もうとする人は増えるんです。」と述べている。
この入手が容易になるというのが肝要で、ネット書店の有利なところは、本を入手するまでに消費者が物理的に動くことがほとんどないことで、多忙なビジネスマンや、小さな子供や介護老親を抱えて、書店に足を運ぶ時間が取れない人たちの購買意欲を向上させることになると思う。
また、電子書籍化は持ち歩く荷物を減らしたい人や、海外在住者にとっては相当のメリットを感じさせることだろう。
逆にネット書店が不利なところは、他人の書評(レビュー)に消費者の購買意欲が左右されることで、主体的な書籍選びが困難になることだ。

ちなみに、私が2013年6月26日に「地球の歩き方の電子書籍充実化(Kindle)を望む」を書いてからわずか1年後には「地球の歩き方の電子書籍化スタート(2014年6月2日)」となり、最近検索したら相当数の「地球の歩き方ガイドブック」が電子化されていた。
旅行のガイドブックほど荷物として嵩張るものはないので、やはり相当数の需要があるのだろう。
私は過去のコラムで、「地球の歩き方も英語版のガイドブックであるLonely Planetのように、一冊丸ごと(entire guides)でも、あるいは、必要なところだけ(individual chapters)買うこともできるようにして欲しい。」と書いたら何とそれも実現していた。
素晴らしいことだと思う。
私の次回の長期海外旅行は、9月のクロアチア・イギリス・マレーシア旅行を予定しているのだが、それに合わせて何か電子書籍を買っておきたいと思っている。
いくら夜行便のビジネスクラスで行くとはいえ、フライト時間が相当長いからだ。
とりあえず、鉄道の達人倶楽部が出版した「わくわくがとまらない 日本の鉄道77」とか、太田英基氏の「日本がヤバイではなく、世界がオモシロイから僕らは動く。」 などがいいだろうか。
あるいは、1990年代に紙書籍で読破した沢木耕太郎氏の「深夜特急(1~6)合本版」を再度読むのも悪くない。


8月23日(日)-自撮り(selfie)がブームらしいが

Selfie Arm今やどこの観光地でも見かける自撮り棒(セルフィー・スティック/selfie arm)を持った観光客、何を隠そう私もこれを買ったのだが一度も使ったことがない。
品物自体は昨年8月のシンガポール・マレーシア旅行の際、コタキナバル(Kota Kinabalu)にあるセンター・ポイント(Center Point Shopping Mall)の携帯ショップで買ったものだ。
なぜ、そんなところで買ったのかといえば、この旅行の前に行った越境会1周年記念全国大会イベント@Mt.Fujiで、「自撮り棒(セルフィー・スティック/selfie arm)は日本では通販でも売っていなくて、国外でないと買えない。自撮り・棒で検索すると卑猥なものがヒットする。」などという話題で盛り上がっていたからだ。
そこで、ブログネタ作りも兼ねて買ってみたものの、帰国してしばらくしたら日本の通販サイトでも販売されていたし、しかも私が買ったものはBluetooth無線機能など付いていないローテクなものだったので、そのままお蔵入りしたというわけだ。

ところで、いつ頃から自撮り(selfie)が世界的に流行り出したのかというと、どうやら2年ほど前からのようだ。(2013年11月19日-木村正人のロンドンでつぶやいたろう:「セルフィ(自分撮り)」が大ブレーク 英オックスフォード辞典の「今年の言葉」
おそらく、この大ブレークの要因の一つは、iPhone 5のアプリでセルフタイマーが出たことだろうか。
今ではiPhone 6を買うか、iOS8にアップグレードすれば、セルフタイマーが標準で付いているので、わざわざアプリをインストールする必要がないが、これを使えば、私が持っているようなローテクな自撮り棒(セルフィー・スティック/selfie arm)でも十分に役目を果たせるだろう。

ただ、この自撮り棒(セルフィー・スティック/selfie arm)のネックは、当たり前のことだが嵩張ることだ。
今では数日間の国内旅行の時でさえ、iPhoneにデジカメ、加えてそれぞれの充電器などを持っていくので、さらに自撮り棒(セルフィー・スティック/selfie arm)を持っていく必要があるのかと自問自答すれば、自ずとお蔵入りである。
おまけに、海外旅行の際はSIMフリーのiPhoneでないと用をなさないので、それが加わり、1週間以上になるときはSDカードのバックアップを兼ねてiPadを持参するので、自撮り棒(セルフィー・スティック/selfie arm)が持ち物に加わる余地はないだろう。
そういうわけで、私の場合は基本的にデジカメやiPhoneを誰かに渡して「写真を撮っていただけますか(Could you take my/our picture?)」が当分続くような気がする。
もっとも、自撮り棒(セルフィー・スティック/selfie arm)のおかげで、自分が写真を撮ってくれと頼まれるシチュエーションは激減した。
かつては、誠実な日本人の信用度に加え、なぜかメカに強いと思われていたので、まるでカメラマンのように頼まれたこともあったが、画一仕様のスマホやiPhoneの世界的な普及は、そういったものを過去の遠い思い出に変えてしまったようだ。


8月22日(土)-祈ってもダメだった年金機構のITセキュリティ

私はかつて政府や地方自治体の脆弱なITセキュリティ体制の実態について、2010年7月24日付の「政治家の眼中にないITのセキュリティ対策」、そして、2013年10月14日付の「2014年XP問題、地方自治体の首長や幹部公務員は学習能力がないのか」でこう書いてきた。
「今や役所間の個人情報のやりとりもITを使う世の中になっているにもかかわらず、政治家や役所のローテク幹部の頭の中にITセキュリティという概念はない。
従って、現場の公務員ができることは、ハッカーに狙われないように祈るだけであり、福島原発事故のIT版がいつ起きてもおかしくない。
悲惨なのは、ハッカーやウイルスの感染によって個人情報が漏れ出す危険性に怯える当の自治体の住民と、苦情を受けて尻拭いをさせられる若手公務員である。」
2015年5月28日、こうした懸念は「日本年金機構における不正アクセスによる情報流出事案」として現実のものとなった。

そして、8月21日、厚生労働省が発表した「日本年金機構における不正アクセスによる情報流出事案検証委員会検証報告書」の要約版には、同省の情報セキュリティ体制の脆弱性として以下のように書かれている。
「厚労省の情報セキュリティ担当者は実質1名の限られた体制の中で、マイナンバー制度の施行等多岐にわたる葉務を抱えていたこともあり、専門的知見や人見数などの面でみると、その情報システムの規模との比において、到底十分といえる体制とは言い難かった。
また、省内における専門家としては、CIO(情報システムの担当者)補佐官5名が配置されていたが、いずれの者も非常勤であり、かつ、システム刷新業務や関連業務などに加えて情報セキュリティを助言するという状況であったため、インシデント(incident=重大な事故)の報告が事後的になるケースが多かったなど、情報セキュリティに関して情参室の担当者等と緊密な連携はとれていなかった。
CSIRT(シーサート)体制も定められているが、その構成員は課室長以上となっており、技術力を持った実働要員が充てられていたわけではない。
さらに、厚労省と関連組織とのCSIRT(シーサート)連携はなされていなかった。」

つまり、厚生労働省は、たった1人の担当者にITセキュリティ関連業務のすべてを行わせ、彼(彼女)をサポートする体制はまるでないに等しく、かつ、上司は誰もITに詳しくないため、いざというときに何の役にも立たない状況だということだ。
一方、当事者の年金機構のITセキュリティに関しては、人的体制は質・量ともに不備があり、サイバー攻撃に対して、何の対策も講じられていなかったに等しいと酷評された。
私はこれを見て、2008年5月に自殺した宮崎県児湯郡新富町役場の松本美香さん(当時28歳)のことを思い出した。
彼女も担当部署のシステム関連業務をほぼ一手に引き受させられていたというからだ。(2013年4月16日-Business Journal :28歳新富町職員、業務集中による過労で薬物自殺・・・危険把握していた町長は放置
要するに、役所でもIT化を推進すべき時代において、それに付いていけないローテク公務員が多すぎるから、そのしわ寄せが彼らのところに来るのだ。
ちなみに、前出の報告書は電子文書をそのままPDF化せずに、印刷したものをPDF化しているようで、こういうところにも厚生労働省のITオンチぶりが如実に出ていると言える。
ロイターのニュース(2015年8月21日-個人番号、基礎年金と連結延期)では「マイナンバー制度と基礎年金番号との情報連携の開始時期を、当初予定の2016年1月から延期する調整に入った。日本年金機構の情報流出問題を受け、再発防止策が図られるまで先送りする。延期期間は半年から1年の方向だ。」とあるが、ローテク政治家や公務員が岩盤のように固まっている組織が運用するマイナンバー(社会保障・税番号制度)は、国民にとって爆弾のようなものだ。

私が思う官公庁からの個人情報漏えいの再発防止策の一つは、5年前(2010年7月24日)のコラムで書いたように、電子政府などやめて、パソコンが苦手な官民の熟年サラリーマン(OBを含む)が涙して再雇用に応じられるローテクな役所を復活させればいいのだ。
財政難の折に、再雇用とはいえ、なぜ公務員を増やすのかという意見もあるだろうが、超高齢社会の日本においては電子政府を担う人材が決定的に不足してくるからだ。
それに、定期的にWindowsのOSの更新問題が立ちはだかることはコラムでも触れたとおりで、そうなると、日本人が大好きな「お祈り」の世界に入っていくことが確実だからだ。
私の知り合いのSEからは「(私たちが仕事を失うから)冗談でもそんなことは言わないでくれ」と言われたが、Windows 7のサポートが切れる2020年、東京五輪後の反動不況も予想される中、全国の公務員がパソコンの前で「お祈り」するよりマシだと思うがいかがだろうか。

サイバー攻撃、厚労省にも・・・年金機構に連絡せず
(2015.8.22 読売新聞)
日本年金機構の個人情報流出問題で、厚生労働省の第三者検証委員会(委員長=甲斐中辰夫・元最高裁判事)は21日、報告書を公表し、機構への最初のサイバー攻撃の約半月前に厚労省年金局が類似の攻撃を受けていたことを明らかにした。
厚労省はこの攻撃について機構に伝えておらず、報告書は、厚労省と機構が情報や危機感を共有していなかったことが、約125万件(約101万人分)の大量流出という深刻な事態につながったと指摘した。

報告書によると、今年4月22日、厚労省年金局にメールが届き、職員が添付ファイルを開封。
パソコン端末がウイルスに感染して不審な通信を始めたことから、内閣サイバーセキュリティセンターからの連絡で同省は通信を遮断した。
機構はその約半月後の5月8日、標的型メールによる攻撃を受けたが、この時の不審な通信先は、厚労省への攻撃の際と一部同じだった。
報告書は「厚労省が事前に対策を取っていれば、機構への攻撃の一部は防げた」と言及した。

厚労省には情報セキュリティーの担当者が実質1人しかおらず、専門的な知識も不足していたことを問題視。
機構への攻撃が始まった後も、厚労省の担当部暑には不審メールを受信したという報告が複数回あったが、上司への報告は情報が流出した後の同25日だった。
報告書は、こうした不十分な対応で通信の遮断などが遅れたとした。

また、機構はパスワードを設定しないまま大量の個人情報を保管していたが、機構の情報システムを監督する厚労省の部署が決まっていなかったことも「監督官庁としてあり得ないことだ」と批判した。
一方、機構については、検証委の調査の過程で、一部の資料を出し渋ったことを明らかにし、「国民に多大な心配をかけていながら、組織としての自覚を欠いた姿であり、論外だ」と非難した。

そして、流出の原因について、①機構、厚労省とも、標的型メールによる攻撃への危機意識が不足②組織内、組織間で情報や危機感の共有がなく、場当たり的な対応に終始-などと指摘。
再発防止策として厚労省の情報セキュリティー部門の強化などを提言した。
報告書を塩崎厚労相に手渡した後、記者会見した検証委の甲斐中委員長は、「(4月の)攻撃について情報共有していれば、もっと危機感をもって対応できたはずだ。組織の在り方に問題があった」と述べた。

8月20日(木)-鯛そうめんを食する会

去る16日にKona's Salaonで行われた「鯛そうめんを食する会」に行ってみた。
ここのイベントに参加するのは年初にピエールさんとの密会をしたとき以来だろうか。(2015年1月13日-イビサ島(Ibiza)を語る新年密会 with アオザイ美女
鯛そうめんと聞いて、何かお祝い事のときに出される伝統料理なのだろうか、と思って調べてみるとウィキペディアには「瀬戸内海沿岸地域に広く伝わる郷土料理。鯛を使った見栄えのする縁起物の料理であり、結婚式や棟上げ式、年祝いなどでよく作られ、今日では料理店やホテルのパーティ料理で見ることが多い。 特に結婚式では「たいめん(対面)」と読む事から「両家が目出度く対面したのを祝う」と言う意味と、おめでたいことが長く続くようにとの願いを込め、大皿に茹でた素麺を波形に敷く事から、好んで用いられる。」とある。
どうやらサロンの常連である美紀さんの生まれ故郷に伝わる伝統料理のようで、今回はワールドインベスターズの友人で、ニューヨーク在住のMimiさんが米国不動産投資会社(Win/Win Properties, LLC)で成功していることのお祝いということになるのだろうか。(参考:ワールドインベスターズTV-特集!アメリカ不動産最新事情

この鯛そうめん、もっさん曰く、最近はサロンに招待した人に密かに振舞っていたらしいのだが、リクエストに応じて、今回はメイン料理にしたそうだ。
一口食べてみると、つけ汁となっている鯛の煮汁が何とも言えないほど美味しい。
私はそうめんを食べるときに市販されている麺つゆなどを付けて食べることが多いが比べ物にならない。
それに、正月のお祝いなどで鯛を食べることはあるが、こうした食べ方があるのだと改めて感心してしまった。
日本の先人の知恵というのは素晴らしい!
もちろん、この鯛そうめん以外にもサロンでは美味しい料理と美酒の数々が振舞われて、とても充実した1日を過ごすことができた。
もっさん流の言い方を借りれば「出会いに感謝」なのかな(笑)

鯛そーめんを食する会 鯛そーめんを食する会

8月15日(土)-シティバンク顧客満足度調査(Citibank Customer Surveys)

シティバンク五反田支店 来る11月1日にシティバンクの個人金融部門が三井住友ファイナンシャルグループ傘下のSMBC信託銀行に統合されるのに伴い、ブランド名が「プレスティア(PRESTIA)」となることが決まったようだ。(2015年6月16日-SMBC信託銀行:シティバンク銀行のリテールバンク事業取得に伴う新ブランド「PRESTIA」の創設について
私は今年の4月から勤務している職場の指定休日が平日であるため、取引している銀行や証券会社の店頭に足を運ぶことが多くなった。
取引自体はインターネットや電話でも十分可能な用件が多いのだが、支店の雰囲気を感じ取ろうという気持ちもあった。

特に、シティバンクの場合は、1997年7月の口座開設以来のメインバンクであり、このままSMBC信託銀行に資産を移管するか、保有資産を一旦売却して、他の金融機関で買い直しをするか迷うところがあったからだ。(2014年12月11日-シティバンクの口座、売却後は三井住友銀行で継続保有の予定 2014年11月3日-シティバンク個人業務撤退後を見据えて新生銀行に口座開設
そして、今年度になってから横浜支店に何回か足を運んだ結果、基本的にはSMBC信託銀行に資産を移管して様子を見るということにした。
現時点ではシティゴールドのステータスがあるし、事業統合後もプレスティアゴールドとしてスタータスを維持できる見込みだからだ。(これについては11月1日の時点で資産評価額がゴールドの基準を下回っている場合はステータスが維持できない可能性もある。)

ところで、シティバンクというブランドがなくなるまでカウントダウンに入っているのだが、先日「シティバンクの支店についてのお伺い」というのが自宅に郵送されてきた。
中身を見ると、顧客満足度調査(Customer Surveys)のようだが、今更ながらという感じがしないでもない。
今月になって支店の受付に研修生が立っていることもあり、SMBC信託銀行に調査結果を引き継ぐということなのだろうか。
いずれにせよ、私が以前のコラムで書いたように、事業統合後の銀行は外資でなくなるため、優秀な女子行員が抜ける可能性が高いという懸念は残る。
SMBCと英文字の銀行になっていても、所詮は男尊女卑の色濃い年功序列型の日系銀行の系列、これは顧客である私にとっても不安材料でしかないからだ。


8月14日(金)-Lovers Kitchen 1周年記念パーティ

去る8月1日、私が日頃よりお世話になっているあらっきーと金子さん主催のLovers Kitchen 1周年記念パーティが行われた。
彼曰く、ここに個人投資家やグルメ愛好家の仲間を集めてパーティをするようになって7月で満1年なのだそうだ。
私が彼を知ったのは、ワールドインベスターズTVの月曜ライブを六本木でやっていた当時なので、今から3年前ほどになる。
その後、自遊人の師匠であるもっさんのお金のセミナー(参考:2014年8月11日-お金のセミナー&キャッシュフローゲーム会)で、あらっきーもシェフとして来ていたことで、それらを通じて親しい仲になったというわけだ。
実は私もこのときまで彼の本職はシェフだと思っていたのだが、投資関係の仕事(匠投信投資顧問)が本業だと知ったのはここ1年くらいの間のことだ。(笑)

ところで、Lovers Kitchenに集まってくる人は、ほとんどの参加者がグルメを目当てに来られているようで、それはそれで全く構わないのだが、せっかく彼も投資を通じて将来設計を考えよう、といったことをやっているので、そちらにも目を向けた方がいいと思う。
30代、40代の方は実感が沸かないかもしれないが、サラリーマンは遅くとも60代になれば”定年という名の失業”をすることになる。
公的年金が当てにならないと思っているなら、定年という名の失業対策を早い時期からすべきだというのが投資(資産形成)の目的だ。
日本の庶民に馴染みのある言い方をすれば、投資(資産形成)は就業不能保険、あるいは所得補償保険の一種という言い方もできるのだ。
もっとも、これらの保険商品は支給要件が厳しく、これらに加入するなら月々の投資に回した方がいいと思うのだがいかがだろうか。

Lovers Kitchen 1周年記念パーティ Lovers Kitchen 1周年記念パーティ
Lovers Kitchen 1周年記念パーティ Lovers Kitchen 1周年記念パーティ

8月13日(木)-マリナーズの岩隈、野茂以来日本人2人目のノーヒットノーラン

今日は素直に「岩隈投手、おめでとう」とだけ言っておきたい。
現地時間の8月12日、シアトル・マリナーズ(Seattle Mariners)の岩隈久志投手が、本拠地のセーフィコ・フィールド(Safeco Field)で行われたボルティモア・オリオールズ(Baltimore Orioles)戦でノーヒット・ノーランを達成した。(スポニチとMLB公式サイトの配信記事)(Seattle Times - Key plays from Mariners starter Hisashi Iwakuma's no-hitter)
日本人のメジャーリーガーとしては2001年4月4日のボストン・レッドソックス(Boston Red Sox)(当時)の野茂英雄投手以来の快挙だそうだ。(2001年4月6日-スポニチ:野茂偉業ノーヒット・ノーラン CNN Sports Illustrated on April 4, 2001 - Nomo begins Red Sox career by no-hitting O's
私も昨年、一昨年とメジャーリーグ(ニューヨーク・ヤンキース/New York Yankees)の試合を見にアメリカまで行ったが、シアトルに本拠地のあるマリナーズはノーマークだった。
岩隈投手はヤンキースに移籍したマー君(田中将大)と同じ東北楽天ゴールデンイーグルスの出身、野茂も元々は近鉄バファローズ(現在のオリックスバファローズ)の選手、パリーグ出身の投手の方がメジャーで大成するのだろうか。
いずれにせよ、ノーヒットノーランなど滅多に出ない記録、お盆休み期間中ということもあって、現地観戦で目の当たりにした日本人観光客も多いのかな。
ちょっと羨ましいぞ!(笑)

2015年8月12日、シアトルマリナーズの岩隈ノーヒットノーラン達成 2015年8月12日、シアトルマリナーズの岩隈ノーヒットノーラン達成

8月11日(火)-マイレージ/ホテルポイント移行サービス終了によりシティバンクゴールドカードは解約へ

2015年3月28日に「シティカードの売却先内定で再びクレジットカード切替プロジェクト始動」というコラムを書いて以来、いろいろ検討していたクレジットカードのリストラ(restructuring)だが、現時点では、ステータスカードとして、JALダイナースカード(年会費 30,240円)、格安年会費のカードとして、マイレージプラス・セゾン(年会費 1,620円、マイルアップメンバーズは解除)と、大人の休日倶楽部ミドルカード(年会費 2,575円)、それに海外発行分としてHSBC香港からもらった年会費無料のHSBC Premier Master Cardと、HSBC Advance Visa Platinum Cardをそのまま継続保有することにした。
3月にコラムを書いた時点では、JALダイナースカードをJALアメリカン・エキスプレス・カードプラチナか、JAL・JCBカードプラチナ(年会費はいずれも33,480円)に切り替えることを書いたが、JCBが国際的に通用度の低いクレジットカードであることがネックになり、切り替えを取りやめることにした。
それに、これらのカードに付帯して無料で入会できるプライオリティ・パス(Priority Pass)は、今年になって海外渡航の頻度が減ったため、ダイナース特典で利用できるラウンジでOKとし、あえてこだわる必要がないという決断を下した。
そういった意味ではアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード(年会費 31,320円)を来年以降保有するか否かが今後の課題とも言える。

さて、今回のコラムの本題であるシティバンクゴールドVISAカード(年会費 12,960円、前年度年間利用額30万円以上で無料)に関しては、すでに報じられているとおり、シティグループのカード事業は三井住友信託銀行に売却されることが決定している。(2015年3月31日-シティカードジャパン株式会社の売却について三井住友信託銀行株式会社と合意
そして、かねてより懸念していたマイレージ/ホテルポイント移行サービスが継続される可能性については、9月末の受付分をもって移行サービスが終了することになるというお知らせがメールで送られてきた。(2015年8月3日-「マイレージ/ホテルポイント移行サービス」終了のお知らせ
そうなると、私にとってこのカードを持つ魅力は、年間利用額に応じた翌年度年会費無料サービスぐらいになり、残念ながら来年には解約という決断をすることになりそうだ。
1997年7月にシティバンクに口座を開き、翌年の1998年6月にノースウエスト/シティワールドパークスVISAカード(2010年1月からデルタスカイマイルシティクラシックVISAカード、2012年3月に一律格上げによりデルタスカイマイルシティゴールドVISAカード)に入会して以来17年間のお付き合いをしてきたが、来る11月1日のシティバンクの日本撤退(参考:2015年6月16日-SMBC信託銀行:シティバンク銀行のリテールバンク事業取得に伴う新ブランド「PRESTIA」の創設について)とともに提携カードのお付き合いも終焉となりそうである。


8月10日(月)-杉村太蔵議員の国会質問から9年、新卒至上主義の就活環境は変わったのか

去る8月1日、2016年(平成28年)春入社の大学生・大学院生の就職・採用活動が本格的に始まったことが新聞などで報じられた。(2015年8月1日-日経新聞:初日から内々定も 16年春入社の就活本格スタート
経団連が2016年(平成28年)卒入社組から採用面接を8月へ「後ろ倒し」するように傘下企業に要請したからだ。(2013年9月13日-経団連:採用選考に関する指針
さて、その採用選考だが、官公庁や日系大企業の多くは、終身雇用制度は崩壊していると言いながらも、往時の遺物である新卒至上主義はかたくなに固守しているように思える。
実際、中高年社員が失業したり、新卒の時期に正規雇用にありつけなかった若者の経済的困窮度は、様々なメディアで報じられているとおりで、なぜこういう状況の中で新卒至上主義を貫きとおすところが多いのか不思議で仕方がない。

経営者や採用担当は自分自身の実体験として、日本人社員は卒業後のブランクがあったり、中途採用の社員は優秀な人が少ないと言うのか。
それとも単なる思い込みなのか。
外国の企業でそういうことをしているのかと私なりに友人に質問したことがあるが、そのような実態は私が知る限り日本だけのものだ。(参考:2014年3月26日-キャリコネ:新卒一括採用」は残すべきか 「ぶっ壊したい」と「すばらしい」で大議論
現在、安倍内閣は財界の意向に沿って、解雇規制を緩和するような法整備をしようとしているが、入口(中途採用)が閉じられたままの状態では、労働側の猛反発を受けるのは当たり前なのだ。(2015年4月13日-J-Cast News:解雇規制を緩和する「解決金制度」が動き出した 「金を払えばクビにできる」のか
少なくとも「解雇規制が厳しく労働者の移動が進まない」というなら、官公庁や大企業の多くが新卒至上主義をやめ、いつでも採用の門戸を開いている状況にすべきだし、安倍首相や塩崎厚生労働大臣は中途採用の実態を昇進などの制度も含めて検証すべきだろう。

ところで、今から遡ること9年前、2006年(平成18年)3月1日の衆議院予算委員会第五文科会で質問に立った自民党の杉村太蔵議員は就職に難渋する若者の言葉を代弁してこう述べた。
「(僕たちの仲間が仕事がないのは)新卒採用という、門戸をきゅっと閉めている、これが大きな原因なんです。何が申し上げたいかというと、決して僕たちは働く意欲を失っているわけではないんです。小泉総理のメルマガには、2月2日付で、待ち組という言葉がありました。待たせていた人たちもいるではないかというのが僕の考えです。待ち組ではなく、待たされ組なんです。
非常に経済が低迷して、新規採用の門戸が物すごく狭まり、では、2007年問題で団塊の世代ががばっと抜けた後、もしこの新卒採用をいつまでも続けていたら、僕らは永遠に、もう二度とチャンスはないわけですよ。
ぜひ、中野副大臣、経済団体の方々に、この新卒採用の撤廃、年齢、性別、学歴不問、24時間365日、意欲のある若い人たちの声は聞きますよと、それで、もし現時点で会社で採用できないなら、その理由をしっかりと、正規雇用の基準をしっかり僕たちに目標を提示していただきたいんですよ。そういう働きかけを日本政府としてやっていただけないでしょうか。」

このことは、翌日の朝日新聞「『僕ら待たされ組』 杉村議員が国会初質問」や日刊スポーツ「自民杉村太蔵議員、初質問で提言」などでも報じられた。
彼は、その後も複数回「2006年(平成18年)6月9日の衆議院(第164回常会)厚生労働委員会2007年(平成19年)3月28日の衆議院(第166回常会)厚生労働委員会2008年(平成20年)5月23日の衆議院(第169回常会)厚生労働委員会」に渡って、機会があるごとに根気強く国会質問を重ねた。
特に2006年6月9日の厚生労働委員会における中野清厚生労働副大臣の答弁によれば、「日本経団連も日本商工会議所も、同じ(若者の応募機会の拡大の)認識を持っている」とのことだが、本当にそうだったのだろうか。(参考:2006年8月10日-日本経団連タイムス:安倍官房長官と懇談-再チャレンジ支援で意見交換 *当時の安倍官房長官は現在の首相)
小泉チルドレンの象徴だった杉村太蔵氏がわずか1期で国会議員でなくなった後も、「新卒」というキーワードで厚生労働委員会の国会会議録を検索すると、多数の国会質問が出てくるし、それに対する政府答弁もある。
2015年7月9日付の外資系OLのぐだぐだ「中国崩壊で就活氷河期再来か?大学生は、今のうちに武器を取れ」を読む限り、あまり変化はないように思えるが、こうした国会での議論の積み重ねで、少しは日系企業の採用姿勢に変化が現れたのだろうか。

実際のところ経団連の「新卒採用(2014年4月入社対象)に関するアンケート調査結果の概要」を見ると、既卒者採用については約3分の2(69.2%)が実施しているものの、詳細に見ると、2011年1月12日付の「新卒者の採用選考活動の在り方について」を受けた、卒業後3年以内(55.4%)であることや、正社員としての就業経験がない(42.3%)ことを条件に、新卒採用の扱いで実施(84%)しているところがほとんどで、本当の意味での中途採用はほとんどないに等しい。
これに関して、ITmedia ビジネスオンラインの連載記事で「ちきりん×城繁幸の会社をちゃかす(3):なぜ企業は中途採用に消極的なのか?」というのがある。
著名ブロガーによる対談というわけだが、ここでも城繁幸氏は「企業は40歳以上の中途採用をほとんどとらない。既卒問題、ポスドク問題(博士号を取得しても就職できないこと)、女性問題というのは突き詰めていくと年功序列問題が立ちはだかる。このシステムを変えていかないと、流動的な社会にはなりません。」と持論を展開している。

さらに、参考程度にしかならないが、Yahoo!知恵袋で「日本企業はなぜ新卒に固執するのか?(2008年10月2日)」と質問した人に対し、ベストアンサーとして「何も知らない子の方が、洗脳しやすいからです。」と書かれたものがある。
レスポンスの書き手はおそらく女性だろうが、それ以外の回答でも日系企業のサラリーマンの本音を垣間見ることができる。
実際、数年前に当時の私の上司もこう言ったことがある。「経験者は仕事はできても煩いんだよね。新卒の方がクセがないから」
それにしても、インターネット上では、外部から自分たちのサラリーマン文化をおかしいと言われると、逆切れしたようなコメントを吐く人(推定日本人男性)が多いが、なぜなのだろうか。
相手が海外在住者や帰国子女、在日外国人だと特にそうなる傾向が強い。
私が4月11日の「マクロ経済も老後の生活も悲惨にする日本の労働環境」の中で紹介したインドネシア人看護師のときもそうだった。
捨てゼリフやコメントの中で「それなら日本に来るな、外国へ帰れ。」というのがかなり目につく。
そういう彼らは、今後の日本企業が日本人の新卒サラブレット社員だけでやっていけると本気で思っているのだろうか。

今国会(第189回常会)で審議中の法案に「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案(同一労働同一賃金推進法案)」というものがある。
正規、非正規にかかわらず職務の内容に応じて同じ待遇を受けられるようにするという趣旨の法案だが、これが成立して実効性を持てば、公務員と大企業正社員が特権階級のような状況になっている日本の労働市場にも多少変化が芽生えるかもしれない。
つい先日、シャープが45歳から59歳まで社員を対象に希望退職者を募集したとの報道(2015年6月17日-産経新聞:弱腰批判も シャープ労組、3500人リストラ受け入れへ 「争っている場合では・・・」)があったが、希望退職に応じた(応じさせられた?)人はどうなるか考えたことはないのだろうか。
いずれにせよ、こういった大企業でも愚かな経営者が舵取りをすると、犠牲になるのは一般の社員で、こういう局面で中途入社の間口があるとか、非正規雇用でも職務に応じた均等待遇が受けられるといったことがあればどれだけ助かることだろうか。

それに最近では毎年10万人が介護離職するという時代(2013年8月12日-日経新聞:毎年10万人が介護離職、求められるケアハラ対応)、当然その中には優秀な幹部社員も含まれているだろう。
このような中で新卒至上主義にどれだけ経営的な意義があるかわからないが、いつまでも横並びや前例踏襲で採用活動をやっているような、昭和的遺物の経営者や幹部には早急にお引き取りいただいた方が日本の国益にもなるだろう。
ITmedia ビジネスオンラインの連載記事「ちきりん×城繁幸の会社をちゃかす(7):『日本人は勤勉』というが・・・迷信かもしれない」 の中で城繁幸氏は言う。「保守的なことばかりやっている会社に、革新的な考えをもった学生なんて来ないですから。」
21世紀になって企業は世界を相手に競争しないといけないのに、前例踏襲的な社員ばかりでは競争に勝てるはずがないだろう。
ついでながら、ケビン・クローン(Kevin Clone)氏の2013年4月8日付のコラム「日本人が勤勉でないこれだけの理由」も紹介しておこう。
私も彼の言う怠惰な人種だったと思うと頭が痛いが、彼の言うことも一理あるだろう。
もはや新卒至上主義を固守し、年功序列賃金制度の維持に汲々となっている公務員や大企業社員は怠惰な人種と言えるかもしれない。
私は数日前に出たパーティである女性にこう言われたことがある。「日本人は決して勤勉ではありません。」
もう一人の友人はこうも言っている。「私は怠け者の日本人より勤勉な中国人のほうを信用します。」


8月9日(日)-日本の新たな安全保障体制を後押しするアキノ大統領演説

2015年6月3日、国賓として来日したフィリピンのベニグノ・アキノ大統領(Philippine President Benigno Aquino)は、第21回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社.・日本経済研究センター共催)の講演で、現在の中国政府とかつてのナチスドイツを比べ、いつまでも国際社会が、南シナ海における領土拡張の主張をする中国をなだめ続けることはできないと述べた。(ABS CBN News - President Benigno Aquino III drew a parallel Wednesday between present day China and Nazi Germany during a speech in Japan, hinting the world cannot continue to appease Beijing as it claims ever-more territory in the South China Sea.)
フィリピンのアキノ大統領が、「現在の中国政府はかつてのナチスドイツのようだ」(ナチス中国演説)と非難したことは、大きな見出しとなって、フィリピンは元より、英米やオーストラリア、マレーシアのメディアに掲載されてインターネット上を駆け巡った。
しかしながら、中国政府に阿(おもね)る日本の主要メディアは、アキノ大統領の「ナチス中国演説」について、産経新聞を除いてインターネット版の記事はほぼ黙殺、主催者の日経新聞のアキノ大統領講演要旨でも一言も触れられていない有様だった。
こういった日系メディアの実態に対し、Darkness TIGAを運営している鈴木傾城氏は「国民の知る権利を封じているのは、政府ではなくマスコミだ(2013年12月10日)」と酷評している。

アキノ大統領は2015年6月2日から5日まで日本に滞在したが(外務省-アキノ・フィリピン共和国大統領の来日)、この間、参議院本会議場での国会演説(6月3日)宮中晩餐会(6月3日)、そして、安倍首相との首脳会談(6月4日)(英語版:Japan-Philippines Summit Meeting)が行われた。
この首脳会談で、安倍首相は「アキノ大統領の国会演説は場外ホームラン(President Aquino's address was an "out-of-the-park homerun.")」と褒めちぎった。
おそらく、アキノ大統領が「日本は、現在、我が国が戦略的パートナーシップを築いている2ヶ国のうちの1ヶ国です。(Japan is one of only two countries with whom we currently have a Strategic Partnership.)」と述べたことが一つの要因だろう。
前出の「ナチス中国演説」と合わせたアキノ演説に鼓舞された安倍首相は中国の脅威に対峙する決意を固めたのだろう。
2015年7月21日付で産経新聞が報じた「『“中国脅威論”を誇張』防衛白書に中国 韓国も竹島で反発」(英語版:Japan Times - Defense white paper stresses threat posed by China)、7月22日付でロイターが報じた「日本政府、東シナ海の中国ガス田開発の写真公表 16施設を確認」(英語版:Japan demands China halt oil exploration in part of East China Sea)、そして、7月29日付で産経新聞が報じた「安倍首相、中国「名指し」にシフト 国民理解へ身近な“脅威”指摘」(英語版:Nikkei Asian Review - Abe reaffirms need for greater defense reach)という流れになっているのがその証左と言えよう。

ところで、今から遡ること2年ほど前の2013年9月10日、アメリカのオバマ大統領がテレビ演説で「米国は世界の警察官ではない(America is not the world's policeman.)」と述べた。(2013年9月11日-毎日新聞:米大統領:「世界の警察官」否定)(The White House - September 10, 2013 - Remarks by the President in Address to the Nation on Syria
これについて、鈴木傾城氏は、2013年10月28日付の記事「Darkness TIGA-2013年9月10日に日本の運命が大きく変わる出来事があった」の中で、「今後、世界中で何が起きても、アメリカは必要最小限の関与しかしなくなるし、できなくなる。軍の縮小も同時に進行するのだから、韓国からも撤退し、日本からも撤退する。事実、アメリカは2013年7月18日に、韓国に対して『2015年末となっている戦時作戦統制権(統制権)の韓国軍移管を、予定通り進める』と伝えた。(WSJ - July 17, 2013 - Seoul Asks U.S. to Delay Transfer of Military Command) さらに、2013年10月には日本の集団的自衛権行使を支持した。(2013年11月7日 産経新聞-積極的な役割「米は支持」 日本の集団的自衛権容認と敵基地攻撃能力)(collective self-defense and US-JAPAN security cooperation by Ian E. Rinehart)(Japan's New Defense Strategy by Patrick Cronin)その理由を考える必要がある。それは、もうアメリカには日本を守る金も気力もないから、日本は自分たちで国を守れという意味なのである。つまり、アメリカはもうアジアから出て行きたがっており、後はどうなっても構わないと考えているフシがある。」と分析している。

また、同時期に国際ジャーナリストの田中宇氏は、「従属のための自立(2013年12月4日)」の中で、「米国は、日本に防衛や外交的に自立を求め、自立しないと日米同盟を維持できないと言っている。日本は、しかたなく防衛力強化や国家安全保障会議(日本版NSC)設立をやっているが、それらの自立策は、対米従属の維持のためだ。従属を続けるために自立するという、矛盾した策をやらざるを得ないのが近年の日本だ。」と書いている。
要するに、鈴木傾城氏や田中宇氏は、オバマ大統領による「米国は世界の警察官ではない(America is not the world's policeman.)」演説は、将来的には、現行の日米安全保障条約(Japan-U.S. Security Arrangements)の実効性は保証できないと言っているに等しい、と述べているわけだ。

私は基本的に第三国(例えば中国・韓国・北朝鮮)が日本を攻撃してきた場合の対処方法は以下の3つしかないと思っているが、現行の安全保障体制でもある2番目の「誰かに守ってもらう」という誰かが、アメリカでなくなった場合にどうするか、自分たちで体制を考えろというのが、日本政府に付きつけられた命題であり、その答えが安倍内閣の提出した「安全保障関連法案(package of security bills)」だと思っている。
つまり、この法案に反対する人たちの言っている「アメリカと一緒になって世界中で戦争をするためのもの」というのは、前提条件からして全く違っているのだ。
中国・韓国・北朝鮮、及び彼らに扇動された確信犯的に日本の安全保障体制を妨害しようという人たちは論外として、安倍首相がこういった説明を怠っていることが、現場の自衛隊員や国民の間に法案に対する懸念を抱かせる原因の一つになっている気もするのだ。

  1. 自ら武器を取って戦う-これがグローバルスタンダードだ。

    永世中立を言っているスイスでも自国の防衛のためには国民総出で武器を取る。
    いくら中立などと言っても、それをかつてのナチスドイツはせせら笑いながら中立を踏みにじった歴史がある(1940年4月9日 デンマークとノルウェー)のだから、そのような宣言がいざというときに何の役にも立たないことを彼らは知っている。
    また、かつては世界の権力者のダーティマネーを引き受けることがスイス独立維持に役立ったことは言うまでもない。
    日本が外交努力を続けていれば攻めてくる国はないと言う人は、世界史をもう一度学び直す必要があるだろう。(2007年9月14日-世界史を学ぶということ

  2. 誰かに守ってもらう。これが今の日本の姿である。

    私は日本の実質的地位はアメリカ合衆国日本行政特別区(The goverment of the Japan Special Administrative Region (JPSAR) of the United States of America)であると書いたことがあるが、軍事的には世界最強の軍隊を雇っているに等しい。
    つまり米軍は一種の傭兵なのだから、彼らに対価を支払う(在日米軍駐留経費負担)のは当然の成行きであるが、条約交渉における契約の決定権は雇い主である日本にはない。
    イラク戦争当時の小泉首相の「イラク問題に関する対応について」(英語版)の記者会見(2003年3月20日)は、そのことを認識したものという評価を英国のBBCから受けている。(Japan's binding ties to the US on 19 March, 2003)
    ただ、傭兵に頼りすぎて国が潰れたというのも過去の世界史が示す通りである。

  3. 無条件降伏。運命だと思ってあきらめる。

    自力で逃亡するが、日本の周囲は海であるから無事に安全地帯まで行けることを神に祈ろう。
    一部の反戦・平和団体や政治家の主張を忠実に実行するとこれしか選択肢はない。
    また彼らは、現行憲法上、自衛隊は違憲の存在であるので憲法を改正して正規軍として位置づけよ、ではなく、武装解除(自衛隊の廃止)と米軍の撤退を要求している。
    中国の人民解放軍の進駐なら喜んで認めるのかと聞きたい。

私は今国会(第189回常会)で審議中の安全保障関連法案は憲法第9条の改正を行ってから提出すべきと思う。
しかし、日本の国内には憲法改正の議論すら妨害する勢力が多く、一筋縄ではいかないための苦肉の策と考えられるが、こうした無理筋な解釈改憲を続ければ、将来的に法治国家として禍根を残す可能性も十分にある。
それに、2年前のオバマ演説直後に開かれた第185回臨時会(2013年10月15日から12月8日まで)では、わずかに11月6日の衆議院国家安全保障に関する特別委員会次世代の党の藤井孝男氏(当時は日本維新の会所属の衆議院議員)が、米国の国際的プレゼンスの低下を懸念した質問をした程度で、日本の安全保障体制にも影響がありそうなオバマ演説に対して、安倍首相の答弁からはそれほど深刻には受け止めていない様子が窺えるが、この2年間に目まぐるしく変わった国際情勢を目の当たりにして、政府もようやく目が覚めたというのが実際のところだろうか。(2014年3月21日-Darkness:アメリカに見捨てられた事実を認識するようになった日本人

オバマ演説後、ロシアや中国といった新たに覇権を狙う国々が近隣諸国に対して露骨な武力干渉を始めた。
中国はアメリカに代わってアジア太平洋地域の覇権を握ろうとしており、最近ではそのことを隠そうともしなくなっている。
アメリカが中国の軍事行動を牽制しても、今や中国は意にも介していない。(2015年5月31日 CNN Japan-米国防長官、中国に南シナ海埋め立て作業の即時中止を要求)(WSJ - May 30, 2015 - Defense Chiefs Clash Over South China Sea
2015年6月10日付のフィナンシャルタイムズ(Finacial Times)はUS v China: is this the new cold war? - The Chinese programme of island reclamation is testing America's reach(日本語訳:Japan Business Press-南シナ海で優位に立つ中国 米国vs中国、これは新たな冷戦なのか? 日経新聞-南シナ海で中国がつくる既成事実に何もできぬ米)と米中戦争(冷戦)をほのめかす記事を配信した。

アメリカがかつてのスーパーパワーを持っていないとすれば、それこそ日本の安全保障は自分で構築しなければならないところにきている。(防衛省-我が国を取り巻く安全保障環境-南シナ海における中国の活動)(2015年5月22日-Darkness TIGA:敵側の中国に関わっていると、大きなツケを払うことになる)(2015年7月9日-Japan Business Press:南沙諸島埋め立てはヒトラーのラインラント進駐と瓜二つ
安倍内閣が提出している安全保障関連法案はそうした趣旨の元に出されているものだし、集団的自衛権(right of collective self-defense)とは、個人で言えば、刑法第36条第1項(正当防衛)の「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」という中の「他人の権利を防衛する」と同じことだろう。
日本を愛するアメリカ人、ケント・ギルバート(Kent Sidney Gilbert)氏も2015年8月1日付のコラム、「不安を煽る政治家やメディアは無知な上に無恥」で同じことを書いている。
ただ、日本の法曹界やマスコミは、作家の柘植久慶氏が酷評する、刑法第36条第2項「防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。(過剰防衛)」の考え方、要は防衛する側は加害者に対して手加減しなさい、という概念を前面に押し出し、それがために自衛隊や警察の防衛行動を著しく制約している実態があるため、現場自衛官の身体的リスクを懸念する人も多いのだ。(2007年5月20日-あほ~な奴らがキチガイをのさばらす

さて、集団的自衛権と言われると、実戦を想定している人が多いと思うが、今ではサイバー空間での言論戦争が盛んに起きているし、残念ながらそちらは中国や韓国にボロ負けの状態だ。(2015年6月9日-Darkness TIGA:中国が『超限戦』という卑劣な犯罪行為を仕掛けてきている
理由は単純、指導者層やエリート層の英語発信力の差、政府要人が記者クラブという閉鎖空間でしか発言しないこと、そして唯一の愛国メディアと言われる産経新聞が英語版を出していないことだ。
信じられないようなら英語で「criticize(非難)、Japan(日本)、China(中国)」と入れてみればいい。
日本が中国の軍事行為を非難していることがあるかもしれないと思っていると、そのようなものはほとんどなく、国際社会(英語世界)のサイバー空間では、圧倒的に中国が日本を非難しているという記事がヒットする。
2015年6月17日付で共同通信が発信したJapan criticizes China's land-building in S. China Sea(日本が南シナ海における中国の埋め立てを非難)を見つけるのも相当に苦労した。(日本語版の記事は産経新聞の「菅長官、中国の南シナ海埋め立て批判」だが、実はこれを見つけるのも大変だ)
これらの劣勢を一発逆転したのがアキノ大統領のナチス中国演説で、言わばサイバー空間上の集団安全保障体制の始まりだ。
先ほどの検索語からJapan(日本)を除けば、今度はフィリピンが中国を非難しているという記事が上位に来る。

私が「尖閣衝突事件に思う(2010年9月28日)」で書いているように、今の中国はかつて流行語となったモンスター○○の大親分だ。
それをアキノ大統領は「ナチスドイツのような国家」と表現した。
そういう無法な輩に蹂躙されないための体制の一つが、周辺親日諸国との集団安全保障体制の構築だ。
もはや日本がスーパーパワーをなくしつつあるアメリカだけに安全保障を委ねられないがゆえの次善策と言ってもいい。
2015年7月27日付の現代ビジネスの記事「反対しているのは中韓だけ!集団的自衛権『世界の常識』が理解できない左派マスコミにはウンザリだ」で嘉悦大学教授の高橋洋一氏は以下のように書いている。
安全保障関連法案が提出されている背景も国際情勢も知らずに、暴力がイヤだからというだけで反対している人はもう一度冷静になって考えるべきだろう。
それこそ日本の子供の将来に降りかかる問題なのだ。
少子高齢化で日本人の若者が減っているということは、日本を防衛する自衛官のなり手も減るということだ。
法案に反対する人たちが喧伝する徴兵制の復活以前に、日本が集団安全保障体制の枠組みを作らねば、今やモンスター国家となった中国に蹂躙されてしまうだろう。

「世界の国では、日本の集団的自衛権の行使について、ほとんどの国が賛同している。ここ1、2年のニュースを調べただけでも、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、ベトナム、マレーシア、タイ、インドネシア、ミャンマー、インドなどの国のほか、EU(欧州連合)、ASEAN(東南アジア諸国連合)も賛同のコメントを出している。
しかし、例外もある。中国と韓国は日本の集団的自衛権の行使について、支持していない。
まず、中国が反対であるのは、中国が海洋権益を拡大するには日本が障害になるので、中国の国益を考えると納得できる。
中国は武力衝突も国益のためにはやむを得ないと考えるので、日本の防衛力強化には反対なのだ。
逆に日本にとって、これは看過できない。
中国が反対で、世界の国が賛成ということは、日本の集団的自衛権の行使は間違っていないという証になるだろう。
もし、集団的自衛権の行使で、日本が戦争する国となるなら、世界の国が賛成するはずないからだ。」

中国をナチスになぞらえ批判 比大統領
(2015.6.4 産経新聞)
フィリピンのアキノ大統領は3日、都内で講演し、南シナ海で地域の緊張を高めている中国の動きを戦前のナチス・ドイツになぞらえて批判した。
中国の動向と米国の戦略について聴衆から質問を受けたアキノ氏は「もし力の空白が生じ、大国の米国が『関心がない』といえば、他の国の野心を食い止めるものはない」と述べた上で、第二次大戦前にナチス・ドイツの領土拡張を阻止する動きがなかったことを指摘した。
ロイター通信などが伝えた。
これに対し、中国外務省の華春瑩報道官は3日の記者会見で、「ばかげた発言に深く驚くとともに、強烈な不満と反対を表明する」などと批判した。

関連英文記事
フィリピン大統領:ナチス台頭の戦前を連想-アジアの現状で
(2015.6.3 ブルームバーグ)
フィリピンのアキノ大統領は3日、現在のアジア情勢は第2次世界大戦前に国際社会がナチス・ドイツを封じ込めることができなかった事態を思い起こさせると述べた。
同大統領は東京都内での講演後、アジアへの米軍事力の「リバランス」について問われた際、ナチス・ドイツの隣国占領に関する記録映画を思い出すと言及した。
アキノ大統領は「成り行きをうかがっていたナチス・ドイツは、例えばもしフランスがやめろと言えば、退却する用意があった。だが残念なことに誰もやめろとは言わなかった。このドキュメンタリーのコメンテーターは、もし誰かが当時のヒトラーもしくは当時のドイツにやめろと言っていたらどうなっていたのだろうかと指摘していた。われわれは第2次世界大戦を回避することができたのだろうか」と語った。
国賓として日本を訪れているアキノ大統領は、強硬姿勢を続ける中国をけん制するため、両国の安全保障面での関係強化を目指している。

英文記事:Aquino Says Asia Tensions Remind Him of Pre-War Nazi Germany (June 3, 2015)
日・フィリピン首脳が会談、中国の埋め立てに「深刻な懸念」
(2015.6.4 ロイター)
安倍晋三首相とフィリピンのアキノ大統領は4日に会談し、南シナ海における中国の埋め立て対し、深刻な懸念を共有した。
また、日本から防衛装備品を供与するために必要な協定の締結に向け、交渉を開始することで一致した。

両首脳が会談するのは6回目。
日本はアキノ大統領を国賓として招き、中国と南シナ海で領有権を争うフィリピンを重視する姿勢をアピールした。
会談の中で安倍首相は、南シナ海情勢について「大規模な埋め立てや拠点建設などの一方的な現状変更について、深刻な懸念を共有したい」と表明。「各国と連携し、法の支配の実現に向け、ともに努力をしたい」と述べた。
一方、アキノ大統領は「日本がASEAN(東南アジア諸国連合)に働きかけたり、G7(主要7カ国)に支持を呼びかけるなど、声を届けていることに感謝したい。フィリピンは外交努力による解決を重要視したい」などと話した。

日本は、南シナ海で中国と緊張関係が続くフィリピンの海洋安全保障の能力向上を支援していく方針で、この日の会談では防衛装備品の供与についても協議した。
第三国への流出を防ぐ取り決めなど、日本からの輸出に必要な協定の締結に向けた交渉を始めることで合意した。

このほか、日本は3000億円規模のフィリピンの鉄道事業に対し、資金と技術の両面で支援していくことを表明。
また、橋の耐震強化と道路整備に340億円を拠出することも決定した。

英文記事:Philippine's Aquino revives comparison between China and Nazi Germany (June 3, 2015)
ヒトラー引き合いに中国けん制=南シナ海、米の関与要請-比大統領
(2015.6.3 時事ニュース)
国賓として来日したフィリピンのアキノ大統領は3日、東京都内で講演し、南シナ海での中国の埋め立てを念頭に「私は歴史学についてはアマチュアだが、(第2次大戦前に)ドイツがどのようにして海洋権益を拡大し、それに対する当時の欧州諸国の反応がどうだったかを思い起こさせる」と述べ、ヒトラーのナチス・ドイツを引き合いに中国を強くけん制した。
同大統領は南シナ海における米国の役割について「もし大国が関与しないというのであれば、それは困ると思う。
そういうことになれば、海洋権益を拡大する向きが出て来る」と指摘、米国が積極的に関与するよう求めた。
比大統領、新安保法制を評価 国会で演説「最大限の関心」
(2015.6.3 共同通信)
国賓として来日しているフィリピンのアキノ大統領は3日、参院本会議場で演説し、政府が今国会での成立を目指す安全保障関連法案の審議について「最大限の関心と敬意を持って注目している」とし、安保法制の整備を前向きに評価した。
アキノ氏は、中国による南シナ海での岩礁埋め立てを念頭に、「国際法により明確に付与された範囲を超えて、新たに地理的境界や権利を書き換えようとする試みによって、繁栄が損なわれる危険にさらされている」と言及。
また、アキノ氏は「繁栄を支えてきた物や人の自由な移動が阻害されようとしている」と危機感をあらわにした。

英文記事:Chicago Shimpo News from Japan (Kyodo) - Aquino sees Japan ties key to maritime security amid China tensions (3 June, 2015)
中国を念頭・・・比大統領が日米との連携強化訴え
(2015.6.5 読売新聞)
来日中のフィリピンのアキノ大統領は5日、東京都内の日本記者クラブで記者会見した。
「フィリピンの戦略的パートナーは米国と日本だけだ」と語り、南シナ海で岩礁の埋め立てを進める中国を念頭に置き、日米との連携強化の必要性を訴えた。
アキノ氏はまた、将来的に自衛隊の航空機や艦艇が補給などでフィリピンの基地を利用することについて、「協議を開始する用意がある」と述べた。
日本との地位協定締結を念頭にした発言だが、フィリピンは憲法で外国軍駐留を禁じているため、実現に至るかどうかは不透明だ。
今回の5日までの来日でアキノ氏は、日本からの防衛装備品の移転協定の交渉開始で合意するなど、協力強化に努めた。
ただ、アキノ氏の任期は残り約1年で、憲法で再選を禁じられている。
その一方で、次期大統領候補として国民に人気の現副大統領は、中国との「距離感」が近いとされる。
こうした情勢もにらみ、日本はフィリピンへの支援を急ぐ構えだ。
比大統領、安保法案を支持 「日本の積極的な役割期待」
(2015.6.4 日経新聞)
フィリピンのアキノ大統領は3日、都内で日本経済新聞のインタビューに応じ、日本の国会で審議中の新たな安全保障関連法案について、「世界の安定を確保するために日本は積極的な役割を果たすべきだ」として支持を表明した。
比は南シナ海で中国との領有権争いを抱えており、同海域も含めた自衛隊の活動の拡大に期待を表明した。

南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島では中国が埋め立てを急速に進め、日米などが懸念を表明している。
7カ所に及ぶ埋め立ての一部は、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあり、アキノ大統領は「埋め立ての必要性を理解できず、強く警戒している」と述べた。

安保法案は、集団的自衛権の行使容認や米軍などの後方支援拡大が柱。
アキノ大統領は「世界での平和維持に資するのであれば、フィリピンは歓迎する」と述べた。

アキノ大統領は3日午前に国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社・日本経済研究センター共催)の特別セッションで講演した後、同日午後に国会で演説した。
日本の戦後の取り組みに触れ「日本が平和に貢献してきたことに疑いの余地はない」と評価した。

関連記事:南シナ海「深刻な懸念」 日比首脳会談で共同宣言(2015.6.4)
アキノ・フィリピン大統領:南沙諸島、中国埋め立て批判 都内で講演
(2015.6.4 毎日新聞)
国賓として来日中のフィリピンのアキノ大統領は3日、東京都内で講演し、中国とフィリピンなどが対立する南シナ海情勢について「中国が不法に領有権を主張している」と指摘し、南沙(英語名スプラトリー)諸島での岩礁埋め立てを厳しく批判した。
中国の海洋進出について「日本や米国だけでなく、欧州連合(EU)やその他の国々も同様の懸念を抱いている」と説明した。
同海域の航行の自由や法の支配が地域の発展には重要で、国際社会と連携して「中国に再考を促したい」と述べた。
また、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との間で、法的拘束力のある「行動規範」を早期に策定するよう改めて求めた。
「繁栄が脅威に」フィリピン大統領、国会で中国批判
(2015.6.4 朝日新聞)
国賓として来日中のフィリピンのアキノ大統領(55)が3日、参院本会議場で演説した。
「新たな地理的境界や権限を書き換える試みがなされ、繁栄が脅威にさらされている」と述べ、中国の南シナ海での領有権主張や埋め立てを批判。地域の安定のため、安倍政権の掲げる「積極的平和主義」に期待を示した。
演説で大統領は、中国を念頭に「我々両国が対応に困難を感じているある国」に対し、「繁栄の必要条件である安定を維持するのが政府の責務だ。なぜ緊張を高めるのか」と批判した。その上で日本との関係を「自由を確保する最前線」と表現。
「積極的平和主義」や安保法制の整備については「最大限の関心と強い尊敬の念をもって注目している」と発言。
地域の安定に日本が関与を深めることに期待感をにじませた。
一方、戦後70年の節目として「先の大戦は我々全員にとって悲惨なものだった」と歴史を振り返りながら、「日本は過去の傷を癒やす義務を果たす以上のことを成し遂げ、利他的に、自国の復興だけでなく我々の復興にも尽くした」と、戦後に好転した両国関係への評価に力点を置いた。

(注)本件の安全保障関連法案は、平成27年9月19日に成立した我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(平成27年9月30日 法律第76号)と、国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(平成27年9月30日 法律第77号)の二法です。


8月5日(水)-2015年7月、人生初の青春18きっぷの旅

今年になって青春18きっぷの旅を人生で初めて体験することになった。
50歳を過ぎたおっさんが青春もクソもないのだが、2013年から国内の長距離列車旅行を始めたのを機に、2014年には大人の休日倶楽部に入会、そして今年は青春18きっぷを使ってみることにした。
そう、2013年10月12日付のコラム「早期リタイア後の生活を考える(2)」で書いた、ローカル線ぶらり旅を2年越しで実現させたのだ。
もちろん、今回の旅行のきっかけは、人気が高くて指定券が取りづらいという夜行快速列車の「ムーンライト信州81号」のチケットが取れたことで、これによって立山黒部アルペンルートの絶景も堪能することができたのだ。

この青春18きっぷは、1人で使うと有効期間中5日間のJR全線フリー乗車の権利があるので、のんびりと旅行をしたい人にとっては格好のチケットとなっている。
値段の方も、普通列車(快速・ホームライナーを含む)であれば、1日当たり2,370円で乗り放題となり、距離に換算すると本州3社の路線で141キロ以上、北海道、四国、九州の場合は121キロ以上乗れば元が取れる。
例えば、東京から水上(JR東日本乗換・運賃案内:片道164.3キロ/3,020円)、あるいは名古屋から高山(JR東海アクセス検索:片道180.3キロ/3,350円)、大阪から城崎温泉(JR西日本時刻・運賃検索:片道183.7キロ/3,350円)へ行くときに使えばいい。
家族やカップルで使う場合は同一行動を取れば、一枚の青春18きっぷで利用可能だし、お盆休みや年末年始の時期でも利用制限がかかっていないので、渋滞の中で車で移動したくない人や、指定券の争奪戦に乗り遅れた人は検討してみてはいかがだろうか。

しかしながら、このチケットは、新幹線や在来線の特急・急行列車は、別途特急券などを買ったとしても乗車券として使えないのを始め、新幹線開通によって第三セクター化した路線も、原則としてフリー乗車の対象外という大きな制約がある。
それに地方路線を走る普通列車は思いのほか本数が少なく、途中下車して観光したり、ゆっくりと食事を取ったりすると、意外に移動できないものだ。
従って、前述のように160キロを目処に長距離を移動する日か、一都市(自宅を含む)を拠点に80キロ圏外の地域を日帰りで往復する日に使うのが賢いやり方と言えようか。
とりあえず、今回購入した青春18きっぷは残り2日分あるが、ある程度利用のコツがわかったので、次回以降は1週間程度の休みを取って使うことを考えたいと思う。

JR tickets
JR overnight train "Rapid Moonlight Shinshu 81th"

8月4日(火)-iPhone 6でauのテザリング(tethering)を使ってみた

去る6月23日のコラムで、「ソフトバンクのiPhone5からMNPでauのiPhone6に乗換」という記事を掲載したが、このときに付けてもらったテザリングオプション(月額500円、2015年6月1日から指定のモバイル機器を新規購入又は機種変更から2年は無料)を初めて使ってみた。
テザリング(tethering)をご存じの方はあえて説明の必要はないだろうが、簡単に言えば、auのSIMを挿してあるiPhoneやスマートフォンがWi-Fiルーターの代わりになって、ほかの端末、例えば、パソコンやiPadでもインターネット接続できる機能のことだ。
私の場合、通常、自宅では2012年7月に購入したPocket WiFi LTE GL02Pを使っているため、iPhone 6でテザリングをする必要は全くないのだが、サービスを使わぬまま2年経過するのもバカらしいので、パソコンなどを使った場合に、ストレスのない速度でインターネットができるか試してみた。

テザリングの設定方法はauのウェブサイトに掲載されているので誰でもわかるが、iPhone 6の場合は「設定」-「インターネット共有」-「インターネット共有をON」で完了だ。
そこで、ほかの端末、例えばiPadでWi-FiをONにすると、そのiPadのWi-FiネットワークにiPhoneという名前が選択肢として表示されるので、iPhone 6で表示されているパスワードをiPad側に入力すると、iPadのWi-Fi接続ができるというわけだ。
ちなみに、iPadのWi-Fiネットワークに表示されるiPhoneという名前や、パスワードは変更可能なので、前出の設定方法を見ながら操作するといいだろう。

とりあえず、インターネットのスピードに関してはストレスなくできたので、ワイモバイル(Y!mobile)のルーターが不調なときの補助機能としては十分だと思う。
あとは、青春18きっぷの旅のときのように列車の移動時間が長いときの暇つぶしとして格好の道具となるだろう。
たった数日の国内旅行で、iPhoneにiPad、そしてWi-Fiルーターにそれぞれの充電器などを持っていくのは想像するだけでイヤになるが、テザリングができるのであれば、iPadを追加して持っていくという選択肢が出ることもあるだろう。
今では日本の三大携帯電話会社は、auに限らず、NTTドコモや、ソフトバンクでもテザリングオプションを持っているので、必要に応じて使ってみるといいかもしれない。
但し、このテザリングを多用すると、基本契約となっている送受信データ容量をオーバーして、月末近くになって通信速度が急に遅くなったり、追加料金の請求があったりするので注意が必要だ。


8月3日(月)-おもてなし信仰だけでは「みどりの窓口」の外国人の行列は増える一方だ

あるとき、私が横浜市内の駅の「みどりの窓口」で鉄道旅行のための指定券を求めるために列に並んでいたところ(えきねっと予約のドロップダウンリストにないチケットのため)、前方にバックパックを持った外国人が数人行列を作っていた。
彼らと窓口スタッフの会話が聞こえてきたので、何の気なしに聞いていると、彼らが言っているのは、新宿へ行きたいとか池袋へ行きたいということだった。
私はJRの駅の券売機が英語表示も出ることがわかっていたので、なぜ彼らがそれを使わずに延々と並ぶのだろうと訝っていると、自分たちの目的の駅まで、運賃がいくらかかるかがわからないのだそうだ。
確かに、初めて来た都市の地名が地図上でどこにあるのかわかるわけがない。
ドロップダウンリストなどがあってアルファベット順になっていなければ、外国人が券売機でチケットを買うのは困難だと思う。
私がフランクフルト(ドイツ)やボストン(アメリカ)の近郊電車に乗るときに券売機の前で立ち尽くしたのと同じ状況なのだ。
そのときは近くにいた駅員に聞きながら機械を操作したが、日本の場合はそういったスタッフはいないことが多い。

今から約2年前の2013年3月23日、PASMO(首都圏私鉄)やSUICA(JR東日本)のような日本の交通系ICカードが全国の主要都市で共通利用できるようになった。
これによって、私たちは名古屋や京都、大阪、福岡などの都市圏であれば、いちいち切符を買わずに改札を通ることができ、飛躍的に便利になった。
ところが、この交通系ICカードを成田や羽田、関空で外国人観光客相手に売っているところを私は見たことがない。
私が見たことがないだけで、実は売られているのかもしれないが、少なくともこれらの3つの空港の鉄道駅で大々的な販促のポスターが貼られているようには思えなかった。
首都圏の私鉄系のPASMO(英語版)や、JR東日本のSUICA(英語版)は外国語のウェブサイトがあるにもかかわらずだ。
なぜなのだろうか。

私はこのとき、交通系ICカードの案内が日本語のものしかなくて、英語が不得手な駅のスタッフには対応しかねるのかと思っていたが、ウェブサイトには英語でしっかりとしたものが掲載されている。
それらを印刷したものを配って、リチャージ(recharge/top up=追加入金)とリファンド(refund=払い戻し)、利用可能区域(valid areas)のことを簡単に説明すればいいのではないだろうか。
ここで完全主義の嫌いのある日本人が大きな勘違いをするのは、英語が流暢に話せるスタッフが少ないので、そういったことはできないという呪縛に囚われる人が多いことだが、英語が母国語でない国のスタッフに流暢な会話力を求める観光客はほとんどいないのだ。
少なくとも、空港の観光案内所や、日本へ向かうフライトの機内誌などできっちりとした宣伝をすれば、私が見たような「みどりの窓口」で近距離切符を買うために行列する外国人観光客の問題は解決されるような気がする。

実際に、観光庁の「平成23年度第3回訪日外国人旅行者の受入環境整備に関する検討会(平成24年3月14日)」の資料「外国人旅行者の日本の受入環境に対する不便・不満」を見ると、貧弱な公共Wi-Fi環境や、外国語のコミュニケーションに次いで、公共交通機関に関するものが不満の多い項目として上がっていることからも、各事業者はそういった国の政策課題の克服に協力する必要があるのではなかろうか。
今や、日本の鉄道の経路検索アプリも、HyperDiaNavi Timeのように英語版もあるので、それを活用して日本を旅行している人もいて、私がそれを使っている外国人を相手にしたこともある。
これらを組み合わせることによって外国人観光客がスムーズに移動できるのであれば、外国語のコミュニケーションに難がある日本人にとってもメリットがあるだろう。

ところで、2020年に開催される予定の東京五輪招致のプレゼンテーションで、滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」というのが話題になって以来、長年の経済低迷で失意のどん底にあった日本人の心がこれをキーワードにして蘇りつつある。
それは非常に喜ばしいことなのだが、一方で、あまりにも調子に乗った露骨な礼賛記事を目にすることも多くなってきた。
確かに、ここ数年は第二次安倍政権以降の訪日外国人観光客の増加政策が功を奏して、2014年の訪日外国人客は1300万人を突破し、過去最高を記録したことで、おもてなし文化が訪日外国人の間にも浸透したことが一つの要因と思っても不思議ではない。(2015年1月20日-日本政府観光局:2014年の訪日外客数は過去最高の1,341万4千人!

しかしながら、週刊東洋経済で「観光ビジネスのリアル」を連載しているフリージャーナリストのさかいもとみ氏が、「プロから見て『日本の空港』は何がダメなのか(2015年7月24日)」という記事で、訪日外国人の前に立ちはだかる公共交通機関や銀行ATMの大きな欠陥を指摘して「おもてなし大国」は幻想に過ぎないと述べている。(銀行ATMのことに関しては私が書いた「訪日外国人旅行者を困惑させる銀行ATMのバリア(2010年3月28日)」とほぼ同内容のことが指摘されている。)
また、彼は「プロから見て、新幹線には大きな欠点がある(2015年7月31日)」の中で、JR各社共通の外国語のインターネット予約システムが整っていないのと(日本語もJR各社共通の予約システムはないが)、駅のスタッフの外国語のコミュニケション能力のなさのために、外国人観光客が「みどりの窓口」で行列を作っていると書いているが、予約システムの改善には長い時間がかかりそうなので、当面の間、主要観光地の最寄り駅には外国人専用窓口を作るなどしないと、個人旅行者はストレスが嵩じて日本へのリピーターが少なくなってしまうだろう。
それこそ中国人の団体観光客の爆買いに浮かれている場合ではないのだ。(2015年7月25日-中日新聞:爆買い客、地方もつかめ 東海3県の免税店、半年で2倍超
彼らも、いずれは日本人と同じように買い物三昧の団体旅行に見切りをつけ、個人で旅行する日が来ることを肝に銘じるべきだ。

私はかつて「英語の通じない成田空港の銀行で外国人観光客は何を思うか(2011年11月23日)」というコラムを書いたが、最近、同じような局面に遭遇したことがある。
舞台は京成電鉄の成田空港駅だが、ある外国人男性がチケット売り場で「東京へ行きたい」と英語で言ったとき、相手をした女性スタッフは一言、「JRの駅へ行ってください(英語)」だけ言った。
それを後ろで聞いていた私は、苦笑せざるを得なかった。
流暢に話す必要は全くないが、なぜ「日暮里まで行って山手線に乗り換えてください」ぐらい英語で言えないのか。
重ねて言うが、舞台は成田空港なのだ。
iPhoneを見ながら怪訝そうに立ちすくむ彼に私は言った。
「再度、窓口で日暮里へ行きたいと言えばいい。そこで山手線に乗り換えてください。」と伝えた。
相手にストレスをできるだけ与えないということが「おもてなし」の基本だと思うのだが、時間に正確なことで国際的な評価も高い日本の鉄道で、それに乗ってもらうまでにストレスや怒りの種を与えてどうする、と思ったのは私だけだろうか。

先週、私が青春18きっぷの旅で訪れた岐阜県高山市は、外国人に人気の観光地であるが、私が何より驚いたのは高山陣屋などの観光スポットの受付窓口や、ル・ミディ(Le Midi)といったレストランでも英語がスムーズに通じていることだった。
また、通りのレストランやカフェの看板が英語になっていたり、手書きで英語のメニューが張り出されていたり、高山駅前で見かけた旅館むら山の送迎車は、ボディの旅館名が英語主体になっていて、そのことにも私は驚いた。
日本人のポテンシャルは元々高いのだから、外国人観光客の受け入れも本気でやればできることを高山市は示している。
通常は観光案内所など一部のエリアだけしか外国語が通じないのが日本の通り相場なのだが、観光庁の職員、交通機関や観光業界の関係者は一度高山市を訪れるべきだと思った。
しかし、こうしたホテルやレジャー施設の「おもてなし」の話題に喜びを見出している日本人が多い中、現実には、そこまで辿り着く列車の中で怒りを爆発させている外国人もかなりいるだろうと想像すると、日本人の新たな信仰とも言える「おもてなし大国」は幻想に過ぎないような気がしている。

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